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一番新しいフェスは、一番“優しい”フェス――いきものがかり・山下穂尊と長井短が語る『米フェス』の魅力

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
「このフェスが続いて、「長岡大花火大会」のように文化、伝統になってほしい」

『米百俵の精神』――「未来に繋ぎたい」モノ・コト・想いがこのフェスで繋がり、未来の力になるようにという願いが込められている

新潟県・長岡市を舞台に、新たなフェスが生まれる――『長岡 米百俵フェス ~花火と食と音楽と~』(以下、『米フェス』)は、10月6日・7日長岡市・東山ファミリーランドで第1回目が開催されるフェスで、ネーミング通り、長岡といえばの花火と、新潟県の食と酒、そして2日間で23組(【10月6日(土)】NGT48、神田莉緒香、岸谷香、GLIM SPANKY、琴音、サンプラザ中野くん&パッパラー河合、にゃんぞぬデシ、BEGIN、BIGMAMA、藤木直人、FLOW、wacci【10月7日(日)】いとうせいこう is the poet、Creepy Nuts、Shiggy Jr.、JUNNA、東京パフォーマンスドール、ねごと、ひなた、平原綾香、杏子/スキマスイッチ/松室政哉 from 福耳、安田レイ、横山だいすけ、渡辺美里)の多彩なアーティストが共演する、日本で一番ハッピーで、快適なフェスを目指している。

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「米百俵」という言葉に覚えがある人も多いはずだ。2002年に発足した小泉内閣の所信表明演説で、小泉首相が引用したことで再評価され、一躍有名になった長岡市の“精神”。明治維新の折、困窮した長岡藩に米百俵が届けられた。長岡藩士・小林虎太郎は「米は食べてしまったら数日でなくなる。これで将来のために学校を建てよう」と、米を売った対価で、国漢学校を創るなど、教育に充てた。その学校は人づくりをし、町に産業(商工業)の振興と実業教育を大切にする思想を生み出した。次の時代を創ること、それを繋げていくこと――長岡市にはこの「米百俵の精神」が根付いている。「未来に繋ぎたい」モノ・コト・想いがこのフェスで繋がり、未来の力になるようにという願いが込められている。

そこで記念すべき第1回目を目前に、このフェスのキーマン3組に登場してもらい、「花火」「音楽」「食」について詳しく話を聞いた。3回連載のまず1組目は、このフェスの“スペシャル・ナビゲーター”として、プロモーションに奔走している、現在“放牧中”の国民的バンド・いきものがかりの山下穂尊と、10月6日のMCを楠雄二朗(U.K.)と共に務める、モデル/女優の長井短が登場。

「いきものがかりが、長岡のライヴ会場のこけら落とし公演をやらせてもらったり、所属事務所社長の出身地でもあり、“縁”がある」(山下)

「今までフェスにも行ったことがなくて、初のフェスがまさかのMCとは…(笑)」(長井)

――『米フェス』のスペシャル・ナビゲーターを任命されました。

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山下 6年前、長岡市の「アオーレ長岡」というアリーナで、いきものがかりがこけら落とし公演をやらせてもらって、そこで当時の市長さんとお会いしていたり、うちの事務所(株式会社キューブ)の社長の出身地でもあって、事務所が主催でこのフェスをやることになった時に、スペシャルナビゲーターをやってくれないかという打診があって。いきものがかりとしても、新潟県や長岡市では何度もライヴをやっているので、縁があるといえばあるし、花火はもちろん知っていますが、観たことがありませんでした。

――長井さんはMCに任命されました。

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長井 なんで私?という感じでした(笑)。事務所に入ってまだ時間が経っていないのに、やらせてもらってもいいのかなって。フェスにも行ったことがないので、初めてのフェスがまさかのMCで楽しみです(笑)。

「長岡の人は総じて地元愛が強い」(山下)

――お二人は8月に行われた『長岡まつり大花火大会』に行かれたそうですね。

山下 初めて参加しました。1日は河原で、もう1日はビルの屋上から観させていただきましたが、とにかくすごかったです。長岡に行った翌々週に、都内の花火大会にも行きましたが、行く順番を間違いました(笑)。絶対に観たほうがいいです。

長井 私も初めて観させていただきましたが、もう圧倒されてしまいました。

――未来に繋げるために、何ができるかということが、大きなコンセプトになっていますが、『米百俵の精神』はご存知でした?

