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“懐かしくて、この夏、もっとも優しいフェス” で感じる、奄美の風

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
奄美大島(写真:アフロ)
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奄美大島の「シマ唄」の魅力

夏といえば、サザンオールスターズ、ジャック・ジョンソン、ハワイアン、レゲエ、ボサノバ……人によって自分だけの夏ソングがあると思うが、この時期になると聴きたくなるのが、三線の音に乗せ、涼しげなファルセットとともにどこか情熱的でせつなさも感じさせてくれる、奄美大島のシマ唄だ。奄美のシマ唄は「島唄」ではない。それぞれの集落=縄張り=シマの歌で、村の豊穣を願い神に捧げた歌を起源としているという。奄美独特のコブシとファルセットを多用する奄美民謡は、歌い手によってその味わいが違う。そんなシマ唄とポップスとを素晴らしい感性で融合させたのが元ちとせだ。彼女のデビュー曲「ワダツミの木」は、今まで感じたことがない肌触りの、新鮮なポップスだった。本来相容れないはずの二つの歌を、それぞれの特長、良さを生かして、ポップスとしては新しいスタイルのものに昇華させ、シマ唄という素晴らしい文化を多くの人に知ってもらうきっかけになった。そして元ちとせが切り拓いた道を歩もうとする一人の若者が現れた。中孝介だ。どこか郷愁漂うその歌声は、奄美大島に行ったことがない人でも、その風景を想像してしまう。

2002年の伝説のライヴから14年。島人の島人による島人のためのライヴは、奄美大島のことをより知ってもらうためのフェスになって帰ってきた

元ちとせ
元ちとせ

2002年1月、東京・渋谷クラブクアトロで『夜ネヤ島ンチュリスペクチュ』というイベントが行われた。“今宵は島人に敬意を!!”という意味のこのイベントは、島外で暮らす奄美大島の島人(しまんちゅ)のアイデンティティを、脈々と受け継がれている島人の熱いエネルギーを、再確認する場となり、奄美出身のミュージシャンが多数出演した。そこにはメジャーデビューを控えた元ちとせもそこにいた。「当時は奄美の人も、自分が奄美出身ということが言えなかったんです。ちょっと恥ずかしいという想いがあることと、「奄美ってどこ?」って言われて、説明するのが面倒くさかったそうです。でも私は全然そういうことを考えたことがなくて、デビューが決まって東京に出てきてから、奄美の人がそういう風に思っているということを知って、それで、島の人達が堂々と奄美大島出身だと言える土台を作ろうと開催したのが『夜ネヤ島ンチュリスペクチュ』でした」(元)。

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2016年、今度は奄美の素晴らしさもっと多くの人に知ってもらうために、再び奄美出身のアーティストが集結し『奄美音楽祭2016』が、8月20日(土)に東京・かつしかシンフォニーヒルズで開催される。元ちとせ、中孝介、カサリンチュ、そして奄美を愛してやまないヴァイオリニスト・NAOTOの4組が共演する。「あれから14年経って、今回はまだ奄美の事を知らない人達に、もっと奄美のことを知ってもらいたいという大きなコンセプトができたので、今までとは違う形で歌を届けたいです」(元)。

広大な奄美大島は当然だが北と南、中心部とでは文化も訛りも、そしてシマ唄も違う。奄美の北部、笠利という地区出身のカサンリンチュ、中心部・名瀬市出身の中孝介、南部・瀬戸内町出身の元ちとせ、そして奄美をこよなく愛するバイオリニストNAOTOが一堂に会し、ゆったりと流れる“島時間”の中で、それぞれの体の中に息づく“奄美の音楽”を聴かせてくれる。そんな“懐かしくて、この夏、もっとも優しいフェスティバル”で、奄美の風を感じたい。

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元ちとせ

奄美音楽祭。。。19歳で東京へ出てきて、ただ歌が歌える嬉しさに夢中で歩いてきた音楽の道。その中で故郷、出会う人、迎えてくれるそれぞれの場所の温かさを感じながら、いつの間にか誇れる仲間とこんなに素敵なイベントが開催される事になりました。生まれ育った場所そのままの風をどうぞ私たちから受け取って頂けたらと思います。夢を見つけさせ続けてくれるこの東京で第1回目となる奄美音楽祭に感謝の気持ちと、第2回目へとつながれる気合いを込めて会場でお待ちしております。

中 孝介

この度奄美音楽祭に出演させていただきます。かつしかシンフォニーヒルズモーツアルトホールはとても立派なクラシックホール。島の音楽がどんな風に響くのかとても楽しみです!!そして、今回は僕もツアーやプライベートでも大変お世話になっている、ヴァイオリニストのNAOTOさんも出演していただけるのもとても嬉しく思っています!当日は奄美大島の風を存分に届けたいと思います!

カサリンチュ・タツヒロ

奄美音楽祭に出演!とても嬉しいです~!奄美のミュージシャンが集まってのお祭り!?東京は、僕が奄美の高校卒業後、新聞配達しながら学生として夢を追いかけた場所、そして自分の「弱さ」を教えてくれた場所。奄美と東京、きっと違うとこがたくさんあるけど、だからこそ、僕を音楽へとつないでくれました。どっちも知ったから、生まれた音楽があるんです。大都会東京で、自然あふれる奄美音楽祭!!奄美の雰囲気も味わってもらいながら、楽しんでいただけるようなステージにしますよ~奄美の、人や風や海を、感じることができる時間がきっとそこに!お楽しみに~!!

カサリンチュ・コウスケ

カサリンチュとしてシマンチュとしてこんなスペシャルなイベントに参加できることを嬉しく思うとともに、大好きな先輩たちと精一杯パフォーマンスさせていただきます!東京が奄美になる!その日を一緒に目撃しましょう!

NAOTO

ご縁があって、奄美出身の皆さんと一緒に、素敵な音楽祭に参加できて、光栄に思います。楽器のような美しい歌声を持つ皆さんに、ヴァイオリンの旋律で心地よく寄り添い、クラシック楽器出身の僕が、奄美とクラシックホールを繋ぐ、良い架け橋になれればと思っています。では、奄美音楽祭楽しんでいきましょう!

『奄美音楽祭2016』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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