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熊木杏里×冨田恵一、島田昌典、坂本昌之――新たな"熊木ワールド"が生まれた夜

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
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熊木杏里といえば、そのあふれる透明感の中に、聴き手の感情を揺さぶる凛とした佇まいの、でも癒しを感じさせてくれる声で、これまでに「資生堂」や「ユニクロ」などのCMソングや、映画、TV番組でも数多くのタイアップ曲を歌ってきたシンガー・ソングライターだ。2016年には『Charlotte』、『Rewrite』などの人気アニメのテーマソングにも起用され、2017年にデビュー15周年を迎えた。

熊木の2006年のヒット曲で、「資生堂」の企業CMに起用された「新しい私になって」を聴いて、絶賛していたのが小田和正だ。毎年クリスマスに放送される、小田がホストを務める番組『クリスマスの約束』(TBS系)でも、2006年に小田はこの曲をカバーしていた。そして昨年の同番組についに熊木が出演。小田は「2006年にテレビであるCMが流れてまして、それがとても素敵な曲で、どんな人が、どんな風に歌っているんだろうって、ずっと思っていて。とってもかわいいい歌です」と「新しい私になって」を紹介し、熊木と一緒に歌った。

音楽Pが絶賛する、熊木の声と言葉

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そんな熊木の声と歌が持つ独特の世界観と、冨田恵一、島田昌典、坂本昌之という3人の人気音楽プロデューサーの世界観とが、いい意味でぶつかり、そして見事に融合し、素晴らしい音楽が生まれる瞬間を捉えた番組が21日、オンエアされる。それが『Sound Inn “S”』(BS-TBS)だ。3人の音楽プロデューサーと、一夜限りのアレンジで歌を披露した熊木は、「より音楽を楽しみながらやっていく糧、次へ進むすごい一歩をもらった」と、かけがえのない、貴重な時間になったようだ。

「声の表情が豊かでとにかく繊細。聴けば聴くほど味が出る「Stay~」になった」(冨田)

冨田恵一×熊木
冨田恵一×熊木

1曲目は、冨田恵一のアレンジで、リサ・ローブの「Stay(I Missed You)」。この曲は熊木が「私はフォークソング、ギターソングが好きで、シンガー・ソングライターとして始めた頃によく聴いた曲。しゃべっているように歌うところが印象的」と、フェイバリットソングに挙げている作品で、冨田は「シンプルだけど構成がコロコロ変わる曲。オリジナルの良さをなくさない方がいいと思った」と、この日のアレンジのテーマを説明。キュートさと気持ちよさを感じさせてくれるセッションになった。熊木について冨田は「声の表情が豊かでとにかく繊細。「Stay」も完全に自分のものにしていた。シンプルだけど聴けば聴くほど味が出る、スルメ的な作品に仕上がっている」と絶賛していた。

熊木から島田へ、「春の風」は「心の傍らで歌えるアレンジに」とリクエスト。「叙情的ですごくよかった」(熊木)

島田昌典×熊木
島田昌典×熊木

2曲目は、島田昌典とのコラボで、映画『バッテリー』の主題歌にも起用された熊木の作品、「春の風」。「声の透明感と詩的な歌詞が素晴らしい。「春の風」はその声と強い歌詞のギャップがいい」と島田が言うように、熊木の透明感あふれる声の魅力を、最大限に引き出すアレンジに仕上げた。実は熊木からは、この曲を一夜限りのアレンジで歌うにあたり、島田へのリクエストがあったという。「原曲は映画のエンドロールに流れるため、壮大なアレンジになっているので、今回は語るように身近な歌のように、心の傍で歌えるアレンジになると嬉しいです」と。島田が「ざらついた、土臭い感じを出したくて、カホン(ペルー発祥の打楽器)を入れてみました」というアレンジについて、歌い終わった熊木は「少し尖った感じで、やや落ち着いた雰囲気もあり、叙情的ですごく良かったです」と感激していた。さらに、熊木の音楽のルーツは、70年代フォークソングだと聞いた島田が、即興でギターでフォーク風アレンジを施し、リハーサルの合間に披露した。「「春の風」が吹いたのではないでしょうか」(島田)。

「詞の世界観が個性的で、柔らかい感じで強い事を伝える"熊木ワールド"に惹かれる」(坂本)

「「羽」は一番聴いて欲しい歌詞なので、どうしても歌いたかった」(熊木)

坂本昌之×熊木
坂本昌之×熊木

3曲目は、久々の再会という坂本昌之のアレンジで、自身の楽曲「羽」を披露。坂本とは、10年ほど前に熊木のアルバム制作で一緒に仕事をし、それ以来という事で、カメラの存在を忘れ、昔話に花が咲く。熊木について坂本は「詞の世界観が個性的で、熊木ワールド、独特の“熊木語”がある。柔らかい感じで、強い事を伝える。曲のタイトルも面白いものが多い」と、他にはない、熊木が紡ぐ言葉の独創性に惹かれるという。今回「羽」を選んだ理由を熊木は「自分の中ではいちばんよくできた曲だと思っていて、一番聴いて欲しい歌詞なので、どうしても歌いたかった」と教えてくれた。言葉が立った歌だが、優しいメロディと歌が心地いい。その曲の輪郭をさらに浮かび上がらせ、言葉と歌により光を当てたような坂本のアレンジを熊木は、「胸が熱くなるアレンジ」と感動していた。坂本は「10年ぶりに熊木さんと“確かめ合う”事ができて、音楽をやっていてよかったと思う瞬間でした」と語っていた。

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3人の音楽プロデューサーに囲まれ「至福の時間でした」という熊木と、凄腕ミュージシャンによる一夜限りのセッションは、まさに“至福”の音楽だ。奇跡の音楽が生まれる瞬間を捉えた『Sound Inn “S”』は、4月21日23時からオンエアされる。

『Sound Inn "S"』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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