山下 いえ、知りませんでした。長岡の歴史もそこまで知らなかったので、この話をいただいてから、何度か長岡に足を運んで勉強しました。幕末の長岡藩の家老・河井継之助の記念館や、山本五十六記念館とかを巡り、まず長岡の偉人のことを知り、歴史に触れました。色々な人に会っているうちに気づいたのは、長岡の人は総じて地元のことが大好きで、地元愛が強いということです。ただ、花火大会は全国的にも有名で、盛り上がりますが、それ以外はなかなか…というところで、もっと盛り上げたいという思いが強いのも伝わってきました。愛が強いです。

長井 私も長岡の人と話して感じたのは、どう?うちらの町って感じがみなさんから伝わってきて、地元を背負ってるみたいでカッコいいなと思いました。

「長岡といえば花火。その“本気”花火が間近で観られるというのが、このフェスの大きな武器」(山下)

――長岡自慢の花火が、『米フェス』のメインのひとつで、夏の花火大会で観る事ができたあの花火が、このフェスでまた観る事ができると。

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山下 8月29日に現地で、『米フェス』で打ち上げる花火の試し打ちをして、YouTubeでも生配信しました。3発だけでしたが、観て下さった方はその迫力が伝わったと思います。長岡の花火大会では5号と7号と10号と打ち上げて、一番小さいのが5号だけど、都内だと4号までしかあげられないそうです。だから今まで都内で観ていた花火での感動に矮小さを感じました(笑)。今回は通常よりも大きい“ミュージックスターマイン”や、『米フェス』バージョンの“フェニックス”も打ち上げる予定で、これを間近で観られるというのは、このフェスの大きな武器になると思います。

長井 花火の大きさは東京の方が小さいじゃないですか、でも音は東京のほうがうるさくないですか?(笑) 。長岡の花火はあんなに大きいものがあがっているのに、音がきれいなんですよね。

山下 スピーカーでは作れない音って感じがしました。

――花火って桜と同じで、一瞬で終わってしまう、その儚さが美しさにつながっていると思います。

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山下 花火工場にも見学に行きましたが、職人さんが一生懸命色々な大きさものを、もの凄い数作っていて、でも本当に一瞬で終わるじゃないですか。改めてすごい仕事だなと思いました。あのわずかな時間のためにかける命ってすごいなと。僕にはあの仕事はできないと思いました。音楽は多くの人に聴いてもらえると、長く残るものです。でも花火は一回、一瞬で終わってしまいます。しかも雨が降ったら終わりで、花火って保存できないらしく、打ち上げられなかったら、破棄してしまうそうです。

――夏フェスの最後って、だいたい花火が上がるけど、モノが違うと。

山下 “ちゃんとした”花火って、意外と少ないと思う。『米フェス』は、それこそ尺玉、5号、7号と大きいし、その大きさのものが間近であがるのは、あまり観たことがないですね。

「このフェスのテーマソング「輝き」を書き下ろしました。レコーディングには地元の小学生にも参加してもらい、この曲に合わせた音楽花火を打ち上げます」(山下)

――フェスの締めではなく、花火がメインのひとつになっています。

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山下 そうですね、このフェスのテーマソングの「輝き」という曲を書きお下ろしました。最初はバラードにしようと思っていたのですが、花火師さんがテンポが良くてキメ、メリハリがあったほうが、演出がしやすいと聞いて、テンポはあるけどメジャー調になりすぎないようにしました。長岡の花火には“鎮魂”と“復興”というテーマがあります。長岡市立阪之上小学校の生徒のみなさんにもレコーディングに参加してもらったのですが、『米百俵の精神』で創立された学校の流れを汲む小学校だそうです。この曲に合わせて、プログラミングした音楽花火を打ち上げます。

――歌詞にはどんな想いを込めたのでしょうか?

山下 何回か現地に足を運んで感じたこと、会場から観た街の風景をイメージしました。それと子供たちが歌うので、あまり難しい言葉を使わないようにして、タイトルも「輝き」なので、花火と歌声がリンクすればいいなと思って書きました。

「こんなにJ-POPに寄ったアーティストが集まるフェスは、他にはない。小学生は無料なので、是非ファミリーで楽しみに来て欲しい」(山下)

「パッと見てわかる、知っているアーティストが揃っている。知っている曲もたくさん聴けるので、だから怖がらず、気軽に来て欲しい。絶対楽しい一日になるはず」(長井)

――出演アーティストの皆さんで、最後にこの曲を歌うとお聞きしました。

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山下 小学生はもちろん、出演者の方々にも歌っていただくので、音域が広い曲になっています。今回、若手からベテランまで、幅広い世代のアーティストの方が出演してくださります。こんなにJ-POPに寄っているフェスはなかなかないと思います。ベテランから新人まで、このアーティスト知らない、という人ももしかしたらいるかもしれませんが、比較的ファミリーが楽しめるアーティストが揃っていると思います。もちろんコラボもありますし、しかも、本間昭光さんと島田昌典さんという、日本の音楽シーンを代表する音楽プロデューサー2人が、音楽監督を務めて下さるのも心強いです。そのお二人が率いる凄腕バンドの演奏も楽しみです。それと、小学生以下無料ってなかなか聞いたことがないですよね。これは攻めたなと(笑)。親子連れで来やすいし、もしかしたらここが『米フェス』の一番すごいところかもしれません。子供たちに、このフェスで何かを感じて欲しいです。

