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地球上の森林は増えている!

田中淳夫森林ジャーナリスト
切り開いた熱帯雨林にも、植林すれば森林は増加?(写真:ロイター/アフロ)

 都市化の進行や農地の拡大、そして木材目当ての伐採……などにより、地球上の森林は減少の一途。このままでは地球から森林が消えてしまう……そんな思いを誰もが持っているのではなかろうか。日本では森林が増えているという知識を持つ人もいるかもしれないが、地球規模で考えれば、森林は減っているというのが常識だった。

 しかし今月のNature誌には、驚くべき論文が掲載されている。地球全体で、36年前と比べて森林が大幅に増えていたというのだ。

 アメリカ・メリーランド大学のシャオ・ペン・ソン(Xiao-Peng Song)博士たちは、衛星画像情報を利用して1982年から2016年までの地球の土地被覆の変化を裸地、低木植生被覆地、樹冠被覆地(高さ5メートル以上の植物)の3つに区分した。すると上記の期間中に樹冠被覆地、つまり森林が7%も増えていたという。面積にして224万平方キロメートルにも達する。日本の国土が約37万平方キロメートルであることと比べると、どれほど広いか想像できるだろう。

 しかしそんな大面積の森林は、どこに増えたのか。

 具体的には温帯や亜熱帯、亜寒帯……いわゆる中緯度で新たな森林が誕生しているという。また山岳地帯では緯度を問わず森林が増加し、また裸地もアジアを中心に約116万平方キロメートル減少したらしい。おそらく農地に開墾されたのだろう。

 森林の増えた理由は、まず植林が大規模に推進されたことだろう。すでに欧米や日本などの先進国では人工林の造成が進んで森林面積が増加していることが知られていたが、近年は中進国、発展途上国でも植林が行われている。とくに中国は、年間数百万ヘクタールも植林が行われている。さらにニュージーランドやチリなどでも大規模な植林地がつくられた。このような造成森林が急増したほか、人が手を入れなくなった土地(禁伐して保護されるようになったのか、あるいは耕作などを放棄したのかはともかく)に植物が育ち森林になったところもあるようだ。人が利用しにくい山間部に多いと思われる。

 ただし、熱帯地方では広範囲にわたって森林破壊が進んで面積も減少している。今回の論文ではないが、昨年1年間で失われた森林は約15万7800平方キロメートル。これはバングラデシュ一国とほぼ同じ面積だという(グローバル・フォレスト・ウォッチ報告書)。中南米やアフリカに目立ち、木材を収奪するためと森林を農地に転換するための伐採が進んだからだろう。またそうした開発に付随して森林火災が起きて焼失したケースも少なくない。

 また温暖化によって土地の乾燥を進めてしまうため、自然発火の森林火災が起きやすくなる。さらに乾燥が強まれば半砂漠地帯の植生も失われがちだ。本物の砂漠になってしまうのである。

 このように亜熱帯~亜寒帯までの中緯度地域と熱帯の低緯度地域は、大きく森林事情が違っている。しかし森林化した面積と森林減少した面積を差し引きすると、全体的には森林は増加していたというわけだ。

 ソン博士たちの研究では、土地の植生が変化した理由は、面積にして約60%は人間活動が直接的に関わっており、約40%が気候変動のような間接的な要因と見ている。やはり人間が森林の運命に大きく関わっていることに間違いはない。

 もっとも、森林が増えたと単純に喜べるわけではない。衛星データによる解析では、森林の質まではわからないからだ。

 そもそも植林した用地も、その前は森林だったケースが多い。荒れていた伐採跡地に植林して森林を取り戻したことを「森林が増えた」というのも考えてみれば妙だ。また原生林を切り開いてアブラヤシ農園やアカシア林に変えても、衛星からは樹高5メートル以上の森林に見えるだろう。

 人によって造成された森林は、樹種を1種もしくは数種に絞り込んで植林するのが普通だから、多様性の少ない森である可能性が多い。それに樹齢が同じ木々が一斉に並んだ状態になる。生物多様性は、元からあった森と比べてかなり低いはずだ。

 それに遠目には森林であっても、それが健全な森かどうかはわからない。樹種が土地に合わず貧弱な生育しかしていないかもしれないし、病害虫や獣害などで傷つき見すぼらしい森になっているかもしれない。増えたとされる日本の森を見ても、それは感じることだ。日本の森林面積の4割は人工林(スギ、ヒノキ、カラマツなどの単一樹種の森林)だが、そのうち健全に育っているとされるのは実は半分以下である。

 

 今後、森林は量だけでなく質を問われる時代になってきたのかもしれない。

森林ジャーナリスト

日本唯一にして日本一の森林ジャーナリスト。自然の象徴の「森林」から人間社会を眺めたら新たな視点を得られるのではないか、という思いで活動中。森林、林業、そして山村をメインフィールドにしつつ、農業・水産業など一次産業、自然科学(主に生物系)研究の現場を扱う。自然と人間の交わるところに真の社会が見えてくる。著書に『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)『絶望の林業』『虚構の森』(新泉社)『獣害列島』(イースト新書)など。Yahoo!ブックストアに『ゴルフ場に自然はあるか? つくられた「里山」の真実』。最新刊は明治の社会を揺り動かした林業界の巨人土倉庄三郎を描いた『山林王』(新泉社)。

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