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音楽を通して社会貢献したい--デビュー13年目、平原綾香の想いが結実した<Jupiter基金>とは?

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
Kとデュエットする平原綾香(12月12日 東京国際フォーラムC)

平原綾香にとっての「Jupiter」とは?

「Jupiter」('03/12/17 MUCD-5046)
「Jupiter」('03/12/17 MUCD-5046)

平原綾香といえば「Jupiter」、「Jupiter」といえば平原綾香、そんな平原の代名詞にもなっているヒット曲は、これまで多くの人の心を癒し、勇気づけ、また平原自身もヒット以上に大きなものをこの曲からもらった。平原が「Jupiter」でデビューしたのは2003年12月。ホルストの組曲『惑星』の「木星」に日本語詞を乗せて歌うという斬新さ、その深遠な詞の内容、平原の声の素晴らしさと表現力とで瞬く間にヒット。平原は一躍時の人になった。

そして2004年10月23日、新潟中越地震。この時、被災者を勇気づけるために新潟県内のラジオ局に多くのリクエストが寄せられたのが「Jupiter」だった。平原はこの時の事を「私は何をしたら力になれるか分からなかった。その時に、「歌で何ができるか?」を教えてくれたのが震災で傷ついた方々でした。なのでいつも恩返ししたいという気持ちがあります」と語り、歌を歌うということがどういうことなのか、そんな歌い手としての根本を改めて考えさせられるほど大きな影響を受けた。そして、震災による被災者だけではなく、困難な現実に直面している人たちのために役に立ちたい、「何かできないか」という思いがずっと心の中にあったという。新潟中越地震直後の同年11月には、森山良子主催のチャリティコンサート「生きる2004~小児がんなど病気と闘う子供たち」にも出演している。

2011年3月11日に発生した東日本大震災後も、平原は復興支援のために積極的に動いた。またチャリティコンサートにも呼ばれる事も多く、新潟中越地震後から、復興の一助をと願う活動をしていくうちに、自分が主催する慈善活動をやりたいと想い続けてきた。そしてその想いがついに形になった。

<Jupiter基金>を設立する理由、目指すところ

<平原綾香 Jupiter基金>--平原が、音楽を通じて社会貢献、様々な支援していく基金を設立したことを、12月12日に発表した。震災の復興支援は引き続き積極的に行っていくのはもちろん、この基金はとにかく困っている人たち、応援を必要としている人たちの、ひと筋の光となるべく「ひとつの場所に決めて、寄付をさせていただくのではなく、困っている人がいたら、そこを助けに行くという思いがあります」と平原は静かに、そして力強く語っている。そして基金立ち上げ第一弾企画として早速行われたのが『My Best Friends Concert~顔晴れ(がんばれ) こどもたち~』(12月12日 東京国際フォーラム ホールC)だ。

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「Jupiter」ほか、親友でもあるKをゲストに迎えてのデュエットなど全19曲を披露し、集まった1500人を魅了した。「今回は、小児がんで苦しんでいる子供たちと親御さんを応援する<NPO 法人アジア・チャイルドケア・リーグ(ACCL)>に寄付させていただきます。ベトナムを始め、アジア各国の小児がんで苦しんでいる子供たちを支援する団体です。日本だと10人中8人が治る病気ですが、ベトナムなどでは10人中8人が亡くなってしまう状況にありました。2005年に設立され、今では10人中7人が助かるまでになりました。このACCLが 2011 年に主催したコンサートにゲスト出演する機会があり、そのご縁で今日に至っています」(平原)。 今回のコンサートの収益の一部と、集まった募金、チャリティグッズの制作費を除く収益が、ACCLの活動資金として寄付される。

今後は年に1回程度を目標に、同様のコンサートを開催し「次は、また違ったところで寄り添える場所を探しながら、少しでも力になれるよう進められればと考えています」(平原)と、その年ごとに寄付先を変更し、幅広く支援していく予定だ。

平原は同基金の今後の目標について「まだまだ、支援したい団体があって、滝川クリステルさんが<犬猫の殺処分ゼロ、放棄ゼロ、 虐待行為ゼロを目指すプロジェクト=Project Zero/一般財団法人クリステル・ヴィ・アン サンブル>を興されていて、東京オリンピックが行われる 2020 年までに<犬猫の殺処分 ゼロ、放棄ゼロ、虐待行為ゼロにする活動>は、私も応援しているので、次回はそこも支援できればと夢は広がります」と意欲的だ。

12月12日「Jupiter基金」設立発表会見での平原
12月12日「Jupiter基金」設立発表会見での平原

「世界中にいる、まだまだ応援を必要としている人々や動物たち。 同じこの地球に生まれて、みんなそれぞれの人生をひたむきに生きています。 何も出来なくても、まずは寄り添うこと、手を差し伸べることから始めること。それが私にとっては、大きな第一歩です。 そして、同じ思いをもつアーティストの方々と歌うことで、より大きな力を送ることが出来ると思っています。今後も、たくさんの方々とこの活動を続けていきたいです」--これまで震災の復興支援、チャリティ活動を積極的に行ってきた彼女の言葉だからこそ説得力がある。音楽を通して社会貢献していく、そんな平原の強い想いは、これまで同様の活動をしてきているアーティストを含めて、今後さらに様々なアーティストに影響を与え、広がっていきそうだ。

<Profile>

1984年5月9日、東京生まれ。2003年12月17日にホルストの組曲『惑星』の『木星』に日本語詞をつけた「Jupiter」でデビュー。2004年の「日本レコード大賞新人賞」や、2005年「日本ゴールドディスク大賞特別賞」をはじめ、様々な賞を獲得。 その後も、ドラマ『優しい時間』(フジテレビ系)主題歌「明日」、NHKトリノオリンピック放送テーマソング「誓い」、ドラマ『風のガーデン』(フジテレビ系)主題歌「ノクターン」を歌い、同ドラマにも出演した。 2009年にリリースした全曲クラシック曲のカバーアルバム「my Classics!」は同年の「日本レコード大賞優秀アルバム賞」を獲得。その活動が高く評価され、2010年「第1回岩谷時子賞」において奨励賞を受賞。2011年「平成22年度文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞(大衆芸能部門)」を受賞。また、NHK朝の連続テレビ小説『おひさま』主題歌「おひさま~大切なあなたへ」、2012年にはNHK総合テレビ『ダーウィンが来た!生きもの新伝説』のテーマ曲「スマイル スマイル」をリリース。2013年ユニバーサルミュージックに移籍し、デビュー10周年を迎えた。 2014年3月『オペラ座の怪人』の続編ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』でクリスティーヌ・ダーエを演じた。 また、「昭憲皇太后百年祭」を記念して、明治神宮境内本殿で開催された『昭憲皇太后基金チャリティ奉納演奏』で歌唱を行った。 2015年5月『サウンド・オブ・ミュージック製作50周年記念版』で、主人公マリア役の吹き替えを担当。

デビュー以来、シングル31枚、デュエットシングル1枚、カバーアルバム、ベスト盤を含む16枚のアルバムを発表。

父はサックス奏者の平原まこと、祖父はジャズトランペッターでホットペッパーズの平原勉。

平原綾香オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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