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時代はいつもビートルズを求めている――再現コンサート『LET IT BE』に老若男女が熱狂

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
Photo/RYUYA AMANO

世界中の音楽ファンを熱狂させるビートルズ・トリビュートライブショー『LET IT BE』

ザ・ビートルズが、バンドとして最後にレコーディングした名盤『アビイ・ロード』の発売50周年を記念して、未発表音源を含む同アルバムの記念盤が、9月27日に世界で同時発売され、本国イギリスでは50年ぶりに全英チャートで1位に返り咲き、大きな話題になっている。また、ビートルズの名曲オンパレードの映画『イエスタデイ』が10月11日から公開されるなど、いつの時代もビートルズと彼らの音楽は、人々の心から消えることがない。

そんな中、9月28日、現在日本ツアー真っ最中の、ビートルズの歴史を体感できる再現コンサート『LET IT BE ~レット・イット・ビー~』を観る機会があった(新宿文化センター)。このライヴは、2012年にビートルズのデビュー50周年を記念して企画されたトリビュート・ライブショーで、ロンドンで初演されて以来、世界中で100万人以上を動員している。今回の日本公演は2014年、2015年、2018年に続き、4回目となり、人気の高さがうかがえる。

そのパフォーマンス、衣装など、時代を追ってビートルズを忠実に再現したステージが展開される。60年代をまさに猛スピードで駆け抜けていった4人の刺激的な日々を、改めて辿ってみることで、彼らの音楽やスタイルが、現代の音楽シーンにどれほどの影響を与えたのかを、再確認できる場でもある。

ビートルズの歴史を辿る音楽の旅

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第一幕のオープニングは、1964年2月、4人がアメリカに初上陸した時に出演した、人気テレビ番組『エド・サリヴァン・ショー』でのパフォーマンスを再現。細身のダークスーツを着た4人が登場し、「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」からスタート。曲の合間のMCやステージセットなど、細部に渡り再現している。当然演じる4人は、声も顔も本当によく似ている。

もちろん1966年6月から7月にかけて行われた、熱狂の日本武道館公演の様子も再現。セットリストこそ当時とは違うものの、同じダークグリーンの大きな襟がついた、黒い上下のスーツで決め、「ヘルプ」「ツイスト・アンド・シャウト」などをエネルギッシュに演奏。それぞれのメンバーの楽器の持ち方や、弾き方、しぐさまでも再現しているところはニヤッとさせられる。

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『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』は、ライヴ活動を封印し、レコーディング中心の活動へとシフトした4人が、1967年に発表したコンセプチュアルアルバムだ。このアルバムをクローズアップするコーナーでは、アルバムジャケット同様、ミリタリールックにひげを生やし、それまでとイメージが大きく変わった4人を再現。「サージェント~」から始まり、ラストの「ア・デイズ・イン・ザ・ライフ」の前に置いた、「サージェント~・リプライズ」まで忠実に再現。当時、ライヴでは再現不可能言われていたアルバムを、サイケデリックな演奏で見事に表現。幻想的な映像と相まって、世界観をしっかり伝えてくれた。

1969年に発表された実質的なラストアルバム『アビイ・ロード』にスポットを当てたコーナでは、ラフな衣装で登場した4人が、アルバムの収録曲を中心に、リズム隊の強さをきちんと感じさせてくれる「カム・トゥギャザー」から、「ゲット・バック」「ジ・エンド」などを披露。今回の、同アルバムの50年ぶりの全英1位について、ポール・マッカートニーはTwitterで「これほど長い年月を経てもまだ首位だなんて信じられない。でも、それにしても死ぬほどクールなアルバムだ」と呟いていたが、もしビートルズがこのアルバムをライヴで演奏していたら、どんな演奏になっていたのだろう……そんな想像をしながら楽しむのもいい。

もしもビートルズが再結成して、それぞれのソロ曲を演奏したら…

この再現コンサートの魅力のひとつは、「もしも」が楽しめるところだろう。第二幕はビートルズが1970年の解散後、再結成しステージに立ったら――1980年のジョン・レノンの誕生日にビートルズが再結成されたという設定で、それぞれの代表曲を4人が演奏するという夢のような時間を演出してくれた。ジョン・レノン「スターティング・オーバー」、「イマジン」はもちろん、ポール・マッカートニーは、1976年アメリカで行った『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』ツアーの衣装を再現し、「バンド・オン・ザ・ラン」「リヴ・アンド・レット・ダイ」を披露。メンバーそれぞれが、70年代以降の象徴的な衣装に身を包み、ソロナンバーを歌ってくれる。

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アンコールは「レット・イット・ビー」「ヘイ・ジュード」など、おなじみの曲を大合唱。客席は年配のファンが目立つが、みんな立って一緒に歌い、まるで青春時代にタイムトリップしたかのように、瞳を輝かせながらステージを観ていた。そして若いファンの姿も目立っていた。今、世の中に存在する音楽の端々に、ビートルズの“薫り”を感じずにはいらなれないということに、気づいたのではないだろうか。このコンサートは音楽だけではなく、衣装や、当時の時代背景もきちんと交えて再現するからこそひきつけられ、感動できる。

休憩時間を除いて約2時間で約40曲。当時の音楽は、約2分30秒から3分30秒という短い時間の中で、濃厚なドラマが展開されていたんだなと、改めて勉強になったと同時に、ビートルズの凄さにただただ感服するばかりだ。会場を後にしながら、全員がまたビートルズを聴き直してみようと思ったはずだ。

■10月8日(火)群馬・ベイシア文化ホール 大ホール/16:00開演

■10月9日(水)栃木・宇都宮市文化会館 大ホール/16:30開演

■10月10日(木)東京・葛飾シンフォニーヒルズ モーツァルトホール/16:00開演

■10月11日(金)東京・町田市民ホール/19:00開演

■10月12日(土)東京・町田市民ホール 12:00開演/17:00開演

■10月13日(日)神奈川・海老名市文化会館 大ホール/15:30開演

■10月14日(月)東京・たましんRISURUホール 大ホール/15:30開演

『LET IT BE~レット・イット・ビー~』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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