真夏の夜の夢? 木造ビルを見て木化都市を思う

7階建ての木造ビルは、現時点では日本一。(筆者撮影)

 国分寺駅前で、日本最高の木造ビルを見てきた。国分寺フレーバーライフ社本社ビルである。この場合、最高というのは高さのことである。7階建ては現時点で日本ではもっとも高い木造ビルだからだ。

 と言っても、実は1~3階は鉄筋コンクリートで、4~7階が木造である。だから正確には、木質ハイブリッド造り。

 また木の柱・梁は木板を何層にも張り合わせた大規模集成材だが、中にH鋼を入れた「木質ハイブリッド集成材」である。これは耐火技術の一つだが、同時に鉄骨構造になるので確認申請に時間がかからないという利点もあるそうだ。

 面白いのは、コンクリート造りのはずの3階までには木質ルーバーが張られているので木造っぽく見えるのに対して、木造である4~7階はガラス壁が前面に出て木造らしくない。ただ遠目にはガラス窓を通して中に太い木の柱や梁が見えるのが、粋と言えば粋である。

1~3階は鉄筋コンクリートの木質ハイブリッド構造
1~3階は鉄筋コンクリートの木質ハイブリッド構造

 内部を見せていただくと、上部はオフィス。多摩産のスギによるフローリングになっており、デスクやイス、キャビネットなどもみんな木製。また斜めに入った筋交い的な集成材の柱を利用して棚をつくるなど、結構こだわりが見える。7階にはバルコニーもある。一方で壁は漆喰を塗っており、あまり木が目に入らない。なおアロマ商品を扱う会社のビルだけに、各所でほんのり香る匂いが心地よかった。

内部ではH鋼入りの集成材の柱と梁が見える。
内部ではH鋼入りの集成材の柱と梁が見える。

 個人的には、あまり木造を強調せずスマートな使い方をしている点が気に入った。ときおり木造ですよ、と床も壁も家具類も全部木製にして目に映る部分を木で強調した建築物に出会うが、正直好みではない。

 鉄筋コンクリートとのハイブリッドであることも悪くない。無理に全部の素材を木材にするのではなく、それぞれ素材の適した使い方をした方が現実的だ。外観に木材を使う……ルーバーを張るだけでも、ちょっと木造っぽくオシャレになる。

 このビルを施工したのは、住友林業。おりしも住林は今年2月に「高さ350メートル、70階建ての木造ビル」を2041年を目標に丸の内に建てる「W350計画」を発表している。今回の7階建て木造ビルは、その10分の1の雛型?と冗談で言われるとか。

 そうした建築は目標であり、構法などもこれから研究するらしいが、基本は木造ハイブリッド構造だという。

 より野心的な計画……というより構想には、ゼネコンの大林組が昨年に打ち出した「LOOP50」建築構想がある。

 これは周囲を森林に囲まれた中山間地にループ状の巨大木造建築物(直径650~800メートルの楕円、高さ80~120メートル)を建て、居住人口1万5000人(約5500世帯)の街をつくろうというものだ。ループ棟の中にすべての必要施設が含まれる。そして近隣には約2万8000ヘクタールの森林があるという設定だ。50年周期で街を一角ずつ建て替え、その木材を燃料としてエネルギーを賄うとともに50年で育つ森から木材を得る……これにより年間約1万2000トンの二酸化炭素を削減できる計算になるそうだ。

 もちろん、実現の見込みはない(笑)。ツッコミドコロもいっぱいある。でも、壮大な木造の都市を夢見るのもいいかもしれない。

 実は、このところ木造ビルや、あるいは外装・内装に木材をたっぷり使い見た目は木造っぽい建築物が次々と登場している。あるいは計画が発表されている。そして都市の「木化」が謳われている。その延長には、個々の建築物に留まらず、都市全体を木化していこうという発想があるのだ。

 すでに進んでいるところもある。たとえば東京の木材会館ビルや東京都港区のみなとパーク芝浦ビルも、そんな流れに乗っている。欧米でも軒並み木造ビルが建っている。その点については、以前にも記した。

 その理由として上げられるのは、まず木材を長く使われる建築材にすれば地球温暖化対策として木材の炭素を貯蔵する意義があること。またヒートアイランド現象を抑える効果を見込めること。また建物の中にいる人間にとっても、木を目にしたり触れることは精神衛生上よいと考えられること。そして建築的にも高層建築を可能にして耐火・耐震基準も達成できる建材や技術が開発されてきたことがある。さらに付け加えるなら、林業振興に木材需要を増やしたい思惑もあるだろう。

 このところ、目先の利益や一方的な都合を主張するばかりの政策ばかりが目立つ。そんな中で、少し遠い将来に向けて木化都市のような目標を目にするとホッとする。ナントカファーストではなく、森林(自然)と人が有機的に結びつき共に楽しめる社会を描くのは悪くない。真夏の夢に終わらせないで、少しずつでも進んでいけばよいのだが。

(写真は、みんな筆者撮影)