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Kalafina 3.11ライヴへの想い「お互いに気持ちを受け留め合い、発信するパワフルな一日に」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
「出演者全員が、この日に歌う事の意味を考えた選曲で臨みます」

2011年、震災から約2週間後にツアーをスタート。「「光の旋律」を歌うと、みんなで心の中で手を握り合っているような空気になって、その時に音楽で人と繋がる事の大切さを感じた」(Keiko)

――3月11日に豊洲PITで行われる、「チームスマイル」東日本震災復興支援ライヴ『Toyosu Music Collaboration』に出演されますが、「チームスマイル」の活動をどう感じていましたか?

Wakana 震災者の方の気持ちを完全に理解する事は難しいかもしれませんが、音楽という、自分達ができる事を届ける事ができるのは嬉しいです。音楽は好きだったら聴いてもらえるし、好みでなければ聴き流してもらえるもの。でも音楽は、生きている時間の中で常に存在してもいいものなんじゃないかなと思っています。

――2011年当時、3人はデビューをして3年が経った時でしたが、音楽、エンタテイメントの必要性を改めて考える瞬間でしたか?

Keiko
Keiko

Keiko 震災から約2週間後の3月27日、大阪公演からツアーがスタートする予定でした。テレビのニュースから流れる被災地の様子を見ていて、みんなで悩みました。ライヴやイベントが次々と自粛という形になって、そんな中で自分達はツアーの収益を義援金にするといった形で、何とか決行することを決めました。ツアーは4本でしたが、各会場に足を運んでくれた、被災された方も、そうではない方も、この日を楽しんでいいのか、罪悪感との葛藤があったと思います。そんなライヴで「光の旋律」という曲をアンコールで歌ったのですが、希望に向かっていき、空から降ってくるメロディ、言葉が心に寄り添うという内容の歌詞なので、みんなで心の中で手を握り合っているような空気になって、その時に、音楽で人と繋がる事の大切さを感じました。ツアーを決行する事は、勇気が必要でしたが、やってよかったと思いました。私達はツアーの事を“音楽の旅”と言っているのですが、「音楽の旅をしていく中で、ターニングポイントになったよね」って、今でも三人で時々振り返る、思い出深いものになっています。

「震災後は、自分ができる事は何だろうと考えた時、誰かに向かってできる事って本当に少ないと痛感。今できる事は音楽で会話をする事しかない、という気持ちで取り組んだ」(Hikaru)

Hikaru
Hikaru

Hikaru 当時の私は、東日本大震災ともうひとつ、母校の後輩がニュージーランドの地震で被災をしてしまい、精神的にはダブルパンチで、自分の在り方というものを考えた時期でした。自分ができる事って何だろうと考えた時、誰かに向かってできる事って本当に少ないんだなって痛感しました。その中でKalafinaでツアーを決行すると決めた時に、ライヴ=音楽で会話する、という事をしっかりやろう、今できる事はそれしかないという気持ちで取り組めました。「チームスマイル」はそういう気持ちを持った方が、ライヴやその他の活動をしていると思うので、そこに参加できるというのは、光栄な事だと思っています。

「音楽は伝わる。どんなライヴでも皆さんの心に届くように丁寧に歌い、それが誰かの役に立つ事ができたら嬉しい」(Wakana)

「色々な思いを抱えた方が音楽を感じに来る場所なので、3月11日にライヴをやるという事に意味がある」(Keiko)

――この日にここでやるライヴというのは、いつものKalafinaさんのライヴとは違う気持ちになるのでしょうか?

