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ライヴに命を懸けるストイックなアイドル・東京パフォーマンスドール 「私達に満足という言葉はいらない」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
1月14日TSUTAYA O-EAST
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東京パフォーマンスドール(TPD)といえば、1990年にデビューした、現在女優として活躍している篠原涼子もメンバーだった伝説のアイドルグループだが、2013年夏にデビューした“2代目”は、初代とは違うスタイルでこれまで多くのファンを獲得してきた。それは他のアイドルとは一線を画す、その圧倒的なパフォーマンス。東京・渋谷の劇場「CBGK」(シブゲキ!!)をホームグラウンドにし、オリジナルの演劇とライヴを組み合わせた“プレイライブ”は、そのクオリティの高さにアイドル界に衝撃が走った。以降もMCを挟まずに繰り広げる歌とダンスのノンストップパフォーマンス“ダンスサミット”公演を精力的に展開するなど、進化を続けるライヴパフォーマンス力は他の追随を許さない。日本武道館や横浜アリーナを満杯にした初代へのリスペクトを忘れずに、まさに日々精進している9人。そんなTPDの1stフルアルバム『WE ARE TPD』がメジャーデビュー2年半を経て、1月18日に満を持して発売され、好調だ。収録曲はなんと50曲。これは彼女達のライヴの歴史でもある。集大成的なアルバムを発売したこのタイミングで、TPDというグループの事、アルバムについて、何が自分達の心の支えになっているのかなどを、リーダーの高嶋菜七と、彼女を支える浜崎香帆に聞いた。

「他のアイドルグループさんに”近寄りがたいオーラが出ている”と言われてしまいます(笑)」(高嶋)

――TPDはデビューして以来、その圧倒的なライヴパフォーマンスの素晴らしさで、他のアイドルとは一線を画していると感じていますが、例えばアイドルイベントなどに出演した時、それはぶっちゃけ自分達でも感じていませんか?

高嶋菜七
高嶋菜七

高嶋 他のグループと違う事を追及していると信じてやっています(笑)。自分達のスタイルは、コールアンドレスポンスで盛り上がるというよりも、どちらかというと徹底的に見せる曲が多いです。他のグループさんのライヴを観ていたら、ファンの皆さんとのコミュニケーションがすごく上手で、そこは私達にはないものなので、すごいなと思います。

――MCを挟まず歌とダンスをノンストップで展開する「ダンスサミット」というコンセプトが独特ですよね。

高嶋 私達の武器です。ノンストップのライヴをするグループさんは増えているようですが、私達は“ダンスサミット”なんです。

浜崎 ノンストップという事だけではなく、それプラス、エンタテイメントの要素がたくさん入っています。

――なんというか、媚を売っていないというか、とにかくパフォーマンスを見て!という、そういう潔さがいいと思います。

高嶋 だからよく近づきがたいって言われるんですね(笑)。他のアイドルさんにも「近づきがたいオーラが出てる」と言われて(笑)。

浜崎 全然そんなことないんですけどね(笑)。

――高嶋さんと浜崎さんのグループの中での役割を教えていただけますか?

高嶋 私はリーダーですが、最初から母性が強いとよく言われていました。最近は逆に若くなったと言われます。浜崎は、副リーダーという明確な名称はないのですが、そういう位置にいてくれています。副キャプテンとか、サブリーダー的という感じで、私をすごくアシストしてくれます。

――浜崎さんはそれは自覚を持ってやっているんですよね?

浜崎香帆
浜崎香帆

浜崎 そうですね。そういう自覚はあります。

高嶋 ピッチャーとキャッチャー、バッテリーという感じです。プラベートでも遊んだりご飯を食べに行く仲です。

――他のメンバーもみなさんプライベートでも仲がいいんですか?

