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岩崎宏美が“今、最も歌いたい、歌うべき”3曲とは?「人を励ますことができる歌が、いい歌」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
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岩崎宏美といえば、日本の音楽シーンを代表するシンガーとして、1975年のデビュー以来、その瑞々しい歌声と圧倒的な表現力で、多くに人の感動を与えてきた。圧倒的なテクニック、歌との向き合い方には、長年第一線で歌い続け、高い評価を得続けてきたからこそ手に入れることができた気高さを感じる。いつまでも聴いていたい声、歌。そんな岩崎が『Sound Inn “S”』(BS-TBS)に登場し、圧巻の歌を披露してくれる。“時を超えた、ここでしか聴くことのできないサウンド”がコンセプトのこの番組で、彼女は服部克久、斎藤ネコ、坂本昌之の3人のアレンジャーが紡ぐ渾身のアレンジを、一流ミュージシャンが作り出す音をバックに、“今最も歌いたい、歌うべき曲”を3曲聴かせてくれる。

「夢を叶えた一曲」

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1曲目は、昨年大ヒットしたディズニー映画『美女と野獣』のテーマ曲で、ファンが多い曲「美女と野獣」だ。アレンジは斎藤ネコ。実は岩崎は、この映画の日本語吹き替え版のポット夫人役を、オーディションで勝ち取っている。そんな、自身の夢を叶えた一曲を、斎藤の流麗なストリングスが印象的な、温もりのあるアレンジで、情感豊かに歌ってくれた。「素敵なアレンジで、歌っていてどんどん気持ちが乗ってくる」と岩崎がそのアレンジを絶賛すれば、斎藤も「伴奏していて気持ちよくなる歌。素晴らしい」と岩崎の歌を称賛。お互いが感動しながらのパフォーマンスだった。歌と演奏がピッタリハマった時の、得も言われぬ感動が、伝わるはずだ。

「人生の岐路に立った時の一曲」

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岩崎の楽曲の中でも、特に思い入れが強いのが「思秋期」(1977年)だという。それは「父が芸能界入りを反対していて、20歳までという約束だった。この曲をレコーディングしたのが10代最後の秋で、これが最後の曲になるのかなと思うと号泣してしまって。歌詞と当時の自分の心模様が重なる」からだ。その後、父親は、芸能活動を認めてくれ、岩崎は日本の音楽シーンの至宝と言われるまでの歌手になっていく。「当時のことを思い出したり、これからのことを想像させてくれる名曲だと思う」と、本人が言うこの曲のアレンジを手掛けたのは、名匠・服部克久。「今回のアレンジのイメージは“パリの秋”」と言うように、哀愁漂うアコーディオンの音色をフィーチャーし、岩崎が40年間大切に歌い続けてきた名曲に、新鮮な彩りを与えた。

「歌いながら人生を学ぶことができ、日本語の美しさを再認識できる一曲」

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岩崎が8月15日に発売したニューアルバム『PRESENT 〜for you*for me〜』のリード曲、「残したい花について」は、彼女と固い絆で結ばれているさだまさしが書き下ろしたもので、この日の収録が初歌唱だった。アレンジは坂本昌之。「さださんは私のいいところも悪いところも、何でも知っている。だからこの曲を歌っていて感じるのは、私のことを書いてくださっているということ。聴く人によって捉え方、感じ方が全然違うと思うので、そういう部分も楽しんでほしい」と語っている。曲を発注するときに岩崎が、ひとつだけさだにリクエストしたことは「ピアノ一本で歌えるような歌」だった。「初披露の新曲をアレンジできるのは格別」と語り、気合の入る坂本のピアノの美しい旋律が、岩崎の歌に寄り添う。歌い終わると岩崎は、「歌いながら育てていきたい曲。さださんの曲は人生を学ぶことができるし、日本語の美しさを再確認できる。さださんはまさに生き神様」と語ってくれた。

「バラードでもアップテンポの曲でも、人を励ますことができる歌がいい歌。人の心に届く歌詞をメロディを大切に歌っていきたい」。40年以上歌い続け、たどり着いた境地だ。そんな岩崎のこの言葉をかみしめながら聴く歌は、その歌詞が胸に飛び込んできて、じわじわと広がり、温かいものを残してくれる。まさに“名人”の歌。岩崎の歌が堪能できる『Sound Inn “S”』は、9月15日(土)23時からBS-TBSでオンエアされる。

『Sound Inn “S”』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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