Wakana
Wakana

Wakana ライヴって、いつ、どんな場所でもKalafinaの音楽を、同じように伝えたいという想いが3人共あって、それは海外でもたくさんライヴをやらせていただいている中で思った事なんです。いつも、言葉は通じなくても“音楽”を伝えようと思いました。フランスでもアメリカでも中国でも、日本語なのにみんな一緒に歌ってくれて。それを聴いて、音楽って本当に伝わるんだなって自信が付いた出来事だったので、やっぱりどんなライヴでも皆さんの心に届くように丁寧に歌おうと、いつもライヴが始まる直前に、3人でステージ袖で言っています。そんな風に歌った音楽が、誰かの役に立つ事ができたら、さらに嬉しいです。

Keiko やっぱり3月11日という日にライヴをやるというのが大きいと思っていて、私達もですが、ライヴに来て下さる方も、あの日の事を思い出すと思います。あの日を忘れてほしくないという方もいれば、忘れたいという方もいらっしゃると思います。そんな色々な思いを抱えた方が音楽を感じに来る場所なので、3月11日にやるという事は、意味があると思っています。

――この日は仙台PITでもライヴがあって、釜石PITでもライヴビューイングあって、3か所同時開催で、被災地と繋がっている感覚があります。

Keiko 毎年この時期になると、震災の事がメディアでも多く取り上げて下さるので、その時にやっぱり忘れてはいけないと、思いを新たにする人も多いと思います。今回私達は、ライヴで皆さんに発信する機会をいただけたというのが、大きい事だと思っています。

「『Toyosu Music Collaboration』は、出演者全員が、色々な楽曲がある中で、この日に届けるという意味を考え、意思を持って選曲している」(Keiko)

――今回のライヴは、同じ事務所のアーティストとの共演で、同じスタイルの『MUSIC ENERGY』というイベントをこれまでにもやっていますが、やはり通常のライヴ以上に、楽しみ、楽しみたいという気持ちが大きいのでしょうか?

『Toyosu Music Collaboration』(3月11日東京・豊洲PIT)
『Toyosu Music Collaboration』(3月11日東京・豊洲PIT)

Hikaru なかなかこういうイベントもないので、普段色々なところで活躍しているみんなが集まって、ひとつのものを作るというのは楽しみです。

Wakana 『MUSIC ENERGY』では、みんなのとのコラボがドキドキでしたが、でも楽しみで、今回はみんなの曲をちゃんと聴けるのが楽しみです。バンドの皆さんも強力な布陣なので、どんな音楽を奏でてくれるのか楽しみです。

――それぞれのアーティストの音楽を、タップリ楽しめる一日になりそうですね。

Keiko そうですね。みんなの魅力をたくさん見ていただける日になると思います。出演者全員が、色々な歌がある中でこの日に届けるという意味を考え、意思を持って選曲していると思います。私達もこの日に聴いて欲しいという、魂を込めた曲達を選曲しました。3月11日に、ここで一緒に音楽を作りたいです。私達だけでは完成させられないので、完成型をみなさんと一緒に作りたいです。

――武道館のような大きな会場でやる時と、ライヴハウスと、変わらないライヴをやろうという気持ちは先ほどお聞きしましたが、やはり熱気、熱量に煽られて、いつも以上に熱くなる瞬間もありそうですね。

Keiko そうですね、どこでも同じように丁寧に、というライヴの軸はありますが、ライヴハウスだとお客さんに視線を合わせに行くんです。だからたまに目が合っているのに視線を逸らされたり(笑)。

Wakana お客さんからのお手紙にも「Keikoさんが僕を見てくれ過ぎて恥ずかしかったです」って書かれていて(笑)、でも全員に視線を合わせにいっています!

Keiko みなさん11日は心して来てくださいね(笑)。お互いに気持ちを受け留め合うというか、受け取り合って、それで発信していくような、そんなパワフルな一日したいと思っています。

