森林環境税を巡る借入金1300億円が棒引きになる不思議

知られざる増税・森林環境税の先行配分額が消える予算案(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 2020年度つまり来年度の予算案・政策案などを眺めてみた。もちろん森林関連の部分である。さほど代わりばえはしないが、新たな項目や重点的な配分などに目を向ける。そして、気になるのが森林環境税関連。(これは総務省マターのようである。)

 森林環境税が設けられたことをご存じだろうか。このYahoo!ニュースでも随時記してきた(増税!森林環境税と森林バンクの怪しい内実)が、知らない人も多いようなので繰り返すと、2024年度から個人住民税に1000円上乗せする形で徴収し、約600億円を集める予定。それを主に全国の市町村(一部だけ都道府県)に分配する仕組みだ。そのための森林環境譲与税も設けられた。

 あきらかに増税なのに、誰も反対の声を上げず、そもそも知っている人も少ないのだから不思議である。

 さらに不思議なのは、24年度まで待っていられない! と実は19年度、つまり昨年からすでに譲与が始まっていること。総務省が借り入れて先行配分しているのだ。すでに9月に半期100億円分がばらまかれた。

準備金取り崩して増税分を先払い?

 借金までして先行配分するのか? と思うが、この借入分は、24年度からの徴収分から少しずつ返済する計画だ。だから徴収分が全額譲与されるのは、33年度からのはずだった。

 ところが、来年度の与党税制改正大綱に、森林環境譲与税の見直しが記載されている。いきなり24年度から全額配分することになっているのだ。20年度と21年度は今年度の倍額、400億円譲与し、22~23年度は500億円。24年度以降は全額の600億円だ。予定を9年も前倒しする。

 どうしたら、こんな大盤振る舞いができるのか。

 大綱には、譲与税の原資に「地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金を活用する」とある。

 地方公共団体金融機構とは何か。大雑把に言えば、郵便貯金を使った財政投融資と同じような役割のためつくられた組織で、予算案とは別に動く融資資金だ。一般担保付債券を発行(全額が地方債)し、貸付及び地方公共団体の資金調達支援、また公庫債権の管理を担う。リーマンショック時に地方救済などに動いた資金源だ。

 その準備金を森林環境譲与税に回すことにするというのである。19~24年度までの借入 をして行う先行配分の償還分に置き換えると最大で1300億円が充当される計算だという。なんとも大胆というか、いきなり(未来の)借金棒引き! 的な政策だろう。しかし準備金は債権であり、税金であることに変わりない。

 これがそのまま通れば(通るだろうけど)、金のバラマキが早まるわけだ。

森林のない大都市ほど多く分配

 なぜ、こんなに森林環境譲与税を優遇するのかと言えば、単純に地方に金をばらまきたいからだろう。名目は台風15号、19号などの災害が相次いだからというが、無理な言い訳だ。災害復興費と森林関連予算を無理やりつなげている。第一、台風が来る前から考えていたに違いない。

 国は、そして国民は、森林には優しい、いや甘い。まるで放蕩息子が抱えた借金を親が全部払ってやって、小遣いも増やしてあげるみたいな話だ。

 なお、森林環境譲与税の配分基準は、5割を私有人工林面積、3割を人口、2割を林業就業者数とするため、人口の多い都市部ほど額が多くなるという妙なことになっている。森林が多くても人口の少ない自治体は極めて低額だ。

 総務省が、昨年9月に各自治体に配分した森林環境譲与税の額を見ると、もっとも多いのは横浜市の7104万4000円、次いで浜松市の6067万1000円、 大阪市5480万3000円の順だった。一方で配分額が少なかったのは、沖縄県の渡名喜村(8000円)、北大東村(1万3000円)、粟国村(1万4000 円)など。

 これをざっと2倍にすると1年間の金額だが、来年度はさらに2倍になる。たとえば横浜市は、19年度が1億4000万円超だったのが、約2億990万円以上になる。そして24年度以降は毎年約4億7500万円譲与される計算だ。ちなみに渡嘉敷村は4万8000円程度か……。

 これでいいのか?