浜崎 みんな本当に仲がいいです。

「メンバーの仲が良すぎて、ライバル同士、関係という意識が希薄になっているかもしれない」(高嶋)

――普段からのそういう関係が、パフォーマンスの中での寸分狂わない演出には必要なのかもしれませんね。

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浜崎 本当にそう思います。

高嶋 他のグループさんの仲の良さはあまりわかりませんが、アイドルグループの中で「本当に仲の良いグループ」の上位に入る自信があります(笑)。でもその分、ライバル関係という部分では少し緩くなってしまっている部分があって、そこはもっと必要だと感じています。

――仲の良さがいい部分でもあり、でもお互いが切磋琢磨するという部分では、どこか甘えが出てきているかもしれないと。

高嶋 先代のTPDは、篠原涼子さんや木原さとみさんもおっしゃっていましたが、メンバー同士のライバル関係、意識がすごかったそうです。先代にあったものが、私達にもあればもっと強くなれると思います。

――でもそれぞれのメンバーが他のコには負けられない、自分が光る事でグループが輝く事につながると思って、活動しているのではないでしょうか。

高嶋 心の中ではみんな思っていると思います。でもそれを表に出さないんです。

――2人が色々ダメ出しをしたり、気持ちを鼓舞させる役割を担っている。

高嶋 みんなにもっとこうしよう、ああしようとか言うのは私ですが、例えばダンスに関してはダンスリーダーの脇あかりがまとめてくれたり、それぞれが自覚を持って動いてくれています。

「アルバムでは、ライヴの世界だけの私達ではなく、歌詞の世界にも入り込んで、私達の歌を堪能して欲しい」(浜崎)

――あれだけのパフォーマンスをやっていると、メンバー全員の助け合いというか意思の疎通が本当に重要になると思います。結成から3年半経って、成長したなと実感するところを教えて下さい。

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高嶋 臨機応変に対応できるようになって、例えば誰かがライヴ当日に病気でダウンしても、すぐにフォーメーションの変更をみんなで話し合って、助け合いができるようになりました。

浜崎 最近はセットリストも自分達で決めるようになって、今まではスタッフさんのアイディアを、自分達なりに工夫して、個性を出しつつ作りあげる感じでしたが、最近はリリースイベントもワンマンライヴでも、提案して頂いたセットリストからさらにこうしたいですという意見を、自分達から言えるようになりました。そういう部分では3年間の積み重ねが成長につながっていると思います。

――今までガムシャラに突っ走ってきて、3年半経った今、少しはこれまでを振り返る余裕ができましたか?

高嶋 大きな節目ではあると思います。色々考えることも増えましたし、ただ突っ走っているだけではだめだなという事も3年経って思うようになりました。メンバーともスタッフさんとも、とにかく話合って決めるという事を、3年目にしてできるようになってきました。

――メジャーデビューから2年半でようやくといっていいのか、ファーストフルアルバムをリリースしました。もうちょっと早く出したかったとか、逆に今このタイミングで良かったとか、どういう想いでこのファーストフルアルバムの発売を迎えましたか?

『WE ARE TPD』(1月18日発売/通常盤)
『WE ARE TPD』(1月18日発売/通常盤)

浜崎 ぶっちゃけ、早く出したかったという想いもありますが、でも今で良かったとも思います。ライヴをたくさんやってきて、曲がどんどん増えて、ファンのみなさんにも私達の曲をたくさん知っていただけた中でフルアルバムを出せるという事は、喜んでいただけるのではと思っています。ライヴの世界だけではなく、歌詞の世界に入り込んで、歌詞と一緒にきちんと私達のものにできた歌を聴いてもらえると思います。だからこのタイミングで良かったと思っています。

高嶋 私はやっと、という感じです。実物を手にして、改めて「欲しい、聴きたい!」と自分で思いました。当たり前かもしれませんが、自分達の作品を自分で欲しいって思える事って、幸せだなと思いました。

――ライヴありきで曲がどんどん増えていって、1stアルバムでなんと50曲。

高嶋 20周年を迎えたアーティストさんのベスト盤のようなボリュームです(笑)

――前代未聞です。

浜崎 またそれもTPDらしくていいと思います(笑)。

高嶋 私、前代未聞って言葉好きなんですよ。過去にないという事なので(笑)。

――史上初、唯一無二、とかね。

浜崎 大好きです。

高嶋 最速とか、そういうの大好きなんです。

――ファンはもちろんですが、イベントに出て、そこでTPDの事が気になった人にも、アルバムでまとめて聴く事ができるので喜んでもらえると思います。

浜崎 これで対バンイベントとかに出て、TPDって何?って言われ時にこのCDを聴いて頂けたら、大体の事がわかってもらえると思います。

――曲のタイトルを見たり、聴く度にライヴの事が蘇ってくる感じですか?

