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人気急上昇中「劇団番町ボーイズ☆」とは!? 舞台『クローズZERO』は、雑草魂がひとつになる瞬間

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
左から二葉勇、菊池修司、堂本翔平、松本大志、千綿勇平、安井一真

今人気急上昇中の個性派男性集団・劇団番町ボーイズ☆(以下番ボ)を知っているだろうか?2014年に結成された、様々なオーディションから選ばれた18人で構成される、舞台を通して新たな可能性、エンターテイメントを追及していく育成プロジェクトだ。そんな彼らが第10回本公演として、『クローズZERO』(11月30日~12月3日 東京・渋谷CBGKシブゲキ!!)を上演するが、そのチケットは30分で即完という人気ぶりだ。同作品は2007年の大ヒット映画の舞台版で、人気作品を演じるという事で、メンバー全員気合が入っている。その意気込みをメンバーを代表して主演の松本大志と、堂本翔平、二葉勇、安井一真、千綿勇平、菊池修司の6人に聞いた。さらに脚本・演出を手掛ける山田ジャパン・山田能龍氏に、舞台の方向性と、番ボの魅力について語ってもらった。

様々なオーディション経験者が集まった男性演劇集団。しかしアーティスト、モデル様々なフィールドで活躍

まずは番ボの成り立ちから。番ボは、ソニー・ミュージックエンタテインメントの新人開発セクションSDグループが主宰する男性演劇集団で、様々なオーディション経験者が集まった、キャラクターが立った、個性的なメンバーで構成されている。また人気ダンスボーカルユニットXOX(キスハグキス)も在籍しており、劇団以外でもモデルやアーティストなど、様々なフィールドで活躍している。2015年、結成からわずか半年で第1回公演を行って以来、ここまでハイペースで舞台を上演してきた。メンバー同士がぶつかり合いながらも、それを一人ひとりが前向きに捉え、切磋琢磨しながらここまで劇団としての“強度”を上げてきた。

二葉勇
二葉勇
千綿勇平
千綿勇平

「男性グループは他にもたくさんいますが、そういう中で僕らは番組(「テアトル★番町W」(TOKYO MX))で芸人さんとのコントをやらせていただいたり、ライヴをやらせていただいたりと、色々な事にチャレンジできているのが強みだと思っています。芝居だけで戦っていくのは決して簡単な事ではありません。そこに僕らなりのエンターテイメントをプラスして、唯一無二の芝居の形を作っていきたい」(二葉)。「僕らは歌、芝居、ダンス、色々な武器、色々な色の個性を持った人間が揃っていて、一つひとつの色だともしかしたらまだ弱いかもしれない。でもそれが舞台やライヴでひとつになると強い光を放って、いい色になると思っていて」(堂本)。「年齢もバラバラで、最初は無理矢理集まったような感覚だったので、ひとつになりきれていない部分がありました。でも公演を重ね、ミーティングでもぶつかり合いながら、少しずつですが、目指すべき方向が固まっているのがお客さんにも伝わって、僕たちのパフォーマンスにも影響が出ていると思います」(千綿)。

「言いたい事を言い合えて、切磋琢磨できるのが強み」

山田能龍氏
山田能龍氏

元々、個々で売れたいと思っているメンバーが集まっていただけに、壁があり、最初はお互いがそこに踏み入らない感じがあったという。しかし「今色々な事ができるようになって、色々な方面でみんなが力をつけていって、それが最終的に世間から認められるようになれば、番町ボーイズ☆として、ひとつの新しい答えが見つかると思っているので、そこからが勝負だと思っています」(菊池)とお互いが認め合い、個人戦で得た力を団体戦でも爆発させようとしている。その“新しいひとつの答え”が、記念すべき第10回本公演でもある『クローズZERO』なのかもしれない。その脚本・演出を手掛ける、いとうあさこを筆頭に個性派揃いの劇団員を擁する劇団「山田ジャパン」主宰の山田能龍氏は、番ボの第6回本公演『ギブアップダンス!!!』でも、脚本・演出を手掛けている。山田氏に彼らの魅力を聞くと「一番最初に観た時は、芝居より企画が勝っていて、でもその後色々な演出家さんに鍛えられた事もあって、僕とやる時はグッと良くなっていて、ラッキーと思いました(笑)。彼らは稽古の休憩時間も休憩しないんです。遊びながら演技をするというか、あのシーンが好きだから俺もやりたいとか、例えば誰かが来られない日に、そこのスタンドインの代役選手権をやるというと必死になったり、ベタだけどキラキラしていていいなと思いました。でも実は休憩時間も含めて、稽古場での「居方」に、その人のメッセージや持っているものが出てきます。成長スピードの速さ、遅さもそこで見えきます。そういう意味で彼らの成長のスピードは恐ろしく速いし、吸収力がすごい」と、芝居への向き合い方や、色々な事を吸収しようという貪欲さを評価している。「僕達はメンバー同士が気になっている事、良くないと思っている事を言い合える環境がすごくいいと思っていて。若い人は、言葉にしないで気持ちがモヤモヤして、仲が拗れるという事がよくあると思いますが、僕達は言いたいことを言い合って、間違っていればそれを素直に受け入れる事ができる性格の人間が集まっているので、そこが強みだと思っているし、その分成長の速度も早いのかもしれません」(二葉)。

