2020年の木材需給表が発表された。

 それによると、木材自給率は41.8%。前年比で4.0ポイントも上昇している。とうとう4割台に上がったのである。自給率が、10年連続上昇し続けた結果だ。

 木材自給率とは、国内の木材需要のうちの国内生産量の占める割合である。戦後は一貫して下がり続け、2002年には18.8%を記録した。さすがに2割を切るようではまずいと、政府は2020年に5割に上げるという目標に掲げたのだが、後に25年に変更した成り行きがある。それでも厳しいかと思われたのが、この10年は順調に上がり続けて、とうとう4割台。このところ爆上がりを続けているのだ。たかだか20年弱で自給率を2倍以上にしたと思えば、すごい成果だ。

林野庁公表。木材需要そのものが減少傾向にある。
林野庁公表。木材需要そのものが減少傾向にある。

 もっとも、さほど自慢できる状況ではない。

 2020年の木材の総需要量は7443万9000立方メートル、前年から746万6000立方メートル(9.1%)も減少しているのだ。とくに用材(建築・木工などの素材としての使い道)が、前年に比べて987万7000立方メートル(13.9%)減少、国内の用材生産量も182万5000立方メートル(7.7%)減少している。また木材輸出も減った(統計上は輸出する木材も国内消費扱いとする )。これはコロナ禍で輸出が滞ったからだろう。ようするに用材は生産も需要も減ったのだ。

 付け加えると、しいたけ原木も生産量と需要ともに9000立方メートル(3.6%)減少した。

増えた用途は燃やすことだけ

 では、なぜ木材自給率が爆上がりしたのか

 それは燃料材が増加したからだ。燃料材とは木炭や薪も含むが、大半はバイオマス発電の燃料と思ったらよい。具体的には需要が、241万9000立方メートル(23.3%)増えていた。それに合わせて国内の燃料材生産量も199万5000立方メートル(28.8%)増加した。結果的に国内の木材生産量全体も、3114万9000立方メートルと前年比16万1000立方メートル(0.5%)の増加となった。燃やすために伐る樹木が増えたということだ。つまり全体の消費は減ったのに、燃やすための木材生産が増えたから自給率も上がったように見える、というちょっと詐欺的(笑)な統計なのであった。

 ちなみに2020年の木材輸入量は、4329万立方メートル。前年と比較すると762万7000立方メートル(15.0%)減少した。そのうち用材の輸入量も805万2000方メートル(17.0%)減少しているが、これは建築用木材の価格が急騰したウッドショックがあったためだろう。ところが燃料材(木質ペレット、ヤシ殻など)の輸入は42万4000立方メートル(12.3%)増加しているのだ。

 ようするに、日本の木材需要も生産も、木を燃やすという用途に左右されているということだ。この様子は、木材を燃料とする前々世紀の社会にもどってしまったかのようだ。日本では江戸時代のエネルギー源のほとんどが木材(薪炭)だった。また20世紀になっても、発展途上国では木材の最大の用途は燃料であり、それは今でも続いている。

 つまり日本の木材用途は、近代化以前によく似た状態へともどりつつある。

森林破壊しつつ上げる木材自給率

 少々脱線すると、もともと木材自給率は用材自給率と木材全体の自給率に分かれていた。最低記録の18.8%も、しいたけ原木、薪炭材を含む自給率だ。この年の用材自給率は18.2%だった。

 ただ薪炭材の減少が著しいうえ、自給用や市場外流通が多く、正確な需給量の把握が困難なため、一時期需要量の数字から外していた。

 ところが21世紀に入ってバイオマス発電が広がり、とくに発電用燃料の価格を上乗せする再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)ができてからは膨大な量の燃料材需要が生じた。そこで改めて燃料材を木材自給率の計算に加えるようになった。結果として、自給率を大きく上げて見せることが可能になったのである。

 ちなみに用材の総需要を国内生産量で単純に割ると、35.8%。分母・分子ともに小さくなっているが、これが2020年の用材自給率だろう。

 いうまでもなく、バイオマス発電がこれほど広がったのは、気候変動を防ぐために大気中の二酸化炭素を減らすためである。いわゆるカーボンニュートラルの理論を取り入れ「木材は燃やしても二酸化炭素を排出しない(ことにする)」から、化石燃料に代えて木材を燃料にしたのだ。

 しかし、燃料材の調達のために森林を伐採したのでは(間伐ではなく、森の木を全部燃料にするような伐採が行われている)どう言い繕っても、二酸化炭素の吸収源を破壊し、排出を増やす。もちろん自然破壊であり、生物多様性を失い、防災機能も低下させる。

 果たして今の木材自給率の上昇を喜んでいいのだろうか。