Yahoo!ニュース

いきものがかり “集牧”後、8年ぶりのFCツアーで感謝と決意を伝える 「また3人で生きていく」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/EPICレコードジャパン

8年ぶりのFCツアーで、思いを直接伝える

2017年1月5日、“放牧宣言”をし、活動を休止していたいきものがかりが充電を終え、“集牧宣言”をしたのは2018年11月2日だった。結成記念日の11月3日から活動を再開するということで、この日に発表した。3人がまずおこなったことは、放牧期間中もファンクラブ(ファンクラス)『1年2組』を辞めずに、ずっと支えてくれた会員に向けて、「作詞・作曲/いきものがかり」名義で初めて書き下ろした新曲「太陽」(編曲/本間昭光)を収録したCDを、無料で届けるということだった。今までに発売した楽曲のタイトルを散りばめながら、これまでの感謝の気持ちと、これからの決意をしたためた歌詞。自分達の言葉で、直接きちんと伝えようと、8年ぶりのFCツアー「いきものがかりファンクラスツアー ~モゥ集牧だよー!!2019~」を、3月26日のサンシティ越谷市民ホールを皮切りに、5月15日ZeppDiverCity(TOKYO)まで全国で15公演行った。そのセミファイナル、5月14日Zepp DiverCity(TOKYO)公演を観た。

「互いに感謝を伝えあい、これからに希望を持って進んでいける、そんなライブだった。 本当におかえりなさい、ありがとう」――ライヴ直後、参加したファンがSNS上に投稿したコメントだが、この日のライヴだけではなく、このツアーを観たファン誰もが、心から素直にそう思えたのではないだろうか。改めてここから3人の物語が始まっていくんだということを感じたと思うし、3人も感じたはずだ。

3人がそこにいる“安心感”と“新鮮さ”

Photo/冨田望
Photo/冨田望

オープニングナンバーは「WE DO」。今年1月1日に“集牧”後初のリリースタイトルとして配信されたロックチューンだ。シンプルなサビのリフレインが、高揚感を作りあげる。3人がそこにいる“安心感”。3人が作る空気感は懐かしさと共に、どこか新鮮な空気を生み出していた。バックバンドは、バンマスの本間昭光を中心とした、おなじみのメンバーで、このバンドの存在が3人の心の拠りどころとなり、安心して歌い、演奏、パフォーマンスできるのだと思う。

「おかえり」「ただいま」で伝わる、それぞれの気持ち

吉岡聖恵
吉岡聖恵

吉岡聖恵(Vo)の「ただいまー!!」という言葉に、胸を打たれるたファンも多かったはずだ。「おかえりー!」というファンからの大きな声に、3人も胸を打たれたはずだ。この日は何度もこの“想いの交換”が繰り広げられた。アーティストとファン、お互いが色々言いたいこと、説明したいことがあるとは思うが、このひと言の“想いの交換”で、全てが伝わる。

おなじみの「気まぐれロマンティック」は、ポップなのにどこまでもせつないメロディでグッときてしまう。まさにいきものがかりの真骨頂ともいうべき一曲だ。

最新曲「アイデンティティ」が放つ輝き

水野良樹
水野良樹

9年ぶりに披露するという「てのひらの音」、「@miso soup」など、FCツアーならではの選曲からおなじみの曲まで様々な曲を披露していたが、よりメッセージ性が強い最新曲「アイデンティティ」(Yakult「ミルミル」CMソング)が放つ輝きが印象的だった。<わたしは今>と歌う吉岡の歌は、その表現力に磨きがかかり、さらに力強さと“伝えたい”という思いも、ますます強くなっていた気がする。昨年発表したソロカヴァーアルバム『うたいろ』を経て、歌い手としての“深化”を感じた。だから「アイデンティティ」が伝える、自信を持って前へ進んでいこうというメッセージが、深く伝わってくるのかもしれない。

アットホームな中、これから前を向いて進んでいく決意を、しっかり伝える

山下穂尊
山下穂尊

FCライヴということで、ゆるいトークや、放牧中の出来事を報告する映像を流したり、ファンからの質問に、質問をしたファンをステージに上げて直接答えたり、終始アットホームな雰囲気だった。「帰りたくなったよ」では水野良樹(G)が鍵盤、山下穂尊(G)がアコギを弾くアコースティックバージョンで、吉岡の伸びやかなボーカルがより際立ち、感動が広がっていく。さらに「リズムがあるのにホッとする曲」(吉岡)、「やるたびに違う意味合いが生まれる曲」(水野)と紹介し「笑顔」を披露。この日はどんな感覚が3人の中に生まれたのだろうか。そこからアッパーチューンの「ブルーバード」、客席全員がタオルを振り回す「じょいふる」で、テンションはマックスに。本編ラストは<会いに会いに会いにいくよ たいせつなき君のところへ>と歌う「会いにいくよ」。まさにこのツアーのコンセプトのような歌を、情感豊かに歌った。

アンコールでは「太陽」と4月1日にリリースした配信シングル「SING!」(『めざましテレビ』(フジテレビ系)テーマソング) 、「心の花を咲かせよう」の3曲を披露。「SING!」は 「愛」「笑」「優しさ」「希望」「勇気」という言葉が散りばめられた、まさに一日の始まりに聴きたい、優しさあふれる一曲。「心の花を咲かせよう」は、<僕達はまだ歩いてく 僕達がまだ歩いてく その先に未知なる癒えぬ痛みが待つとも ひたすらに続く未来が見たい――>と、再び歩き始めた3人の決意表明のような歌詞が印象的だった。翌日のツアーファイナルはこの後、ダブルアンコールで「ありがとう」を披露したようだ。

「また3人で生きていく」という、確かな言葉がファンに与える“希望”

画像

最後に吉岡が言った「また3人で生きていく」という言葉は、いきものがかりが提示した「確かなもの」として、ファンの心に深く刻まれたはずだ。これからどんな音楽を聴かせてくれるのか、どんなライヴを観せてくれるのか、そんな期待と希望を与えてくれる時間だった。

いきものがかり オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

田中久勝の最近の記事