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今、最も忙しい俳優の一人、滝藤賢一「40代は脂が乗ったいい時だと思うし、芝居がどんどん出てくる」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
「『ハラスメントゲーム』では、大先輩の俳優さんに囲まれ、色々刺激を受けています」

タイムリーかつ、難しいテーマにスポットを当てた話題のドラマ『ハラスメントゲーム』の中でも存在感を放つ、滝藤賢一

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10月15日にスタートした、テレビ東京開局55周年特別企画、月曜日22時枠の“ドラマBiz”『ハラスメントゲーム』が、話題だ。このドラマは昨今、会社員だけではなく全ての人が悩み、苦しんでいる“ハラスメント”問題という、タイムリーかつセンシティブなテーマに切り込む。スーパー業界大手老舗会社・マルオーホールディングスのコンプライアンス室長、秋津渉(唐沢寿明)が、人間の業や欲が産み出す様々な問題に立ち向かい、独自の視点、考え方で解決させていくという、痛快かつ感動を呼ぶドラマだ。脚本は井上由美子。唐沢とのタッグは、大ヒットを記録した『白い巨塔』(2003年/フジテレビ系)を思い出す。

三代目マルオーホールディングスCEO・丸尾隆文
三代目マルオーホールディングスCEO・丸尾隆文

唐沢を始め、個性的な面々が揃う役者陣の中で、今最も忙しい役者のひとり、滝藤賢一が、父から経営を受け継いだ三代目マルオーホールディングスCEO・丸尾隆文役を演じ、注目を集めている。9月までNHK朝の連続ドラマ『半分、青い。』で、主人公・鈴愛の父親・楡野宇太郎を好演、7月クールでは「探偵が早すぎる」(読売テレビ/日テレ系)で、『ハラスメントゲーム』でも共演している広瀬アリスとW主演。探偵・千曲川光をコミカルに演じ、どんな役も演じることができ、その露出の多さは、まさに別格だ。さらに映画、CMと引っ張りだこだ。そんな滝藤が“次”に選んだのがこの『ハラスメントゲーム』だ。非常にタイムリーともいえる、このテーマに臨む思い、そして役者としての“現在”を語ってもらった。

「ハラスメントは、受け取る側の問題もあるかもしれないけど、もう人前で何も話せなくなりますよね(笑)」

――井上さんの脚本を読んだとき、最初にどう思われましたか?

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滝藤 もう人前で何も話せなくなりますよね (笑)。普通に『あれ?髪切った?』とか言うでしょ?あれダメみたいですよ (笑)。もう、僕なんかとっくに訴えられていますね。子供にも、男の子だから泣くな、なんてしょっちゅう言っていますが、これもダメ…。僕は、無名塾時代に厳しいお言葉をたくさんいただいて鍛えられてきました (笑)。そのおかげで今の僕がある訳ですし、嫌ならやめればいいと思っていましたから。受け取る側の問題なのかな。

――「セクハラ」「モラハラ」「マタハラ」etc…、会社には“地雷”がいっぱい埋まっていて、確かに何も話せなくなくなって、人間関係がギクシャクしそうですよね。

滝藤 そうですね、あと5話のテーマの「ラブハラ」って、社内恋愛ですよね?社内恋愛で結婚される方、結構いますでしょ?ラブハラなんて言っていたら、何もできないと思いますよ。好きになったらどうするんですか?食事に誘ったらハラスメントとか言われて、そりゃ男子は二次元で恋愛しますよ(笑)。自分が10代20代の時って、どうやってこの子をデートに誘おうとか、女性のことしか考えていなかったですよ (笑)

―一一話の記者会見のシーンで頭を下げているシーンがあったじゃないですか、昨今ニュースやワイドショーで見かける事が本当に多いですが、実際自分が演じてみて、どんな気持ちでしたか?

滝藤 自分のミスでなくても、立場上、責任を取らなければならない方っていますよね。それは当然だけど…。でも、オレは悪くないんだけどみたいな態度は取れない。一話で頭を下げるシーンは淡々と冷静に事実を喋っていく。もちろん、カンペは見ない。自分の言葉で喋る。そして、被害者の方に「申し訳ありませんでした」と謝罪の言葉を述べるシーンの時に、初めて感情を起こすという組み立て方をして臨みました。

「役作りは、イメージを膨らませること。今回は西浦監督の独特のワールドがあるので、演出を素直に受け入れ、消化し、吐き出すことに徹しています」

――とにかく色々な役を演じられてきて、3代目社長という今回の役はどうやって作りあげていったのでしょうか?

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滝藤 イメージを膨らますことだと思います。脚本家の井上(由美子)さんが、最初の挨拶の時に「丸尾隆文は、5歳の時、父親にこのスーパーに連れて来られて、“ここにあるものは全部お前のものだ”って言われて、育てられた」というヒントをくれました。このシーンでは何をしなければならないのか。目的を達成すること。ディテールを丁寧に積み重ねていくこと。全部を説明しなくても、観ている方はいろんな想像ができると思います。ただ、現実問題とても忙しくて(笑)、10年くらい前の映画『クライマーズ・ハイ』(2008年)のように、全てをかけて一作品に臨む時間がなかなか取れないというのが正直なところです。もちろん一作一作真摯に向き合っていますけど、足りないところは、今までの経験をフル回転させるしかない。それと、同じシーンが多い唐沢さんや高嶋(政宏)さん、佐野(史郎)さんなど、大先輩の俳優さんに囲まれているので色々な刺激を受けています。その強者たちをまとめるのが西浦(正記/「コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-」(フジテレビ系)他)監督。とくに今回は監督の考え方が、ものすごく明確で、独特の“西浦ワールド”があるので、あまり考えすぎると対応できない。結構今でも戸惑うところはあって、なかなか気持ちが追いついてこなかったり。だからもっと自分がフラットでもいいのかなと思っていて。何も考えずにセリフだけ覚えていって、監督の演出を素直に受け入れて、自分の中で消化し、吐き出していく。それがいいと思うんですけど、先輩達が色々“仕掛けて”くると、触発されて、こっちも何かやりたくなるんですよ(笑)。影響されてしまいますね(笑)。

