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鳥山明さんが死去 DB芸人、ももクロ、『勇者ヨシヒコ』など“二次創作”を多数生み出した理由と影響力

田辺ユウキ芸能ライター
(写真:ロイター/アフロ)

漫画家の鳥山明さんが3月1日に急性硬膜下血腫で死去していたことが8日、『週刊少年ジャンプ』の公式サイト及び、『ドラゴンボール』公式サイトで発表された。

鳥山明さんは1978年に『週刊少年ジャンプ』52号で読み切り作品『ワンダーアイランド』でデビューし、以降はテレビアニメ化、映画化もされた『Dr.スランプ』『ドラゴンボール』など大ヒット作を発表。また人気ゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズのキャラクターデザインを担当したことでも知られている。

日本国内のみならず世界中でその作品が愛されている鳥山明さん。こと日本では、お笑い、アイドル、テレビドラマなどにも大きな影響を及ぼし、多数の“二次創作”を生み出した。

「ドラゴンボール芸人」はお笑い界で確固たる地位を築く

なかでも『ドラゴンボール』をモチーフとした「ドラゴンボール芸人」は、お笑い界でも確固たる地位を確立した。

R藤本は、『ドラゴンボール』の主人公である孫悟空の宿敵・ベジータのコスチューム、セリフ、声などを真似た芸でブレイク。キャラクターの特徴を捉えた上で、「ベジータが絶対に言わないセリフ」などユニークなアイデアを取り入れて笑いを集めている。YouTubeチャンネル『R藤本』は、「自分よりおもしろくないドラゴンボール芸人ランキング」など『ドラゴンボール』を話題とした動画で埋め尽くされているほど。鳥山明さんなくして絶対に語れない人気芸人である。

お笑いコンビ、アイデンティティの田島直弥は、同じく『ドラゴンボール』のパロディでありながら、孫悟空、孫悟飯、孫悟天の声優である野沢雅子をモノマネするという意外な角度で観る者を楽しませている。こちらは孫悟空の口調で「絶対に言わなさそうなこと」などを披露している。

そんなR藤本、田島直弥らドラゴンボール芸人が多数参加し、ラップユニットのDungeon Monstersの曲「MONSTER VISION」(2017年)をパロディ化したDBGstarsによる「DBSTAR VISION」(2022年)は、『ドラゴンボール』ネタをふんだんにまじえて歌われ、再生数は約455万回(2024年3月8日時点)を記録している。

アイドルグループのももいろクローバーZは2011年、ももいろクローバーから現グループ名へと改名。別の改名案として、ももいろクローバーグレート、ももいろクローバー改などのアイデアもあったそうで、川上アキラマネージャーは「みんな『ドラゴンボール』なんですが(笑)。語呂、響きがいいと感じてZに決めました」(書籍『ももクロ流 5人へ伝えたこと 5人から教わったこと』(2014年/日経BP)より)と、影響を与えられたことを明かしている。

テレビドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズ(テレビ東京系)は『ドラゴンクエスト』シリーズを意識した内容で知られ、鳥山明さんがデザインしたキャラクターに似た人物らが登場する。2016年には、ヨシヒコ役の山田孝之がゲーム『ドラゴンクエストヒーローズII 双子の王と予言の終わり』のツェザール役のボイスキャストを担当。同作のキャラクターデザインも鳥山明さんが描き下ろしていた。

敵役、脇役にまで“二次創作”が及ぶ理由

鳥山明さんの漫画作品の魅力は、主人公だけではなく、憎らしい敵役、地味な脇役などすべてのキャラクターに愛着が持てるところだろう。

たとえば『ドラゴンボール』では、残虐で不気味な強敵・フリーザが非常に高い人気を誇る。冷たい雰囲気が表立っているが、怒りが頂点に達すると手がつけられないほど凶暴になるなど、そのギャップなどがおもしろがられた。さらに、「わたしの戦闘力は530000です」とそれまでの物語のパワーバランスを大きく覆す言葉を口にするなど、セリフ面でも読者の意表を突き続けた。

『Dr.スランプ』も、主人公のアラレちゃんの「キーン」という分かりやすいセリフだけではなく、アラレちゃんの近くを飛ぶ赤ん坊のガッちゃんの「くぴぽ」、ヒーローであるスッパマンの「梅干し食べて、スッパマン」など、各キャラクターの口癖が印象的だ。

お笑いなどで、メインどころだけではなく隠れた存在のキャラクターにまで“二次創作”が及んだりする理由は、いずれの作品でも登場キャラクターの特徴付けに手抜きがなく、また良い意味でのツッコミどころを必ず設けていた部分ではないか。あまり目立たないキャラクターでも、セリフ、見た目などにひと癖、ふた癖を設けることで読み手らの脳裏に焼き付けることができる。だからこそお笑い芸人らは“二次創作”しやすく、また見る者も「こういうキャラクター、確かにいた」と納得できるのだ。

鳥山明さんの作品は、セリフ、キャラクター、アイテムなど細部に渡って妙味ある設定がほどこされている。だからこそいろんなジャンルで、ユーモラスかつ幅が広い“二次創作”がおこなわれるのではないか。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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