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パク・ジニョン氏が語る、ソニーミュージック×JYPが手がける最強ガールズグループに求めるもの<前編>

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ

ソニーミュージック×JYP=「Nizi Project」とは?

調印式を行ったソニー・ミュージックエンタテインメント取締役コーポレートEVP兼ソニーミュージックレーベルズ代表取締役会長・村松俊亮氏(左)、JYPエンターテインメントCEO、チョン・ウク氏
調印式を行ったソニー・ミュージックエンタテインメント取締役コーポレートEVP兼ソニーミュージックレーベルズ代表取締役会長・村松俊亮氏(左)、JYPエンターテインメントCEO、チョン・ウク氏

2月7日、ソニー・ミュージックエンタテインメントと2PMやTWICE、GOT7など人気K-POPアーティストが所属するJYPエンターテインメントがタッグを組み、新たなガールズグループを作る「Nizi Project(ニジプロジェクト)」の、合同記者会見が行われた。ソニー・ミュージックエンタテインメント取締役コーポレートEVP兼ソニーミュージックレーベルズ代表取締役会長の村松俊亮氏と、JYPエンターテインメントCEOのチョン・ウク氏との間で、調印式が行われた後、今回のプロジェクトのメイン・プロデューサーである、JYPエンターテインメントの創業者でもあり、アーティスト・J.Y. Parkとして活躍している、パク・ジニョン氏が登場。流暢な日本語でプロジェクトの全貌をプレゼンした。「日本語で話を始めて驚かれましたよね?記者会見の時に使いそうな言葉だけ、集中的に習ったので、私が日本語が上手だって勘違いしないでください(笑)」と謙遜していたが、それだけこのプロジェクトにかける思いが伝わってきた。

そんなパク氏に、会見直後にインタビュー。メンバーのキャスティングからトレーニング、企画、制作、マネジメントまで、その全てをJYPとソニーミュージックが共同で行う、これまでにはないアプローチとして注目を集めている「Nizi Project」について、そしてK-POPが世界中で受け入れられる理由、さらに現在の日本の音楽マーケットについて思うことまで、数多くの人気アーティストを作り上げたプロデューサーの目を通して感じることを、語ってもらった。前後編に分け、お届けしたい。

アイドルのグローバル化、多様化が加速。「国籍は不問だが『日本語でコミュニケーションが取れること』が必要」

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「私はこれまであまり緊張したことがなく、生まれて初めてステージに立った時も緊張しなかったほどですが、今は、背中がまだ凝り固まっているくらい、本当に生まれて初めて緊張しました(笑)。先ほど、10分間、あえて拙い日本語で発表しましたが、その理由は私の素直な気持ちが、きちんと伝わってほしいと思ったからです。私がどれだけこのプロジェクトを大切に考えていて、このプロジェクトに胸をときめかせ、情熱を持っているかということを、みなさんに伝えたいという思いが強かったので、全て日本語でプレゼンしました」。

インタビュー冒頭、プレゼンを終え、ほっとした表情でそう語ってくれたパク氏だが、「Nizi Project」は、JYPが昨年、設立20周年を機に発表した、今後の新たなビジョン『JYP 2.0』(「COMPANY IN COMPANY」「GLOBALIZATION BY LOCALIZATION」「JYP MUSIC FACTORY」「CREATIVITY FROM HAPPINESS」という4つのテーマで構成)の中の一つ、「GLOBALIZATION BY LOCALIZATION」(K-POPの過去と現在、そして「現地化(ローカリゼーション)による国際化(グローバリゼーション)」という未来像を定義)に含まれる、重要な位置づけのプロジェクトであると教えてくれた。

「今後のJYPをどうしていくかということを考えたときに、第一段階は韓国のアーティストを世界に進出させること、そして第二段階が外国人メンバーを入れてグループを作っていくことが必要だと考えました。2PMとTWICEなどがそうです。そして第三段階目が、外国人だけで構成されたグループを作るというプランです。この構想は8~9年前からありました」。

