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藤井フミヤ 35周年、55歳、今が旬 「「歌わせてもらっている」という想いが強くなってきた」  

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
『FUMIYA FUJII ANNIVERSARY BEST
『FUMIYA FUJII ANNIVERSARY BEST "25/35" 』<L盤>
『FUMIYA FUJII ANNIVERSARY BEST
『FUMIYA FUJII ANNIVERSARY BEST "25/35" 』<R盤>

藤井フミヤがデビュー35年、ソロデビュー25周年を迎えた。それを記念して、ソロデビュー曲「TRUE LOVE」(1993年)から最新アルバム『大人ロック』(2016年)まで、発表した全277曲の中から、ファンのリクエストによる上位100曲を収録したベストアルバム『FUMIYA FUJII ANNIVERSARY BEST "25/35" 』が7月18日に発売された。3 つのレーベルの垣根を超え、それぞれ50曲ずつ発売順に収録したL盤(ポニーキャニオン)、R 盤(ソニー・ミュージックダイレクト)という形で届けられた。このベスト盤、9月からスタートするアニバーサリーライヴについて、そして歴史好きの藤井が、岡山県を舞台に桃太郎伝説の謎をたどる番組『藤井フミヤスペシャル 岡山で観た。本当の桃太郎伝説!』(BSフジ)についてまで、話を聞かせてもらった。

ファン投票で選ばれた100曲。ライヴで定番のあの曲が1位

「意外と新鮮に感じてもらえると思う。マスタリングも変わっているし、だって作った本人が新鮮に聴けるんだもん」と、藤井が語るベスト盤、『FUMIYA FUJII ANNIVERSARY BEST "25/35" 』に収録される、ファン投票で選ばれた上位100曲の1位は、ライヴで定番曲「ALIVE」(アルバム『PURE RED』に収録)だ。ちなみに代表曲のひとつ「True Love」は8位だった。まさに藤井のファンの想いがストレートに表れた投票結果だ。この結果について藤井は「以前、ファン投票をやったときも、そんな感じだったのでなんとなく予想していました。「なに、この曲?」と思う人もいるかもしれないですが、ずっと応援してくれてるファンが選んでくれたものなので、逆にこれがいいんじゃないですかね」。

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この曲は藤井の弟で、兄弟ユニット・F-BLOODとしても活躍している、尚之に向けて書いた曲でもある。「それは、ずいぶん後になってから言ったことで、この曲が人気になって、その時かみさんが「そういえばあの曲」って話になって、でも自分ではそのことを忘れていて。ちょうどその頃、尚之が色々あって落ち込んでいた時期だったので、「頑張れ!」という思いを込めて、歌詞を書きました。結果的に、聴いてくれた人みんなに元気を与える曲に育ってくれて、嬉しいです」。

最新アルバム『大人ロック』の収録曲が、ファン投票のランキングを席捲

藤井は現在インディーズレーベルからリリースをしているが、その第一弾で、最新アルバム『大人ロック』の収録曲が、ファン投票のベスト10内に2曲(「GIRIGIRIナイト」「友よ」)、19位と25位にもランクインしている。最新曲が評価されていることに藤井は「よっしゃ!って感じで嬉しいですね。ロックンロールのシンプルなアレンジというか、いい意味での単純さがウケたのかなとか、非常に参考になる結果です。元々ロックの中でも、ポップなロックが好きだったから、そういう曲が多いアルバムなので、自分のカラーが色濃く出ていると思う」と語っている。

「よくぞここまでやってきた」から「歌わせてもらっている」へ

チェッカーズとしてデビューして35年、ソロデビューして25年、歌い続けている。もちろん続けることの大変さは感じつつ、活動を続ける中で、最近、心境の変化があったという。「「よくここまで歌ってこれた」という思いから、「歌わせてもらっている」「聴いてください」という気持ちに変わってきています。残るということは、本当に大変なことだと思う。他人事みたいに言っているけど、ここにきてつくづくそう思う。タモリさんが言っていたけど、長く続いている人のほうがおかしいって(笑)。特にポップスとかロックという世界は、ワーッと売れて、パッといなくなるのが普通だから、長くいるのは普通じゃないって(笑)」。

シンガー・ソングライターというスタイルにはこだわらない。“歌手”として、とにかくいい曲を歌いたいという気持ちの方が強い

さらにシンガー・ソングライター、ミュージシャンというよりは“歌い手”“歌手”としての自覚が強くなってきているという。「“歌手”としての濃度の方が自分の中では年々高くなってきていて、シンガー・ソングライターではあるけれど、自分で曲を作って歌わなければ嫌だという感覚はあまりないですね。それよりもいい曲を歌いたい、という気持ちの方が強いし、歌詞に関してはほとんど自分で書いていますが、でも他の人が書いたいい歌詞があったら、それを歌いたい」。

