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GLIM SPANKYのロックがさらに進化した夜――人気音楽P3人との一夜限りのセッションに酔う

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
GLIM SPANKY(左:松尾レミ(Vo/G)、右:亀本寛貴(G))

人と人がつながり、何かが生まれる音楽番組『Sound Inn"S"』

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BS-TBSで放送されている音楽番組『Sound Inn “S”』(毎月第3土曜日23時~23時30分)は、“時を超えた、ここでしか聴くことのできないサウンド”をテーマに、最高のアーティストとアレンジャー、ミュージシャンが極上の音楽を作り上げる、“今、最も純粋な”音楽番組だ。同番組の服部英司プロデューサーが「原曲があって、それを我々のオリジナルのアレンジで作るので、原曲のアレンジではやっていない、できていない事をやろうというのがテーマ。それで、アーティストに気に入ってもらえて、その後この番組で共演したアレンジャーさんとレコーディングしたとか、ここでのアレンジをライヴでやったという話を聞くと、番組冥利に尽きます」と語っているように、1月20日に登場したLittele Glee Monster(以下リトグリ)のニューシングル「ギュッと/CLOSE TO YOU」(3月14日発売)の中に、この番組でリトグリのために、音楽プロデューサー本間昭光がアレンジした「明日へ」が、「明日へ Sound Inn "S" ver.」として収録される。人と人がつながり、何かが生まれる、それがこの番組の醍醐味でもある。

GLIM SPANKYと3人の人気音楽プロデューサーが競演

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2月17日の放送では、ボーカル松尾レミと、ギター亀本寛貴のロックユニット・GLIM SPANKYが登場。亀田誠治、笹路正徳、島田昌典の3人の音楽プロデューサーがアレンジした曲を、セッションした。亀田と披露した「愚か者たち」(1月31日発売)は、元々亀田がプロデュースしレコーディングも参加している曲だ。今回のセッションについて松尾は「オルガンが加わり、より力強く生々しくなり、曲の尺も少し変わっていたりでとても刺激的な演奏になっています。素晴らしいメンバーの皆さんも、いい意味で「ティーンの心」でやってくださいました」と語っている。亀田も「19歳になって演奏できた(笑)。彼らと一緒に演奏していると、少年の頃に帰れる」と、二人が奏でる刺激的なロッが、“ロック少年”だったあの頃に戻してくれたと、演奏を心から楽しんでいた。

「「愚か者たちへ」は自分がプロデュースした作品なので、この曲の本来あるべき姿を追求した」(亀田)

左:亀田誠治
左:亀田誠治

GLIM SPANKYは2012年に、亀田がネット上で展開しているコンテンツ『WEB亀の恩返し』内の「亀田大学」の中で、才能のあるアマチュアミュージシャン紹介する「亀田大学サークル」というコーナーに応募し、メジャーデビューのきっかけをつかんだ。以来折を見て、亀田が彼らの楽曲プロデュースを手掛けている、まさに師弟関係といってもいい。「自分の手がけているアーティストが、テレビというメディアに乗って外に出ていく時に、そこでも自分達が彼らの背中を押せるというか、作品上だけではなく、次のステップでアウトプットしていく時に力になれる喜びのようなものを、この番組は与えてくれます。今回は、彼らとジャムセッションをやる場ではありましたが、ただ楽しくやるだけではなく、このセッションに向けて気持ちを高めて、集中させてきました。「愚か者たちへ」は、自分がプロデュースした曲なので、この曲の本来あるべき姿はどこにあるんだろう、という事を考えながら、自分のエネルギーを燃やしていくという時間でした」(亀田)。日ごろから「レコーディングはライヴのように、ライヴはレコーディングの気持ちで」と言っている亀田の言葉通り、アグレシブな演奏で、極上のグルーヴを感じさせてくれる。

ブリグリのカバーは「バンドの一体感も出て、ロックな良いテイクが録れたと思う」(亀本)

笹路正徳
笹路正徳

笹路正徳とはthe brilliant greenの「There will be love there-愛のある場所-」を披露した。ちなみに原曲のアレンジを手がけているのも笹路だが、原曲にはないイントロを付けたり「カラフルな感じにはなったけど、オリジナルを変化球とすれば、今回は直球という感じ」と語り、さらにロック度を強調したアレンジにし、全員でセッションを楽しんでいた。「ストリングスやエレクトリックピアノなど沢山の楽器の皆さんと演奏させて頂いてとても心地よい空間でした。笹路さんは原曲を編曲されている方なので一緒に演奏出来て嬉しかったですし、バンドの一体感も出てロックな良いテイクが録れたと思います!」(亀本)。

島田昌典アレンジのキャロル・キングのカバーは「豪華な70年代の王道ロック感がとても出ていた」(亀本)

島田と打合せ中のGLIM SPANKY
島田と打合せ中のGLIM SPANKY

島田昌典とはキャロル・キングの名曲「I Feel The Earth Move」をセッション。60年代~70年代のロックと、そのルーツであるブルースをベースに、独特のカラーと匂いを醸し出すロックを聴かせてくれるGLIM SPANKYの音楽性と、島田が「どこにもいない唯一無二の声」と絶賛する松尾の声を、最高に輝かせるアレンジを施した。「VOXのJaguar organやホーンセクションが入ることによって豪華な70年代の王道ロック感がとても出ていましたし、リズム隊やギターの方々も自由に演奏してくださって生のセッション感が非常に楽しかったです!」(亀本)

「アーティスト、アレンジャー、ミュージシャンの音楽を楽しみたい、この曲を伝えたいという想いを、くすぐってくる番組」(亀田)

アーティストの魅力を最大限に引き出すアレンジで、新たな魅力を与えるアレンジャー陣の競演がこの番組の魅力だ。どこまでも“音楽第一主義”の番組作りに、アーティスト、アレンジャーそしてミュージシャンも腕が鳴るという。今回が3回目の出演となる亀田は「すごくミュージシャンシップに乗っ取って作られていて、曲選びから始まって、その曲にどのアレンジャーが合うのか、どのプレイヤーがいいのかを、スタッフととことんディスカッションしながら作っていけるところが好きです。アレンジをすごく大切にしてくれるので、本当にやりがいがある。アーティストと、アレンジャー、ミュージシャンの音楽を楽しみたい、この曲を伝えたいという想いを、番組の方からくすぐってくる」。

作り手の熱意と、アーティスト、アレンジャー、ミュージシャンのそれに応えようという想い、プライドと技術、そして何より音楽を楽しもうという気持ちがひとつになり、高い熱量となって、それがお茶の間に届いている。

Sound Inn "S"オフィシャルサイト

GLIM SPANKYオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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