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長井 パッと見てわかる、知っているアーティストが多いと思います。フェスによっては、行ってみたいけど、敷居を高く感じるものもあると思います。玄人のお客さんばかりが集まってるんじゃないかと不安になる人もいると思いますが、『米フェス』は、そういう変な緊張感を持たずに、観たことある、聴いたことがあるアーティストと曲が多いと思うので、絶対楽しい一日になると思います。シルバー向けの安いチケットも来年作ったらいいと思う。三世代で楽しめるフェスっていいですよね。

「とにかく美味しいものと美味しいお酒しか出さない。出番まで飲み過ぎないようにしたい(笑)」(山下)

「美味しいお米と水がある土地だから、日本酒の美味しさは格別」(長井)

――「食」も大きなテーマになっています。

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山下 とにかく美味しいもの、美味しいお酒しか出さないです(笑)。8月の花火大会の時パーティーがあって、そこで食べたおにぎりがものすごく美味しかった。フェスの時は新米の時期なので、また楽しみです。

長井 そうでした。パーティーでおにぎりの具が並んでいて、好きなものを選んで握ってもらう、あれは美味しかったですし、嬉しかったです。

――新潟といえばお酒です。特にお酒が大好きな山下さんは楽しみだと思います。

山下 そうなんです。県内の16の蔵元さんが参加してくれて、それぞれの自慢のお酒を出してくれます。僕はたぶんステージ袖で、出演者の音楽を楽しみながら、飲んでいると思います(笑)。飲みすぎないようにしないと(笑)。

長井 美味しいお米と美味しいお水がある土地だから、日本酒の美味しさも格別です。

「毎年夏の花火大会で100万人が訪れる町。だから混雑のさばき方が見事」(長井)

「長岡市が持っている仮設トイレの数は本当にすごい。だから安心してたくさん飲んで食べて(笑)」(山下)

――フェスというととにかく人が多い、混雑しているというイメージが強いですが、考えてみると長岡は、夏の花火大会に2日で毎年100万人という観客がやってきます。その辺のホスピタリティは高そうですね。

長井 花火大会の日の駅員の方の“さばき”が見事でした。私は最終の新幹線に乗るために、急いで駅に向かいましたが、みんなも自由席を求めてダッシュしていて、でも誘導ルートがきちんと区分けされていて、混乱もなくて感心しました。

山下 それと、一体どこから持ってくるのかと思うくらい、長岡市が持っている仮設トイレの数は半端じゃない(笑)。だから安心してたくさん飲んで食べられます。

「アウトドア好きの僕としては、手軽に来れるキャンプエリアにも是非注目してほしい。キャンプファイアーもあります」(山下)

――キャンプエリアもあるんですよね?

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山下 アウトドア好きとしては、フィーチャーしていただきたいところで(笑)。キャンプ場を併設していて、地元のアウトドアショップにも協力してもらって、何も持ってこなくても全部レンタルできるプランもあるし、持ち込みで自分たちでテントを持ってきてもらうエリアも作ります。キャンプエリアを使う方は、車で入ることができるというのも魅力のひとつだと思います。車で、近くの温泉に行くこともできます。キャンプができるフェスは他にもありますが、玄人向けという感じで、でも『米フェス』はとにかく手軽に来れるので、そこで差別化したい。キャンプファイアーもできます。それと、子供たちはずっと音楽を聴いていられないと思うので、キッズスペースやワークショップなどのアクティビティも充実しています。

長井 一番優しいフェスなんじゃないかな。

山下 このフェスが県内外問わず馴染んでいって、長岡大花火大会のように文化、伝統になればいいなと思っています。

――フェスの第1回目に行くチャンスは、なかなかないですよね。

山下 ちょっとした自慢(笑)。 初回の「フジロック」に行った人ってすごいと思うし。

――第1回目なので何が起こるかわからないし、期待も大きいけど不安もありますよね。

ロゴデザイン/森本千絵
ロゴデザイン/森本千絵

山下 みんなそう思っていると思うので、事故が起こらないように、スムーズにことが運ぶように、色々な人に協力してもらって、絶対成功させたいです。

『長岡 米百俵フェス ~花火と食と音楽と~』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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