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さまぁ~ずのネット番組が9周年「TVはルールの中で最大限面白く、ネットはどこまでできるか面白がる」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト

さまぁ~ずというと、テレビのレギュラー番組をいくつも抱える、知らない人はいない超人気お笑いコンビだが、ネット上でも今年9年目に突入した長寿レギュラーバラエティ番組を持っている。それが映像配信サービス・dTVで配信されている『トゥルルさまぁ~ず』(略称トゥルさま)だ。さまぁ~ずとあびる優の二組が、視聴者から寄せられた「気持ちいい事」を検証するという内容で、“真剣にバカバカしさを追求する”バラエティ。現在までに525エピソードが配信されていて(7月3日現在)、9年間も続いているその人気の秘密を、本人達はどう分析しているのか、同番組の収録直後の2組に聞いてみた。3人の緩いトークが、「トゥルさま」の魅力だという事が伝わってくる。

”ユーチューバー”の先駆け!?

大竹 謎ですよね。最初はこのちっちゃいの(ガラケー)で何をやるんだと思って。

あびる 今みたいにここまでスマートフォンが普及していたわけじゃないから。

三村 ガラケーだったよね。ガラケーで観る。

大竹 そう。このちっちゃいので何を伝えられるんだ、みたいな。dTV開局と同時に始まったんですけど、同時にスタートした番組は、今これしか残ってないんですよね。だから俺はこの間三村さんの話を聞いて、長く続いてる原因を考えてみて。今は子供がみんなYouTubeを

観ていると。ユーチューバーが人気があるのと同じじゃないかと。

――ユーチュバーは今、小学生がなりたい職業のひとつですよね。

大竹 新しいラーメン買ってきて、ただ食うみたいな、そういう色々な実験みたいなのがあるじゃないですか。それを最初にやった番組がこの『トゥルさま』なんですよ、おそらく。段ボールでこんなことやったらどうなんだろうとか。スマホでYouTubeを観るようになったのって

最近でしょ?その前からこの番組は始まってたので。

あびる しかもこの3人が今でこそスマートフォンを持っていますけど、一般の方々よりもそういう機械類に関しては疎いので、私は最初マネージャーさんからこの番組の趣旨を聞かされた時に、ドッキリなんじゃないかと思って(笑)。でも、本当にどこで流れているのかわからないのに、会う人会う人に「あの番組面白いね、観てるよ」って言われて。その後に地方のテレビで放送され始めて、地方に行けば行くほど「あれ観てるよ」って言われるようになりました。

――最初の頃は、自分達が全然ピンときてなかったんですね。

大竹 そうですね。三村さんなんかこの番組、スマホで一回も観たことないですもんね。

三村 なかなか番組と出会わないんですよねー(笑)。

あびる 今はパソコンやタブレットで観る方もいると思いますが、最初の頃は、最寄りのレンタルショップに『トゥルさま』のDVDが並んでいて、いつもレンタルされていて。それが嬉しかったですね。甥っ子がこの番組の大ファンで、「あのネタどうだったの?」って聞かれても、こっちにしてみたらもう何百本も撮ってるから、どれのことだろう?ってなることもあります。

「9年やっていても全然飽きない。知らない事が山ほどあって、新鮮な気持ちでできている」(三村)

足かけ9年で、通算522エピソード(6月17日現在)と、凄まじい数の“実証”を重ねているが、本人たちが飽きた事はないのだろうか?