菊池修司
菊池修司

「ギブアップダンス!!!」は、番ボとしては初めて客演を迎えずに取り組んだ。それも山田氏の彼らへの期待の大きさからだった。「クオリティの担保を誰かに委ねない、それが彼らの成長に繋がるのかなという思いはありました」。毎回違う脚本・演出家を迎え、新しい舞台を作り続けている番ボだが、山田氏との出会いは、自分達の成長を確かめる絶好のタイミングだったと振り返る。「色々な方に徹底的に教えてもらった後に、山田さんが作られる自由度の高い舞台に出会えて、それまで積み上げてきたものが果たして身になっているのか、自分達の生き様をどれだけ出せるのか、チャレンジできました」(菊池)。「僕が山田さんに言われて印象的だったのは、“芝居の距離感”という事でした。山田さんは“スケール”と言うのですが、「芝居のスケールを、劇場の大きさに合わせろ」と言われました。シブゲキだったらシブゲキのサイズと、自分の中でまだ掴みきれていないのですが、それが肌で感じられるようになった時、役者としてまた一つ上のステージにいけると思っています」(安井)。

「僕らにしか作れない舞台版『クローズZERO』を表現したい」

そんな成長著しい番町ボーイズ☆と、山田氏が再びタッグを組むのが、第10回本公演として上演される『クローズZERO』だ。実写映画は2007年に全国公開され、小栗旬、山田孝之など人気俳優が出演。観客動員190万人、興行収入25億円という大ヒットになっているビッグタイトルの初舞台化という、大きなチャンスが回ってきた。つっぱった男達の意地のぶつかり合い、友情を描いたこの人気作品を、自分達の本公演で上演するという事で、メンバーは緊張と気合と共に稽古に励んでいる。

松本大志
松本大志

主役の滝谷源治を演じる松本は「強烈なキャラクターで、立っているだけで存在感を感じさせなければいけないのでそこが難しいです。自分とは正反対のタイプの人間をどう演じ、内面からどうやってその雰囲気を出せるか、難しいですがやりがいがあります」。戸梶勇次を演じる二葉は、「高校生の喧嘩で、綺麗な殺陣だけではないので、その中で自分が戸梶勇次として生きてきた上で、どんな殴り方をするのか、殴られ方をするのか、殴られた後にどういう表情をするのか、かっこよく泥臭く作れるのか、今格闘しています」とキャラクターと向き合い、難しいアクションシーンと対峙している。「どうしても映画のイメージが強いので、映画のキャストの感じに引っ張られてしまうのですが、山田さんから「そこにこだわらず、映画を観るのではなく、コミカライズされているものを読め」と言われました。確かにそこから気づくことがたくさんあり、映画と同じものを作るのではなく、僕らにしか作れない舞台版『クローズZERO』を表現したいと思っています。」(松本)。

堂本翔平
堂本翔平

芹沢多摩雄役の堂本は「芹沢はケンカが強いのはもちろんですが、人間力の強さがすごくて、そこに魅せられた人が集まってできたのが芹沢軍団です。こいつにならついていける、ついていきたいと思わせる事ができるような役作りをしていきたい」と、松本しかり、まるで劇団内のリアルなストーリーとリンクしているような感覚になる。筒本将治役の菊池は「筒本は柔道の日本選手権に出場した事があるという設定なのですが、僕は体育の授業でやっただけというレベルなので、どこまで動きの精度を上げられるかがポイントです。誰が観ても柔道をやっているやつ、やっていたやつという動きと佇まいを手に入れるために、猛特訓しています」。

安井一真
安井一真

三上学役の千綿は、三上豪を演じる安井と共に双子役にチャレンジしている。「映画版で三上豪を演じていた伊崎(央登)さんが、今回出てくださるのですが、伊崎さんは右典さんという本当の双子で三上兄弟を演じられていたので、本人の前で双子役をやるというのがプレッシャーで…。でも伊崎さんは「好きなようにやってくれ」と言ってくださって、なるべく(安井)一真と一緒にいる時間を多くして、息を合わせるようにして二人で頑張りたい」、「本物の双子にある空気感を出せと言われても難しいと思うので、本物の双子にはない良さというか、それ以外で双子に見える何かを探して、追求していきたい」(安井)と、役作りの難しさに直面しているが、突破口を見つけようと努力している。