――Karafinaの最大の武器は三声である事だと思いますが、声の重なり、響きがやはり大きな感動を生み、聴き手の心に入って、しかもずっと残りますよね。

Keiko 私達も活動していく中で、言葉をどんな風に届けたいのか、皆さんに受け取ってもらえるのかは声の力、表現にかかっていると実感していますし、意識しています。私自身も二人が歌っているのを受けて、次に繋いで歌ったり、三人でハーモニーを重ねる時も、声の寄せ方は、言葉にすると不思議な感覚なんですが、心を重ねて紡いでいくイメージがあります。例えアップテンポの曲でも、私達はテンションが上がりすぎないように、その境界線を自分達の中で設定して、ハーモニーはしっかり固めた上で届けたいといつも思っていて。そこは徹底していて、ハーモニーを崩すような事は絶対にしてはいけなくて、その中でどこまで楽しむかという事を続けてきました。アコースティックライヴを始めてから、声の力というものをより丁寧に意識するようになって、まだまだ掘り下げていきたいと思っています。

「この10年で身になった事がたくさんあるので、人生の最後に振り返る時に、この10年があってよかった、濃密な時間だったという記憶が最後まで残っているはず」(Hikaru)

――1月23日のデビュー記念日に、日本武道館で10周年記念ライヴを行いましたが、改めて10年を振り返ってみて、あっという間という感覚でしたか?それとも長い道のりでしたか?

1月23日/日本武道館
1月23日/日本武道館

Wakana しっかり歩んできたという感覚が強いので、長かったはずですが、でもいざ三人で振り返ってみると、あっという間でした。去年、10周年を見据えて“9+ONE”というツアーを行いました。10周年に向けて今自分達ができる事、がテーマで、デビュー日の1月23日のステージは、お客さんと私達、ミュージシャンのみなさん含め全員が楽しめるステージにするって決めていたので、そこに向かって365日があった感じです。武道館では27曲披露したのですが、あっという間に終わってしまった感じがして、だから10年もあっという間だったような気がしています。

Keiko 私はあっという間でした。色々な事に没頭させてもらったので、あれ、10年ってこんな感じ?という感覚です(笑)。私は常に、きっちりスケジュール建てをした一日を過ごすタイプなので、一日も短く感じます。10年という時間を振り返る度に、毎年やらせていただいている事が増えていて、それはありがたい事ですし、楽しい時間ですが、体感としてはあっという間でした。

Hikaru 私も体感としてはすごく早かったです。でもこの10年で身になった事がたくさんあったので、人生の最後に振り返る時に、この10年があってよかった、濃密な時間だったという記憶が、最後まで残っているはずです。

「私達のライヴには、小学生からお年寄りの方まで幅広い層の皆さんが来てくださいます。だからこそ「ファン」ではなく「お客様」という気持ちでいつも接しています」(Wakana)

――お客さんにエネルギーを与え、逆にエネルギーをたくさんもらい、いい音楽といいライヴを作り続けてきた10年間でしたよね。

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Wakana 3月30日に公開される私達のドキュメント映画(『10th Anniversary Film~夢が紡ぐ輝きのハーモニー~』)に、1月23日の武道館ライヴの様子も収録されているのですが、それを観た時に、あの日のお客さんの笑顔が全てを物語っているなって思いました。みなさん本当にいい顔をしてくださっていました(笑)。

Keiko ライヴの最後に「ありがとうございました」って3人で挨拶をするのですが、そうするとお客さんが「こちらこそありがとう」って言って下さって、また「本当にありがとう」って伝えて、そのやりとりが昨年のツアーでは本当に多くて。なんだろうこの関係って…と、いつも感動しています。

――ファンの方が心からそう思っているからこそ、出てくる言葉なんでしょうね。

Keiko 私達はデビューした時から「ファン」という感がなくて。

Hikaru 自分達の口から「ファン」という言葉が出る事はほとんどなくて。

Wakana そうなんです、いつも対個人なんです。

Keiko そういう気持ちでずっと歌ってきました。

Wakana 私達のライヴには老若男女、たくさんの方が来てくださいます。小学生からお年寄りまで幅広いので、だからこそ「お客様」という気持ちで接しています。「Kalafinaのこの曲を聴きに来た」という方もいらっしゃると思うので、他にも気に入っていただける曲があるかもしれないですし、もっというと、私達の事を好きになってもらえると嬉しいです。そういう気持ちでずっとやってきているからこそ、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