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三村 不思議なんですけど、こんなにやっていても飽きてないんですよね。自分に変に知識がないからなのかもしれないんですけど、やってもやっても知らない事が山ほどあって。新鮮な気持ちでやれるというか。

大竹 それは本当そうだね。それが長続きの秘訣かもしれない。

あびる ちなみに今日の収録は「煎餅を綺麗に割れるか」というお題で、それを大人3人でマジでやるっていう(笑)。

三村 「どっかで見たことあるなあ」とかも正直に言っちゃいますし。

大竹 ダメなテーマもいっぱいあって、それに対しての文句は全部本気で言ってます。でもそれが、結果DVDになって観た時に、すごく面白くて。まさかの自画自賛(笑)。テレビでいくつか番組をやらせてもらっていて、その中でもこの『トゥルさま』は一番気を抜いてる(笑)。

あびる 特に大竹さんはそうだと思う。罰ゲームも大竹さんが本気で拒否してるのに、なんで大竹さんばかりが当たるんだろうっていうシーンとか(笑)。

三村 罰ゲームが大っ嫌いだから。

大竹 罰ゲームの意味がわからない。

――でも大竹さんの罰ゲームも視聴者は楽しみにしています。

大竹 これ悪循環というか、罰ゲームをやらせようとする意図がわかるじゃないですか。でも本当にやりたくない。だからゲームは真剣にやるんですよ。

三村 今日なんかめちゃくちゃ強かった(笑)。全然負けなかったですね。

大竹 わざと負けるとか、盛り上げるとか、そういうボケ一切なくなっちゃうから。

三村 俺もこの罰ゲーム大竹にやらせたら面白いなって思って、逆に俺がプレッシャーになって(笑)。やべえ、俺負けちゃうって気持ちにはなります。

大竹 だからガチでやってますから。やらせとか全くナシです。

あびる でも私たちのリアクションとか感想で、くだらない事も、ここまで深く掘り下げると、本当に楽しかったんだなというのも、多分視聴者にも伝わるし、スタッフさんにも伝わっていると思います。

試行錯誤を繰り返した9年間

さまぁ~ずが出演している番組は、二人が持ってる自由な空気というか、その絶妙なやり取りが魅力で、『トゥルさま』ではさらに自由度が増し、ほとんど“素”になって、“開放された二人”というイメージだ。この番組の収録は大体3か月に一度行われるが、3人は当日まで何をやるのか一切知らされない。無防備な状態でスタジオに入り、用意されたテーマに“立ち向かう”。そんな予定調和が一切ないところで起こる反応、ハプニングの面白さは、視聴者にとっては格別だ。しかし9年間の中で内容に関しては当然試行錯誤もあり、3人とスタッフも含め、悩んでいた時期もあったという。

三村 一番緩めというか、何も考えない状態で収録してますからね。何の気合も入ってない(笑)。

大竹 これも長続きしてる理由のひとつじゃないかな。でも最初の頃、番組の内容の探り合いの時に、ちょっとどうするかみたいな相談をしたような気がするんですよ。谷の時代とかもあったはずで。

あびる あったよね。

大竹 限界か、みたいな。こねくり回しすぎて。で、また元に戻ったりとか、新しいパターンになったりとか。

あびる フリップがはまってる時期もあれば、はまらなくなった時期もあるし。

大竹 ここ数年はさらに良くなったというか。ただ収録が長い!(笑)。何本も撮らないといけないから。あとこの番組が、色々な番組中でも一番怪我したり、体張ってるんですよ。

「リハーサルもなくて、何を使って何をやるのか当日までわからない。だから面白いのだと思う」(三村)

「私だけの気持ちいい」「私だけの楽しい」といった視聴者から寄せられたテーマの真偽を確かめるべく、3人がまさに体を張って、予測不能の中でチャレンジしている。

大竹 もちろんスタッフは事前チェックをやっているみたいなんですけど、みんな俺らより若いやつばかりですから。そりゃやれるだろって。俺、お前くらいの時もっとできたっていう(笑)、そこなんですよね。逆もあると思うんですね。スタッフはできなかったけど、俺らができちゃったというパターンも。

あびる リハサールがないから。

三村 だから面白いんじゃないですかね。だってこんなに色々なモノを使うのに、それを全部布で隠してるので。次何が出てくるのか俺らにも見せないようにみんな努力してて。あれが面白さの秘訣かな。始まって何回目かにスタッフに、「ネタバレしてるよ。次やるの見えちゃっ