TWICE
TWICE

近年、多国籍グループのTWICEやGOT7、そしてEXO、さらに2018年には、韓国の音楽専門チャンネルMnetとAKB48グループがコラボレーションしたオーディション番組「PRODUCE 48」が放送され、日韓合同ガールズグループIZ*ONEが誕生するなど、アイドルのグローバル化や多様化が加速している。ソニーミュージックとJYPが手がける新たなガールズグループは、2019年夏に、日本国内8都市(札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡・沖縄)と、ハワイ、ロサンゼルスで大規模オーディションを開催する。もちろん全会場パク氏が直接審査する。応募資格は、満15歳〜満22歳の女性。国籍は不問だが、「日本語でコミュニケーションが取れること」が、条件のひとつとして設定されている。

「言葉の問題で、共感を深めることができないもどかしさを感じていた」

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「多くの人々が、自分が感じている感情を、認知できていないものです。自分が気づいていなかった感情が、音楽や絵、小説などに触れることで、鈍っていた感情に気づかされたり、または自分の言葉にならない感情が、言葉になって気づかされたり、目覚めさせてくれるということがエンターテインメントの持つ“力”だと思います。音楽に関しては、歌だけで機能するものではないと思っていて、歌で与える感情ももちろんありますが、例えば歌手が歌い終わった後に話した言葉や、インタビューで語っていることなど、そのアーティストの言葉や生き方、人生を感じることによって、より感動が深まると思います。だからその国の言葉で、コミュニケーションが取れるということは、共感をそれだけ深めることができるということです。今まで言葉の問題で、共感を深めることができないもどかしさを感じていたので、その部分については意欲を持ってやっていきたいと考えています」。

「ダンス、歌のスキルの前に大切なことは、ナチュラルさ。自分の声、自分の表情、自分の性格で踊って歌っているかを見ます」

審査基準として大切にする部分は、「ダンス、歌がうまいかより大切なことは、ナチュラルさです。自分の声、自分の表情、自分の性格で踊って歌っているかを見ます」とプレゼンした。スキルよりも大切なこととは――。

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「歌やダンスは感情を表現するものです。でも歌やダンスのスキルを徹底的に仕込まれている、教育されている人たちは、技術は学んでいても、逆に感情をそこにのせていくということに気づけていない人が多いです。なので、まず自然体で、ナチュラルな人を探して、その人の性格やテイストを把握して、そこにダンスや歌で表現する方法を指導するということが大事だと考えています。それによって、パーソナリティの部分が引き出されていくと思いますし、逆に機械的にテクニックを身につけている人たちは、感情をそこにどう表現していくのかわからないが故に、プロデューサーの立場としては、逆にプロデュースの仕方が難しいです」。

「日本のアイドル文化と韓国のアイドル文化、2つを取り込んだ手法で育成する」

まずはデビュー準備組20人を選抜するという。さらにそこまでの過程を撮影したリアリティー番組を今年10月から放送する予定だ。「日本のアイドル文化は、準備する過程からファンたちが一緒に応援してくれて、成長する姿を共有するため、アイドルたちが完成されていない状態、つまり未熟な姿も気にせず見せていると思っています。反対にK-POPのアイドル文化は、長い期間徹底的に企画して準備して、ある程度完成された姿を見せます。今回のプロジェクトでは、この2つの文化を合わせて、その過程をファンたちにお見せする計画です」と、両国の異なるアイドル文化を取り込んだ手法で、育成していく。

まずは20人を選抜。韓国のJYPトレーニングセンターで、6か月間レッスンを受ける

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その後選抜された20人は、韓国のJYPトレーニングセンターで、6か月間レッスンを受ける。JYPの体系的なトレーニングシステムを通して、ダンス教育、ボーカル教育、体力管理教育、芸能活動のための品格教育などを、徹底的に叩き込まれる。そしてまず日本デビューし、世界へ、という戦略だ。このプロジェクトはパク・ジニョン氏がプロデュースするということで、韓国でも注目を集めているが、韓国ではどういう見せ方、マーケティングを考えているのだろうか。

「2つのマーケットを同時に狙ってマーケティングをしていくというのは、簡単なことではありません。それに費やされる時間や努力というのは、全く異なるものだからです。なのでまずひとつのマーケットに集中して、展開していくということを考えています。もちろん2つできればそれにこした事はないのですが、まずは日本のマーケットに集中して、その後、機会が与えられれば、韓国でもクロスオーバーさせていきたいです」(後編に続く)。

『Nizi Project』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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