Keiko 色々な方が応援してくれるからこそ、バンドスタイル、アコースティック、クラシックホールもライヴハウスも、お客さんに合わせて音楽を届ける事がベストだと思い、これまでやってきました。

「私達の強みは、色々なジャンルの楽曲ができる事と、ハーモニーで歌の色々な表情を見せる事がアレンジ」(Wakana)

――そうですよね、色々なスタイルのライヴができるのは強みですよね。

Hikaru クラシックスタイルでやる時は、最初はガタガタ震えていました(笑)。

Wakana 毎年クリスマスの時期にやっている“Kalafina with Strings”から得たものは本当に大きいですし、私達の強みは、色々なジャンルの楽曲ができる事と、歌の色々な表情を見せる事ができるアレンジだと思っています。

――色々なライヴを聴けるKalafinaのファンの方は、耳が肥えている人が多そうですよね。

Wakana 音楽を聴きに行く気持ちって、日々楽しい事を求めている人だから持てるもの、という気がしていて。音楽を求めるという事は、求める心があるという事で、色々な音楽がある中で、私達の音楽を選んでくださるのは嬉しいです。プロデューサーの梶浦(由記)さんにも「Kalafinaの音楽を聴きに来てくれているという自信を持った方がいい」と言われた時に、本当に自信になりました。もちろん勘違いしないで、その感覚は持ち続けたいです。

「ドキュメンタリー映画は、私達の10年間の軌跡が収められています。思ってもなかった映像が出てきて、3人でジーンとしてしまいました」(Keiko)

――先程お話に出ました、ドキュメンタリー映画『10th Anniversary Film~夢が紡ぐ輝きのハーモニー~』ですが、今回の武道館公演を含め、昨年、世界遺産の日光東照宮と奈良・興福寺で行われたライヴの様子などを収めたもので、Kalafinaの表も裏も観る事ができる貴重な作品になっています。常にカメラがある中での活動は、いかがでしたか?

Hikaru 半年間ずっと密着して下さって、やっぱり最初はカメラの存在が気になっていたのですが、もう途中からあきらめて、意識しないようにしました。

Keiko 意識して変な言葉が出たり、行動したりするのでは?という不安が最初はありました。でももう諦めたら、最後はカメラマンさんがカメラではなくカバンを持っているように見えてきました(笑)。

Wakana いつも同じカバンを持ってるって(笑)。

Keiko 世界遺産でのライヴの時から密着して下さっていて、そこから1月の武道館公演のバックステージまでの中で、私達のカメラへの距離感も変っていると思うので、半年間でこんなにも違ってくるんだという部分も、見どころだと思います。

Hikaru 最後の方は少しナチュラルになっていると思います(笑)。

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Keiko 密着したいただいたのは半年間ですが、昔の映像も色々なところで差し込んでくださっているので、私達の10年の歩みというか軌跡を、一本のフィルムにしていただいた形です。完成したのを観た時に、思ってもなかった映像が出てきたりして、ジーンときました。

Wakana 3人で観たので、この時はああだった、あの時はこうだったという話で盛り上がってしまって、副音声を入れたいと思いました(笑)。でもあれは、ファーストコンタクトでやるのが一番面白いので、もう無理ですね(笑)。今回は10周年に向けて、という部分をしっかり撮って下さって、監督の思いもすごく伝わってきて、感動しました。カメラマンの方もずっと同じ方だったので、1月23日のライヴのリハーサルで会った時、それまでアコースティックライヴから、あらゆるライヴを観て撮って下さっていたので、武道館で大編成のライヴのリハを観て「いやあ、これが観れるなんて、感動だね」って言ってくれたのがすごく嬉しくて。いつも笑顔で撮ってくれていて、全部を観てくれていたんだと思うと、仲間のような感じがして、感動しました。是非皆さんに観ていただきたいです!

『Toyosu Music Collaboration』オフィシャルサイト

Kalafinaオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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