てるけど」って言ったら、次の収録から全部改善されてました(笑)。

大竹 モノが見えて怒られるって、ワケがわからないというね。やり始めた頃は、俺らも若さと激しさもあったので「今日パンツになる?それだけ教えて」って聞いたりしました(笑)。替えを持っていくからとか。濡れちゃったら嫌だからとか。

あびる 初めの頃は被り物が多かったから、私は髪型を作る時に「今日被り物があるかだけ聞いておいてください」ってマネージャーさんに事前に確認していました。何も聞かずに髪型作ったら、本番でヘルメットとかしまいにはオムツを被らされたりして(笑)

「フリップやカンペを読むときは、安藤優子さんになった気持ちでやっています」(あびる)

――あびるさんはこの収録があるときは戦々恐々としてる感じですか?それとも楽しみにしていますか?

あびる 楽しみです。収録後はお食事に連れていってもらったりして、お仕事でもあり、息抜きって言ったら失礼なんですけど(笑)

三村 イベント。

大竹 イベントに行って、そのあと飯食うみたいな。あびるは今特に子供がいて大変だろうから。

三村 息抜きなのかな。

あびる リフレッシュして楽しんで家に帰る、みたいな。

――今はこの番組がライフワークのひとつになっている感じですね。

あびる そうですね。『トゥルさま』がなくなった時の事を考えたら、ちょっと寂しいな。

大竹 だってこの番組ではあびるが一番変化してるもんね。独身だったのが結婚して、子供産んでとか。太ったり、痩せたり色々なことになってるから。

三村 9年間の事を混ぜたら意味わかんない。

あびる 本当にそう。この9年で体重のアップダウンが十何キロあったので。

三村  何があったんだっていう。それが全部入ってる。

――この3人の中だと、あびるさんの立場としては局アナみたいな感じですか?

あびる 私はいつも気持ちは安藤優子さんです(笑)。

大竹 もっとも遠いところ。

三村 もっともゲームを理解しない。これどういうこと?みたいな。

あびる カンペやフリップを読む時は、気持ちはいつも安藤優子さんでというのは、スタートからずっと変わってないですね。

「TVは、昔は大丈夫だった事がどんどんできなくなってきている感じがする」(大竹)

「TVではルールがある中で最大限面白いものをやる。ネットはここまでできるんだ、という事を面白がっている」(三村)

さまぁ~ずは長い間テレビを主戦場にしていて、それは今も変わらないが、しかし動画配信サービス創成期からネットシーンにも打って出て、両方のメディアの楽しさを経験している。規制の問題等はあるものの、テレビとネットの違いはどれくらい意識して番組を作っているのだろうか?

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大竹 意識して全くやってない、僕はね。でも多分冷静に考えると、今の時代、地上波では例えばマシュマロ銃の銃口を、相手の顔に向けちゃいけない。昔は全然平気だったことが、どんどんやれなくなっていて。それをわざとこっちでやっているという意識はないですけど、こんなことすらテレビじゃできないんだなっていう感覚は多少あります。

三村 テレビだと、そのルールの中で求められてることを最大限面白くやりますけど、こっちはこっちで、ここまでできるんだっていうのを面白がってますよね。 

――縛りがある中で、どれだけ面白くするかという面白さもあると。

三村 俺昔っからそれなんですよ。なんでもいいよって言われると一番困る。

大竹 ルールがないとね。だめよって言われると、その中で面白いことをやりたくなっちゃう。

――あびるさんはどうですか?テレビでもわりと奔放なイメージがありますが。

あびる そうですね。強いとか怖いとか、キツいってイメージがあった私の印象を、さまぁ~ずさんが、『トゥルさま』が変えてくれました。この番組での私が本来の私なんです。私の素を引き出してくれて、だからここは私にとってはホームだし、カメラの前に立つことってこんなに楽しいんだという事を教えてくれたのが、この番組です。