「このドラマに入る直前まで、色々な役をやりすぎて、セリフが入ってこなくなり、さすがに焦りました(笑)」

――出演本数が多いと思いますが、それぞれの役を、自分の中でスムーズに入れ替える方法を教えてください。

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滝藤 そのへんは、あまり気にしていませんでしたけど、さすがに9月くらいまでは大変なことになっていて(笑)。気にしていないとは言いながらも、色々な役をやりすぎてセリフが入ってこないんですよね。『半分、青い。』と『探偵が早すぎる』のウエイトが、あまりにも重くて…(笑)セリフの言い回しに癖がついていたんですね。丸尾社長のセリフの言い回しがなかなかしっくりこなくて、セリフが全然入らないんですよ。今まではその現場に行って、その役のセリフを喋っていれば意外と平気だったんですが、さすがに今回は焦りました。だから、『ハラスメントゲーム』がクランクインした時は探偵色が残っていて、監督はすごく嫌だったと思います (笑)。だからわざと大声で怒鳴るという演出をされて僕がコントロールできなくなってから、「本番はそこまでやらなくていいです」って、そっと伝えに来てくれるんです。僕の中に残っていた何かを出させようとしていたんですかね。僕にはわかっていないことを、監督はわかっていたような気がします。

過密スケジュールのときは、「体力的にも精神的にもキツいけど、芝居をやっているときは楽しい。共演者と過ごす時間が、唯一リラックスできる」

――そういう魂の入れ替えを日常茶飯事で行われている、役者の現場は凄まじいですよね。

滝藤 でも僕の場合は憑依するということはなくて、客観的に見ているもう一人の自分がいて、演技をしている。

――過密スケジュールの時は、息抜きはやはりお子さんと過ごす時間だったのでしょうか?

滝藤 お休みがなくて、それさえもまともにできなかったです。寝てる顔しか見ていませんから。だからピリピリしている時が多かったと思います。唯一リラックスできたのは、共演者と過ごす時間でした。ザックばらんに話をして。体力的にも精神的にもキツいんだけど、芝居をやっている時は、楽しいんですよ。生き返るというか。現場に行くまではグッタリ。でも現場に行ったら元気にしてもらっていました。

――唐沢さんが色々と問題を解決をしていく、ドラマの中心になっている役で、丸尾社長は頼りないイメージに映りますが、実は一番強いんじゃないかと思わせる演出が見え隠れしていますね。

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滝藤 あら、そうですか?監督には「もっと慌ててくれ、もっと小心者感を出してほしい」と言われています(笑)。

「このドラマはそれぞれのキャラクターがちゃんと印象に残る」

――茶室でお茶を立てているシーンは、凛としていますよね

滝藤 監督の中で全キャラクターに対して明確な人物像があるので、社長もここでしっかり凛とした、強い空気感を漂わせたいのではないでしょうか。じゃないと、ただオロオロしたり、強がったり、どうしようもない社長になってしまいますから(笑)。監督の計算ですね。監督の手のひらの上で転がされています(笑)。

――このドラマはすごくテンポがいいなと思いました。登場人物の露出時間はもちろんそれぞれ違いますが、それぞれがきちんと描かれていて、さらにリズムがよくて、ドラマに“厚み”があります。

滝藤 それぞれのキャラクターがちゃんと印象に残っていますよね。僕も3~4シーンしか出ていないんですが、完成したものを見ると、もっと出ている印象がありますね。舞台出身の俳優さんが多いからテンポがいいんですかね。ハッキリ喋るし、リズムがいいので、やりやすいです。

――演者と作り手、双方の“熱”が伝わってくるドラマです。

滝藤 ありがとうございます。真っ向勝負っていうのがいいですよね。

――これからますます丸尾社長の存在感が出くるのでしょうか?

滝藤 どんどん出番が減っている気がするんだけど、どう?(笑)(←と、スタッフに聞く)

仕事を選ぶときの基準は、「いただいたお仕事は、スケジュールが許す限り全てやること」

――今、滝藤さんの元には、お仕事の依頼が殺到していると思いますが、まずはスケジュールありきだと思いますが、滝藤さんの中でお仕事を選ぶときの確固たる基準のようなものはあるのでしょうか?

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滝藤 いただいたお仕事は、スケジュールが許す限り全てやるということです。40代って脂が乗っていて、一番やりがいがある時だと思うし、芝居も思うように出来てくる。しかもたくさんお仕事をいただけて。タフな体と精神を作りながら、どんどんやるべきだと思っています。

――まさに今が充実の時。

滝藤 最高です!家庭も充実しているし、とても幸せな人生です。

『ハラスメントゲーム』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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