Yahoo!ニュース

『R-1GP 2024』の決勝戦には夢がある、アマチュア初の快挙・どくさいスイッチ企画のおもしろさ

田辺ユウキ芸能ライター
(写真:アフロ)

ピン芸人のナンバーワンを決めるお笑いの賞レース『R-1グランプリ2024』の決勝進出者が2月11日に発表され、どくさいスイッチ企画、寺田寛明、真輝志、kento fukaya、ルシファー吉岡、街裏ぴんく、トンツカタンお抹茶、吉住、サツマカワRPGの9名がファイナリストとなった。

Xの自己紹介投稿に明記「お笑い芸人さんではありません」

4年ぶり7回目の決勝進出となるルシファー吉岡、4年連続の寺田寛明、3年連続のサツマカワRPG、『THE W 2020』優勝の吉住ら実績者が顔を揃えたほか、笑福亭鶴瓶ら多数の芸人たちが絶賛する街裏ぴんくもついに“表”の舞台に立つなど、話題性十分の今大会。そんななかひときわ目を引くのが、どくさいスイッチ企画の存在だ。

大阪を拠点としているどくさいスイッチ企画は、普段は会社勤めをしていることもあって、本人はXに固定している自己紹介投稿で「お笑い芸人さんではありません」と明記。特定の事務所に所属しておらず、本業が会社員であるため「アマチュア」を名乗っている。大手芸能事務所が運営する劇場ではなく、無所属芸人らが切磋琢磨する小規模劇場の舞台に立って、ネタを披露している。あくまで趣味として一人コントや新作落語をおこなっているという。つまり今回の『R-1グランプリ』には、どくさいスイッチ企画という、アマチュアの“非芸人”が決勝へ進出したことになる。

予想外のシチュエーション、そしてネタ中は自身の名前を何度も口にする

それでも『全日本アマチュア芸人No.1決定戦2023』で優勝を果たしたほか、『R-1グランプリ』でも2022年、2023年に準々決勝へ進出している。さらに筆者も会場で実際に鑑賞したが、『キングオブコント2022』にはピン芸人の準新作とユニットを組んで新作のスイッチ企画名義で出場し、大きな笑いを集めるなどして準々決勝まで勝ち進んでいた。まさに「知る人ぞ知る実力者」である。

そんなどくさいスイッチ企画の持ちネタの一つ「探偵」は、ホテルで起きた殺人事件の真相を暴こうとする探偵が、500人もの容疑者に手を焼くなどする展開がおもしろい。ほかにも「電車」は痴漢をめぐるストーリーで、犯人が体に触れた本当の理由は環境破壊について訴えかけるパフォーミングアートの一環だというもの。

いずれのネタも予想外のシチュエーションや、シニカルな物語性を含ませて観客を引き込んでいく。ワードチョイスも絶妙だ。さらにネタの合間に、自身の芸名を何度も口にする特徴的な構成も印象に残る。

ちなみにアマチュアが大型の賞レースのファイナリストになったのは、変ホ長調(『M-1グランプリ2006』8位、『THE W 2023』ファーストステージ敗退)、女ガールズ(『THE W 2021』ファーストステージ敗退)、押しだしましょう子(『THE W 2017』ファーストステージ敗退)が挙げられる程度。『R-1グランプリ』でアマチュアが決勝戦まで勝ち残ったのは初めてのこと。

前回の『R-1グランプリ2023』では、前年開催『M-1グランプリ2022』決勝戦のネタ中にウエストランド・井口浩之が発言した「『R-1』には夢がない」がモチーフになった。ただ、そんな井口浩之は『R-1グランプリ2024』に挑戦したが準決勝で敗退。逆にアマチュアの“非芸人”であるどくさいスイッチ企画がファイナリストになったのは、非常に夢があることではないだろうか。決勝戦は3月9日に開催される。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

田辺ユウキの最近の記事