高嶋 そうですね。Disc1はライヴのセットリストに沿ったような曲順になっていて、これを聴いた方はライヴに来たくなるような作りになっています。とにかくライヴを観て欲しいという私たちの強い想いが詰まっています。

「先代のTPDは尊敬し、感謝しています。新しい事を開拓していく精神は見習いたいですし、先代の曲があるからこそライヴも成り立っています」(浜崎)

――先代TPDの楽曲もリアレンジして収録されていますが、先輩たちの事はいつも意識しているのでしょうか?

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高嶋 憧れていますし、尊敬しています。先代のTPDはテレビなどメディアでの露出はほとんど行わないで、ライヴハウス「原宿ルイード」でずっとライヴを続けていて、ライヴに特化するという当時としては珍しいスタイルで、それが口コミで広がっていって、日本武道館や横浜アリーナでライヴを成功させました。新しい事にチャレンジするのは大変だと思いますが、それを乗り越えて大きく花開いて、本当に尊敬しています。

――新しいことをやるというDNAは皆さんも受け継いでいます。大看板を背負うプレッシャーを感じる事は?

浜崎 その反対で、本当に感謝しています。私達のオリジナル曲も増えてきていますが、オリジナル曲だけでは50曲入りのアルバムも作れませんでした。先代のTPDの存在があったからこそ、私達の事を知ってくださったファンのみなさんもいらっしゃいますし、曲のレパートリーが多い事で、今のライヴも成り立っています。(高嶋)菜七ちゃんと同じで尊敬もしていますし、感謝の気持ちでいっぱいです。

――最初、90年代の曲を聴いてどう感じましたか?

浜崎 馴染みやすい、聴きやすい曲調だなと思いました。

高嶋 当時の最先端をいっていた曲達なので、今聴いても全然古くないんです。オリジナル曲も一から作りあげたものなので思い入れはありますが、先代の曲もやはり先代のオリジナル曲だったので、それぞれすごく思い入れがあります。欲張りになってしまいますが、全部ひっくるめてTPDです。

――集大成的な1stアルバムを出して、3月26日には中野サンプラザという大舞台が控えています。やはり今までの集大成的なライヴになりそうですか?

高嶋 中野サンプラザでしかできない、私達だけの唯一無二のライヴがしたいです

浜崎 演劇と映像、歌とダンスとが融合した「1×0」シリーズ、エモーショナルなパフォーマンスの「ネイキッド」シリーズ、それらの限界を突破するための「DREAM CRUSADERS」シリーズの、3つを合わせた最強のライヴにします。

――これまでのライヴのいいとこ取りのような感覚ですか。

高嶋 そうです。だからこそまだ私達のライヴを観た事がない人にも観に来て欲しいです。今まで3年半色々な事をやってがんばってきましたが、それは中野サンプラザでのライヴのためだった、と言われるようなものを作りあげたいです。今までは長編の予告編です。

――あの激しいパフォーマンスがミックスされるとなると、相当激しくて、ダイナミックでエネルギッシュなライヴになりそうですね。

浜崎 一種のスポーツです。

高嶋 私達アスリートです(笑)。注目して欲しいのは、私達常にヒールを履いて激しいダンスをしているところです。スニーカーではなく……自分達で言うのも変ですが、みなさんに気づいて欲しいです(笑)。

「”満足”という言葉は私達には必要ない。常にもっと上を目指しているから」(高嶋)