「映画と違う強みは”生”であるという事。それは全てを飛び越えるもの」(脚本/演出:山田能龍)

山田能龍氏
山田能龍氏

一方、脚本・演出を手がける山田氏は、この作品、番ボとどう向き合っているのだろうか。「確かにビッグタイトルではありますが、気にしすぎてもいけない。今回は『クローズZERO』という箱があって、そこは僕のフィルターを通したものでしか埋められない、だからベストを尽くすのみ、後の批判は知りませんという気持ちで臨んでいます(笑)。この物語は、男たちが戦って番長の座を獲りにいく話、親に認められたくて番長になりたいやつの話なんです。でも僕は、それはそんなにドラマティックな箱だとは思っていなくて。その男たちが想いをリレーしていって、最後に芹沢と滝沢の肩に、どれだけのものが乗っかって、そんな二人がどうぶつかるかまでを描く物語だと思っています。観に来てくれた人達が、映画と比べてなんか……と思っても、「でも最後は泣いたでしょ?」という状況を作りたい」と、決してタイトルに負ける事なく、“生”というシチュエーションを最大限に利用して、登場人物の心の中に深く迫り、あぶり出し、人間の感情に訴えかけるドラマを作りあげていく。「何も装飾せずに言うと、我々が持っている一番の強みは生であるという事。それはいかなることも飛び越えるもので、目の前で迫力のある殺陣が繰り広げられたら、明らかに映像から受ける感覚とは違うと思います。そういう有利さでひとつずつ映画のイメージをひっくり返していって、気づいた時には、お客さんが映画の舞台版であるという事を忘れているというものを作らなければいけない」(山田氏)。

ちなみに山田氏は、自身の創作脳へのエネルギー補給、インプットの方法は「音楽を聴いて、泣く事」だという。「これはドーピングだと思っているのですが、すごく泣ける音楽をヘッドフォンで大音量で聴いて、とにかく泣くんです。ドーピングで感情を溜めるというか、溜まってくるようなものを強引に作って、そうすると何かが出てくるという、ある種の違法行為ですよね(笑)」。この舞台も殺陣と共に、“涙”がキーワードになっているのかもしれない。

「色々な経験、過酷な事へのチャレンジ、それが財産になり、全員の雑草魂がひとつになる瞬間を観て欲しい」

劇団番町ボーイズ☆を紹介する時に、「顔面偏差値80超え」「イケメン個性派集団」等のキャッチコピーが使われる事が多いが、その舞台の面白さがジワジワ広がってきている事、そして番組でのコントの面白さも話題になり、最近は男性ファンも増えてきているという。「今回の『クローズZERO』という作品が、内容もそうですが、僕達がこれまで培ってきた力を観てもらえると、男性ファンの方にも面白いと思っていただけると思います。それは、僕達は雑草魂が強いと思っていて、番組でも過酷な事にもチャレンジしてきて、今回はその魂がひとつになれば、数あるグループの中から、突き抜けるチャンスだと思っています。その熱さを男性ファンにも是非感じて欲しいです」(二葉)。「山田さんには「舞台の上ではカッコイイんだけど、イケメンでいて欲しくない、役者として育ってほしい」という事を言われ、嬉しかったです」(菊池)。

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豊潤な環境を与えられ、全ての経験を血と肉にして、期待に応えて成長を続ける劇団番町ボーイズ☆。メンバー同士も切磋琢磨し合い、手応えを感じながら迎えた記念すべき第10回本公演が『クローズZERO』というビッグタイトルだ。登場人物全員が濃いキャラで、観ている側は、必ずその中の誰かに感情移入ができて、感情が揺れ、感動に繋がっていく。演じるメンバーも個性派揃いで、それぞれが役者としても人間としても大きくなっている今、ピッタリの題材だ。それを、今最も注目を集めている脚本/演出家の一人、山田能龍氏と共に作り上げていくという、ここでも豊潤な環境を与えてもらっている。チケットは即完、早くも追加公演も決定し、さらに飛躍する大きなチャンスだ。『クローズZERO』はもちろんだが、その次、第11回目の本公演が観たくなる、楽しみになるように、渋谷の真ん中(CBGKシブゲキ!!)で、暴れ回って欲しい。

劇団番町ボーイズ オフィシャルサイト

舞台『クローズZERO』特設サイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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