大竹 この番組を観ればあびるの全てがわかる。あびるの良さというか、一番いいあびるがここには入っている。

三村 身内も全員出てるしね(笑)。

あびる そうなんです。私から巻き込んだわけではないんですけど、スタッフさんたちが私の身内と繋がるルートを持っているらしくて(笑)

3人の絶妙な空気感、距離感もこの番組のひとつの“武器”になっている。時々あびるの身内をも巻き込んで、まさに何でもありという感じだが、3人とスタッフとの強い信頼関係が存在するからこそ、観ている側はそこに“心地良さ”を感じる。

――あびるさんはこの番組では安藤優子さん的存在とご自分でおっしゃっていましたが、さまぁ~ずさんから見たあびるさんというのは、どういう存在ですか?

あびる それはカンペ読む時だけですから(笑)。ゲームに取り組んでいる時は、ちょっと安藤さんに申し訳ない感じになっています。

大竹 全く違うからね。

三村 トンチンカン子なんだよね。苗字がトンチンでよろしいですか?(笑)

あびる ダメです。トンチン、ダメです(笑)

三村 あびるは迷いがないので。じゃあこれやってって言って、パッと書く能力とか、そこに天然が加わるので、「やべえ、あびるより面白くできないかも」って思う時もありますよ(笑)

あびる 直感型なのかな。

大竹 そうだね。把握してないことも多いですよね、ゲームも何も。すごいと思いますね(笑)

――視聴者数も多くて、再生回数とかは出ますが、それが視聴率みたいに全ての判断基準になるというのとも違いますよね、ネット番組って。

三村 そうですね。それに左右されてない。

大竹 数字に左右されないのに、続くものと終わるものがあるわけですからね、不思議と。

――この番組はDVD化され、それも好調で、超優良コンテンツになっています。お二人の口から「全く飽きない」という言葉出ている限り、番組もまだまだ続いていきそうですね。

大竹 そうですね。適度にDVDの特典映像を撮りに海外にも連れていってくれますし。

あびる モチベーションが高く保てるというか。

大竹 スタッフも行きたいという。いつも弾丸ツアーで、でもそれでもいいんですよ。

「この番組が終わる時は、気が付いたら終わっていた、というのが理想」(三村)

――来年はいよいよ節目の10年ですが、やっている本人達はあまりそこは気にしていないというか、通過点という感じですか?

あびる 通過点だったらいいですよね。通過点になるということは、10年を超えるということだから。

三村 終わる時はこれで終わりですって言わないで、そっと終わって欲しい。マネージャーに「あれ?しばらく収録ないけど」って聞いたら、「あ、この間の回で終わりました」って感じで。ええーっみたいな(笑)。

大竹 俺らはたまたまないのかもしれないけど、準レギュラーとかゲストで行ってる番組だったら、「最近呼ばれないけどどうした?」って聞いたら、「終わってます」っ事が前にあったしね。

あびる うちの甥っ子が「優ちゃん、なんで『トゥルさま』はこんなに楽しいのに、テレビではやらないの?」って(笑)。「それはね、大人の事情がたくさんあるんだと思うよ」って言うと「僕は『トゥルさま』をテレビでやってたら毎週見るよ」って今日も言われました(笑)。

「これからも気負わないでやりたい、でも頑張りたくない(笑)」(大竹)

――いい話です。子供の正直な感想は大体において正しいですよね。出演者とスタッフが本当に心から楽しみながら番組を作っているというのが、子供にも伝わっているのだと思います。

大竹 そうですね、いい言い方で言うと気負いがないというか。

あびる 頑張りますって言葉が一番似合わない番組。

大竹 頑張りたくないって。やりたくねえよって、本番で言ってます。

『トゥルルさまぁ~ず』公式ページ

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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