――TPDのライヴを観ていると、常に限界にチャレンジしている感じがします。

浜崎 でもその分達成感は大きいです。

高嶋 ライヴを重ねて行くたびに達成感プラス、もっとこうできたという改善点が一緒に浮かんできます。

――自分たちを追い込んでいくんですね。

高嶋 追い込みます。

浜崎 ライヴが終わった瞬間にダメ出しをし合います。本番中気づいたことを、忘れないうちに終演後すぐに言います。

高嶋 「満足」という言葉は、私達には必要ないと思っています。達成感には繋がるかもしれませんし、もちろん毎回100%力を出し切っていますが、100%完璧なものができたかというと、今までそんなにはないです。求めているものがもっと上なんです。

――自分達で自分達を追い込むというのもあるかもしれませんが、ファン、スタッフからも、もっともっとと、さらに上を目指して欲しいと望まれているようです。

高嶋 ハードルを超えていく感じです。

――ハードルを超える快感のようなものはありますか?

高嶋 あります!

浜崎 ありますね。どんどんハードルがやってきますから。

高嶋 たくさんの人にライヴを観て来て欲しいので、ハードルを超えていくという感覚です。もしそのハードルを超える事ができたら次がある、それを超えたらまた次という感じです。

「ライヴを観てくれた人の人生を変えるようなライヴを作り上げたい」(浜崎)

――大事な一年になると思いますが、これからTPDはどこに向かおうとしているのでしょうか?

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高嶋 1月18日にアルバムをリリースして、3月26日に中野サンプラザ公演があって、その間に東名阪ツアーもあります。大変な事は大変ですが、やる事、大きな目標がある方が何かを達成しようという充実感にも繋がると思います。そういう意味で、今年というよりこの3か月が私達にとって本当に大切な時間だと思います。今の時点で言える事は、この3か月間を全うするという事です。3か月頑張る事が3月26日に繋がると思っていて、中野サンプラザ公演を成功させる事が、次のステージに繋がっていると思いますので、本当に地道に努力するしかないです。2017年は日本全国のたくさんの人に私達の事をもっと知って欲しいですし、昔のTPDは知っているけど、私達の事を知らないという人も多いと思いますので、知名度を高めていきたいです。

浜崎 毎日色々なところで色々なライヴが行われていて、皆さん全力で取り組んでいると思いますが、私達も毎日毎日こつこつレッスンをして、ストイックな生活を送っていて、でもそのストイックな部分があるからこそ「ダンスサミット」のような激しいパフォーマンスができるのだと思います。でも、ただすごいと思われるだけではなく、観てくれた人の心を動かす様な、人生を変えてしまうような、TPDだけにしかできないライヴを今年は作り上げたいです。

――本当にストイックで、真面目です。

高嶋 だから近寄りがたいって言われるんです(笑)。

毎日コツコツと踊り続け、常にライヴで全力を出し切る。もちろん他のアイドルグループもそうだろう。でもTPDは「達成感はあるかもしれないが満足はしない」と、どこまでも高みを目指し、気を緩めずストイックに自分達を追い込んでいる。”想いの熱さ”が違う。衣装の早着替え、そして照明など、最新舞台装置と呼応した美しいフォーメーションダンスは寸分の狂いもなく、そのエモーショナルで激しいステージは、彼女達の日々の努力を感じずにはいられない。躍動する彼女達の後ろに、そのストーリー、ヒストリーが見え隠れし、感動が増幅する。「本当に地道に努力するしかない」と、愚直なまでにライヴのクオリティを追及し、進化を続けてきた9人の未来は明るい。

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<Profile>

篠原涼子、EAST END×YURIの市井由理、穴井夕子などを輩出した伝説のグループ・東京パフォーマンスドール(TPD)が、約17年の時を経て、2013年6月19日、8,800人の中から選ばれた新メンバーで復活!初代TPDのDNAを継承し、唯一無二のパフォーマンスグループを目指して、高嶋菜七、上西星来、櫻井紗季、浜崎香帆、脇あかり、飯田桜子、神宮沙紀、小林晏夕、橘二葉の9名で活動中。2016年5月には、NHK公式マスコットキャラクターのどーもくんとコラボレーションした新ユニット“東京パフォーマンスどーも(TPDomo)”を結成。2020年の東京オリンピックに向け、日本の多彩な魅力を世界に発信するプロジェクトが始動し、アメリカやアジアでの活動も始まった。

東京パフォーマンスドールオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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