堤防の菜の花は、遺伝子組み換え植物かも

福岡~佐賀を流れる宝満川。河川敷や堤防の菜の花畑は美しいが……。(ペイレスイメージズ/アフロ)

春の花と言えば、サクラとともに思い浮かぶのが、菜の花。

とくに、河川敷や堤防などが菜の花に埋めつくされたかのような景色を見かける。黄色い絨毯模様は、ある意味圧巻だ。

だが、なぜ河川敷や堤防に菜の花が咲き乱れるのだろう。誰か種子を散布しているのか。また一種類の植物だけが繁茂してよいのだろうか。少し調べてみた。

まず菜の花と呼ぶのはアブラナ科アブラナ属の花全体で、アブラナ、カラシナ、カブ、ハクサイ、キャベツ、ブロッコリー……と広く指す。ちなみに菜花と呼ぶと、主として若芽を食するものをいう。それも野菜として特化した1種類ではなく、幅広い種が栽培されているようだ。

ただし河川敷に生える菜の花のほとんどは、セイヨウアブラナ、セイヨウカラシナのようだ。そして河川敷に菜の花が生えだしたのは、そんなに昔ではなく、1960~70年代に広がったらしい。わりと最近の景観なのだった。

なぜ、この時代に急に菜の花が河川敷に広がったのだろうか。

もともとアブラナは種子を絞って油を、カラシナなどは芥子を採るために栽培されてきた。江戸時代からナタネ栽培は一大農業作物だったのである。ただ明治になると、在来種のアブラナより油の採れるセイヨウアブラナに取って代わった。昭和に入る頃には、ほとんど西洋種に置き換わったようだ。

しかし戦後になると、わざわざ栽培して種子を採取し、そこから油を絞ることはほとんどなくなった。最初から種子を輸入した方が安くて簡単だからである。現在では、主にカナダなどからの輸入が多い。食用油の原料として年間200万トン以上を輸入している。

ところが栽培されなくなった時期から、各地の河川敷・堤防に菜の花畑が登場してきた。かつて栽培されていた菜の花が放棄される過程で種子が河川に流れ出して流域に拡散したと想像できるだろう。皮肉にも菜の花が栽培されなくなったことが、野生化を進めたのだ。

実は、それを助けたのが、堤防などで行なわれる草刈りらしい。主に春秋に2度3度と行なう草刈りによって、菜の花のライバルを取り除くことになり、早春に生長する菜の花が繁茂するきっかけをつくったというのだ。また刈った草を現地に残すと堆肥化して土を肥やす。アブラナ科植物は富栄養化した土地を好むことから適応したとも考えられる。

また最近は、自治体などが河川敷や休耕田に菜の花畑の景観を作り出そうと種子を散布して咲かせる地域もあるようだ。さらにまちおこし的に種子を採取して菜種油を絞る試みもある。

一方で、野菜としての菜花が人気を呼ぶにつれて、菜の花を栽培するところも出てきた。菜花の収穫量は、日本全国で5000トンを越えるまでになっている。

これらも菜の花の野生化のきっかけになるだろう。

菜の花が春の景観を作り出し、菜花も収穫できるのなら有り難いじゃないか、と思わぬでもないが、実はやっかいな問題が起きている。

まず、自然界で繁茂しているほとんどが外来種であること。加えて雑種化が進んでいることだ。

アブラナ科は、自然界でも異種間交配しやすいらしく、たとえばアブラナとセイヨウアブラナ、さらにカラシナの雑種が生れて形態だけで区別がつきづらくなっている。

さらに問題なのは、セイヨウアブラナは遺伝子組み換え種子の可能性が高いことだ。カナダなとでは普通に使われている。しかも非組み換え種と交雑して遺伝的な拡散が起きる。ほかの遺伝子組み換え植物(ダイズやトウモロコシなど)と異なって、野生化が容易なだけにやっかいな状況にある。

両種は見た目だけでは区別がつかないが、遺伝子汚染は深く静かに進行している可能性がある。

また菜の花が生える富栄養化した土にはミミズなどが増え、それがモグラやノネズミを増やす、すると堤防が弱くなる……という指摘もある。そのため菜の花を刈り取って芝に換える動きもある。私は、モグラの穴が本当に堤防の強度に影響を与えるのかちょっと疑問だが……。

ともあれ、春の風物詩になっている菜の花畑も、いろいろ問題を抱えているようである。