Yahoo!ニュース

福山雅治、50歳の生誕祭で「成長させてくれた」ファンに感謝 「一生忘れられない夜になった」 

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/アミューズ

「照れずに言うよ、生まれてきてくれてありがとう―スタッフ・バンド一同―」――2月6日、50歳の誕生日当日、横浜アリーナのステージに立つ福山雅治に、アンコールの際、バンドメンバー、スタッフからのサプライズで、正面スタンドに掲げられた横断幕に書かれたメッセージだ。2月5日~7日に行われた、自身初の生誕祭ライヴ『福山☆はじめての大誕生祭 其の壱 平成最後の2月6日 やっぱりこの日はステージに立っていたかったんだ! 福山雅治 五十祭!!』に駆け付けたファンも、全く同じことを思っていたはずだ。

画像

タイトル通り、人生の大きな節目である50歳という誕生日を、これまで長きに渡り支えてくれたファンと共に過ごしたいという、福山のどこまでも純粋な思いが形となったライヴだ。ステージを360度埋め尽くした客席。2月6日は特にファンクラブ限定ということもあり、この“バースデーパーティ”に集まったファンが放つ“ワクワク感”は、いつもにも増して“濃い”。客席は総立ちで、大きな拍手に迎えられ、主役が登場し、特別な一夜の幕は切って落とされた。

ファンの心に思い出と共に色濃くの残る“誕生歌(うまれうた)”を、ランキング形式で歌う

この特別な日のセットリストは、“誕生歌(うまれうた)”。家族、恋や友情など、“何かが生まれた日、始まった日”の思い出が呼び起こされる福山の歌を事前に募集。3000通を超えるリクエストがあり、その結果を10位からランキング形式で発表していくというスタイルだ。ファンの心に思い出と共に、特に色濃く心に残る名曲が、一部が弾き語り、二部がバンドスタイルで、次々と披露される。

『DOUBLE ENCORE』(2月6日発売)
『DOUBLE ENCORE』(2月6日発売)

福山がパーソナリティを務めるラジオ番組『魂のラジオ』や『地底人ラジオ』などに欠かせないフリーアナウンサー・荘口彰久が登場。まずはこの日リリースされた4枚組31曲入りの、弾き語りライヴ音源&MCが収録されたライヴアルバム『DOUBLE ENCORE』が、オリコンデイリーアルバムランキングで1位(2月5日付)になったことを伝えると、大きな拍手が起こる。客席と福山が喜びを分かち合い、最高のバースデープレゼントになった。荘口が読む、ファンから寄せられた“誕生歌”にまつわるエピソードは、どれも胸を打つ感動的なもので、「Beautiful life」「最愛」「誕生日には真白な百合を」「家族になろうよ」では、涙しているファンも多かった。リクエストした人の“思い”が、福山の歌に重なり、歌詞のひと言ひと言に光を当てるように、丁寧に歌っていた。「人生決して楽しいことばかりではない。そんな時にも僕の歌を聴いてくださって、一人ひとりの人生の中に、音楽という形で寄り添わせていただけることを、大変光栄に思います」と語り、まさに歌手冥利に尽きる瞬間だったのではないだろうか。

「30年間やらせてもらったおかげ。ファンのみなさんが猶予をくれたから、成長できた」

ギターの弦1本1本の音が広い会場に響き渡る。歌声が何にも遮られることなく、しっかりと聴こえてくる。キャリアを重ねてきたが、福山がつま弾くギターは、変わらず瑞々しさを湛えている。本人が「若い頃は、長崎で一番ギターが上手いと思っていた(笑)」という、あの頃の思いは、テクニックと共に、しっかりとその音色の中に残っているようだ。歌はますます深みを増し、50歳だからこそ、約30年やってきたからこその表現力という名の伝える力を、この日は改めて感じさせてくれた。 “歌心”が、強く優しい言葉をさらに説得力を持たせて、聴き手の心にスッと入り、感動が大きく広がっていく。そんな歌たちにファンは癒され、勇気づけられ、支えられてきた。それは福山も同じだ。「30年間やらせてもらったおかげ。ファンのみなさんが猶予をくれたから、成長できた」と吐露したように、だからこそこれからのミュージシャン人生は、自分の歌をファンにより伝えたい、誰かに届けたいという思いを、“五十にして天命を知る”というこのタイミングで、より強く持ったのではないだろうか。まさにこれからの自分が進べき道、使命をファンに改めて伝えるライヴだったと思うし、アルバム『DOUBLE ENCORE』は、多くに人に“今届けるべき作品”という、強い信念を感じるさせてくれる。

「『カンヌ映画祭』に出したいくらい」という、これまでのキャリアを振り返る、ドキュメンタリー映画のような映像が流れた後、いよいよ第2部のバンド編成のライヴは「Heart」からスタート。1996年に一旦音楽活動を休止し、1998年に活動を再開した時のこのシングル曲を「第二章の始まりの歌」と紹介し、続いて“始まりの歌”とデビュー曲「追憶の雨の中」を披露。今剛と小倉博和のツインギターが炸裂する。福山自身にとっても節目になっている曲を、凄腕ミュージシャンが揃うおなじみのバンドの演奏で、気持ちよさそうに歌う。「HELLO」や、ロックな「Pop star」、「零-ZERO-」、最新曲「甲子園」、弦の音色がせつない「道標」など、幅広い年代の楽曲を歌ってくれた。

画像

アンコールでもバンドスタイルで「虹」と「桜坂」を披露。ダブルアンコールを求める声と拍手は鳴りやまず、福山自らがリクエストメッセージを読みあげ、ファン投票で1位を獲得した「Good night」を、再びガットギターの弾き語りで披露。どこまでも優しい歌とギターの音が、客席を包む。大きな拍手が鳴り響き、これでライヴは全て終了――と思っていると、さらなるアンコールを求める拍手が鳴りやまない。「おやおや?」と福山が笑顔で困惑するも、拍手はさらに大きくなっていき、スタッフに確認し、再びアコギを手に構えると大歓声が沸き起こった。客席にリクエストを聞き、披露したのは「MELODY」だ。サビを女性キーに直して、全員で大合唱する。会場がひとつになり、福山とファンが紡いできた関係が、確かなものだったということを、お互いが改めて確認し合うことができた瞬間だった。福山は「当たり前のことを言います。一生忘れない夜になりました。ありがとうございました!」と挨拶し、締めくくった。

50歳の誕生日に、音楽に触れた時の“初期衝動”、ミュージシャンとしての原点で感じた音楽的興奮を、ファンと共に確認、感じる

50歳の誕生日に、ファンの心に寄り添う曲達を、弾き語りを織り交ぜたライヴで歌い、弾き語りを集めたライヴアルバムを発売したというのは、福山の心と体に今も色濃く残る、音楽に触れた時の初期衝動、ミュージシャンとしての原点で感じた大切な音楽的興奮を、もう一度確認したかったからではないだろうか。そしてそれをファンにも感じて欲しかったからではないだろうか。とても50歳とは思えない若々しく、瑞々しいそのルックスと精神、50歳というキャリアならではの歌の表現力。福山雅治の“今”は、明るい未来への通過点ということを教えてくれたライヴだった。

福山雅治 オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

田中久勝の最近の記事