「あまり流行に乗ることなく、いつ聴いても古くない、スタンダードになりうる音楽を、常に目指していた」

コンスタントに作品を出し続け、しかも第一線で活躍し続けていることができるアーティストは、ほんのひと握りだ。「あまり流行に乗ることもなく、いつ聴いても古くない、スタンダードになりうる音楽というか、そういうものを常に目指してきました。でも277曲もあると、もちろん駄作もあるし(笑)、思い出がある曲もあれば、忘れてしまった曲もあります(笑)」と、正直に語ってくれた。

「35周年記念ツアーはお祭り」

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9月からは「35th ANNIVERSARY TOUR 2018 “35 Years of Love”」がスタートする。名曲オンパレードの、懐かしくも、新鮮なライヴになりそうだ。声のキーの高さが全く変わらないのも藤井の強さだ。「今回のツアーはお祭りだと思うんですよね。もちろんバラードもアップテンポの曲もやるんですけど、ある意味35歳の藤井フミヤの歌のテクニックと、パフォーマンスと、多少年老いたからこそ生まれる緩さとか、そういうものを感じるしかないでしょうね(笑)。キーの高さはずっと変わらないです。でも、なんでこんな高いキーで歌っちゃったのかなっていう曲もあるので(笑)、そういう曲に関しては若干下げますが、でもあまり変えると、楽器の音の響きが変わってしまうこともあるので、なるべく変えないで歌いたい。アレンジも今回は原曲に近いアレンジでやろうと思っています」。

藤井のライヴでもうひとつ見逃せないのが、マイクスタンドを使った華麗なパフォーマンスと、キレのあるダンス。股割りも健在だ。「ああいうことをやる人がいなくなってきたけど、この前ブルーノ・マーズのライヴを観に行ったら、やってましたね(笑)。演奏していたら途中で止まって、また一緒に動き出していく感じは、やっている音楽は違うけれど、チェッカーズの後半はあんな感じだったなって思いながら観ていました」。

「次のオリジナルアルバムは、大人ぶったしっとりしたものにはならないと思う。まだそんなに落ち着きたくない」

ベスト盤をリリースした後は、やはり『大人ロック』以来のオリジナルアルバムを期待するファンは多い。大きなテーマとしては、やはり“大人ロック”、色気と遊び心があるロックが詰まったアルバムになるのだろうか。「オリジナルアルバムの制作に向けて、すでに動き始めています。今インディーズなので、今のうちから言っておかないとね(笑)。大人ぶった、しっとりしたものは出さないと思います。まだそんなに落ち着きたくないし(笑)」。

BSフジの“桃太郎伝説”を探る番組に出演。「オファーをもらい、面白そうだったのですぐに受けて、ロケを楽しみました」

藤井はエクスペリエンス・デザイナー渡邉賢一と共に、謎多き桃太郎伝説を紐解いていく
藤井はエクスペリエンス・デザイナー渡邉賢一と共に、謎多き桃太郎伝説を紐解いていく

このベスト盤の発売日前後で、メディアへの露出が続く藤井だが、珍しく“歴史ハンター”としてロケに出かけたドキュメント番組に登場する。それが7月21日(土)にBSフジで放送される『藤井フミヤスペシャル 岡山で観た。本当の桃太郎伝説!』(17時~)だ。諸説ある桃太郎伝説を、ゆかりの地・岡山県で“探る”。

桃太郎ゆかりの地は、岡山県・香川県・愛知県・奈良県等、日本各地に存在。その中でも、全国的に有名なのが岡山県だ。「桃太郎」はいつ、誰が、何のために作ったものなのか?本当に実在した人物なのか?本当にヒーローだったのか?どの様に神格化され、どの様に受け継がれて来たのか?を番組では追いかける。元々日本古代史好きの藤井だが、この番組への出演依頼が来たときはどう思ったのだろうか。「面白そうだったので、すぐにノリました。普通のプロモーションでテレビに出る方がつらいです(笑)。ロケは色々な人に会えるので好きだし、人見知りしないからフレンドリー感が出ちゃう(笑)。でも歌っていない自分を見ると、ただのおっさんですからね(笑)、それを良しとしてくれるか、です(笑)」。

「この古代ロマンの謎解き、観ていただけると絶対にハマると思う」

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桃太郎伝説については、どう感じていたのだろうか。「実在したという話は聞いたことがあって、でもそれが誰のか知らなかったし、何で桃太郎が鬼を退治しようってなったのかも知らなかった。でも今回、桃太郎の正体はあっという間にわかります。問題は鬼。鬼は一体何者で、誰なんだっていう(笑)。これが番組のキーポイントになっています」。

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桃太郎は歴史的事実から作られた物語で、その正体は吉備津彦命(きびつひこのみこと)という天皇家にゆかりのある人物だ。「吉備津彦命の存在なんて、ほとんどの人が知らないじゃないですか。でも岡山は元大王国で、大王の墓といわれているけど、誰のお墓なのかわからない巨大前方後円墳のひとつ、作山古墳にも登りました。この古代ロマン、観ていただけるとハマると思います」。

「35年間歌い続けてきて、今一番脂が乗っているかもしれない」と本人も言うように、気力も充実し、その歌はさらに輝きを増し、多くの人の心を潤す。

藤井フミヤ オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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