森林経営管理法案、抱き合わせ部分の怪しさ

この森は所有者の同意なしに伐採してもよい?(筆者撮影)

 今国会で話題の「働き方改革関連法案」。私もざっと目を通したが、この法案の問題は「抱き合わせ」にあるのではないか、と思った。

 

 法案には「同一労働、同一賃金」や「時間外労働上限規制」などわりと納得できる内容も含まれる。これらに反対する野党もいない。が、そこに「裁量労働制」を抱き合わせるからややこしくなる。「裁量労働制」自体の善し悪しはともかく、施行すれば本来の意図を無視して使われるのは目に見えるからだ。なぜ抱き合わせるのか。賛成しやすいものと一緒にしたら反対意見を削げるからか、と勘繰りたくなる。

 

 それと同じ筋の悪さを感じるのが、森林経営管理法案だ。こちらも自民党の了承を得られたから今国会に出される予定だが、マイナーなので知らない人も多いだろう。だが林業界では、結構この話題で賑わっている。

 

 この法案の狙いをごく簡単に説明すれば、森林所有者が積極的に管理しない(できない)森林に対して市町村が「経営管理権」を設定し、さらに「経営管理実地権」を設定した業者に委託するというものだ。

 

 森林所有者も、林業が儲からなくなり、住まいも都市部に移り、世代交代などもあれば、自分の所有する森林を持て余すケースはよくある。結果、放置して荒廃するに任せる。もし森林の地元で道を通したい、間伐したい……などの要望が出ても面倒だから無視する。そうすると手をつけようがない。そこで、所有権と管理(利用)権を分離して所有者に代わって森林を整備しようというのが大意と見ている。

 

 ここだけなら、私も賛同する。もともと以前から利用権の分離は唱えてきた。所有者に任せきりにするのではなく、誰か請け負える専門家がいるのなら活用するのもよい。

 もちろん、子細に見ると問題も感じる。とくに市町村がその森林を「意欲と能力のある業者」に委託するという点は怪しい。何を持って森林経営の「意欲がある」「能力がある」業者と認定するのか。

 おそらく伐採搬出する意欲と能力を想定しているのだろうが、それは森林経営ではない。本来の森林経営は、植林から長い期間(最低でも60年)世話をし続けて、収穫(主伐)したら次世代の森づくりを計画して……という持続性が肝心だが、他人の森でこれほど長期間森を預かる意欲と能力を持つ業者はどれだけいるのか。伐採後は投げ出しても罰則があるわけでもない。欧米ならフォレスターと呼ばれる公的な専門家が関わるが……。

  

 だが、もっと怪しい項目がある。上記の内容は、基本的に所有者の同意を経て行うものだが、実は森林所有者が同意しなくても可能とする条文があるのだ。仮に所有者が森林を委託することに同意しなくても、市町村の勧告や知事の裁定によって所有者から森林を取り上げて勝手に「経営管理」してもよいというものだ。(管理期間は50年)

 いくら60年の伐期が来たと言われても、私の森は100年生まで育てたい、この山に道を入れたら崩れると地質を知っての反対なのかもしれない。あるいは一切人の手を入れず天然林にもどすと考える所有者もいるかもしれない。だが同意しなくても伐採したり道を入れたりすることが可能なのである。

 一方で「災害等防止措置命令」もあって、危険と判断された森林は所有者の同意がなくても市町村が伐採などの命令を出し委託できる。こちらはわかるのだが……。

 さらに条件が悪くて経営を委託されても赤字になると業者がしり込みする森林には、森林環境税を財源に補助金を注ぎ込むというのだから、何がなんでも木を伐りたいのかと思ってしまう。

 

 さすがに市町村も、同意なしで無理にやらないだろう、この項目は所有者不明などの場合だという声もある。だが、法律にあえて同意なしでも可能という条項を入れることは「いざとなれば伝家の宝刀を抜けるんですよ」と脅しをかけられるということだ。 

  

 森林経営管理法案は、所有権と管理権を分離することで森林の整備を進めやすくしようという理念を、所有者の意志を無視しても伐採して儲けるぞ、という筋の悪い目的と抱き合わせている。

 裁量労働制も、本人の意志を優先することを前提にしているが、それが信用ならないから反対意見が続出している。同じことを森林がらみの法案でもやろうとしているように思えてならない。