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『THE W』も獲った黄金世代「NSC大阪校33期」、大型賞レース完全制覇の強さの秘訣は何なのか?

田辺ユウキ芸能ライター
(提供:イメージマート)

『女芸人No.1決定戦 THE W 2023』(日本テレビ系)が12月9日に開催され、4年連続5度目の決勝の舞台となった紅しょうがが悲願の優勝を飾った。

同コンビの稲田美紀は自身のX(旧Twitter)のアカウントで、「THE W 2023優勝できました」と報告。さらに「スタッフさんに33期すごいですねって言われて、自分も優勝したかったからほんまに嬉しいです!」というコメントも投稿した。

33期、『M-1』『キングオブコント』『R-1』『THE W』の大型賞レースを完全制覇

この「33期」とは、吉本興業が1982年に創立した新人タレント育成などを目的とする養成所「吉本総合芸能学院」(通称「NSC」)の大阪校33期生(2010年入学、2011年卒業)のことを指している。

稲田美紀の同期には、『キングオブコント2022』チャンピオンのビスケットブラザーズ、『キングオブコント2015』チャンピオンのコロコロチキチキペッパーズをはじめ、『キングオブコント2023』決勝3位のニッポンの社長のケツ、『キングオブコント2021』準優勝の男性ブランコ、『R-1グランプリ』2021年・2022年準優勝のZAZY、『R-1グランプリ』2021年・2022年ファイナリストのkento fukaya、『キングオブコント2020』ファイナリストの滝音の秋定遼太郎らがおり、『M-1グランプリ2023』でもマユリカが決勝へ進出。また『M-1グランプリ2018』『R-1ぐらんぷり2019』チャンピオンの霜降り明星の粗品も、NSCには通っていないが活動開始時期から33期扱いとされている。

紅しょうがの稲田美紀が『THE W』を獲ったことで、お笑いの大型賞レースとされる『M-1グランプリ』『キングオブコント』『R-1グランプリ』『THE W』の4大タイトルすべてを33期(33期扱い)が制したことになる。まさに黄金世代。「スタッフさんに33期すごいですねって言われて」という言葉は、全国的なバラエティの現場でも33期が一目置かれているあらわれでもある。

コロコロチキチキペッパーズの『キングオブコント』優勝が同期の刺激に

なぜ33期は黄金世代なのか。それぞれが「おもしろい」というのは当然として、稲田美紀の「自分も優勝したかった」という感想から考えられるのは、誰かが一歩飛び抜けると「自分も負けていられない」と競争心に火が付いてネタ磨きや技術などの向上につながるからではないか。

特に、コロコロチキチキペッパーズが結成3年目で『キングオブコント2015』を制したのは、大きな刺激を与えたはず。WEBメディア『TV Bros.WEB』のビスケットブラザーズのインタビュー記事でも、原田泰雅は「コロチキって早くに『キングオブコント』で優勝してしまったから、誰も仲間がおらん状態でずっと走ってたんですよ。そのあと、『M-1グランプリ』で霜降り明星が優勝するんですけど、僕らが『キングオブコント』決勝に行った2019年。西野に会うたら、『お前ら、ええ感じやな。あと一歩、出てきてくれ。あと一歩来てくれたら、同期全員でガッと出られる』って言われたんです。やから、追い付きたいなと。仲間が多いのって、めっちゃいいことばっかりで」と同期の活躍の重要性を口にしている。

また同インタビュー記事では、原田泰雅は同期について「お笑いケンカ屋っていうかストリートがめっちゃ強いヤツっていうイメージですね。平場でもめっちゃ前に出るし、自分がいちばんボケたいって思ってるし、パワー系のギャガー気質なタイプが意外と多い気がします」とも話している。

同期生は、劇場でのライブなどでも共演する機会が多い。そういったライブではネタだけではなくゲームコーナーなども設けられており、フリーで喋ったりできる場面(平場)がある。そこで経験を積むことで、いわゆるお笑いの「筋肉」や「地肩」が鍛えられると言われている。33期は平場でもしのぎを削るようにし、それが期全体の力の底上げにつながっているのではないか。

『THE W』ファイナリストのハイツ友の会ら41期、1年後輩の42期も勢い十分

現在は、『THE W 2023』ファイナリストのハイツ友の会らNSC大阪校41期(2018年入学、2019年卒業)が「勢いがある」とされている。『ラヴィット!』(TBS系)で披露した独学ピアノ演奏で話題を集めたキャツミ、『M-1グランプリ2020』セミファイナリストのタイムキーパー、テレビドラマ『ノーサイド・ゲーム』(2019年/TBS系)にも出演したラグビー芸人のしんや、ユニットのチューリップフィクサーで『M-1グランプリ2023』準決勝まで進んだ白桃ピーチよぴぴ、2023年『UNDER5 AWARD』ファイナリストの三遊間などタレント揃いである。さらにその1年後輩の42期も、マーメイド、ぐろう、空前メテオなどがいる宝庫だ。

先日、ミルクボーイにインタビューした際、駒場孝、内海崇からふと「2023年の『M-1』で誰に注目していますか」と尋ねられた。筆者は41期、42期の芸人の名前を挙げたところ「ああ、最近よく聞きます。勢いがありますよね」と話していた。両期の飛躍は、『M-1』王者の耳にも届いているようだ。

42期のぐろうは筆者のインタビューに「僕たちNSC42期生は、ハイツ友の会さんなどの41期生の勢いを目の当たりにしています。それに追いつこうとしていることが、力が付いている理由だと思います」(家村涼太)と先輩に対しての意識がかなりあると語っていた。やはり、身近な存在が刺激となって実力向上につながるのだろう。

逆に、33期のZAZYに話を訊いたときは「入学したときは、周りを見て『お笑い芸人になる人ってこんなにおもしろいのか』と感じました」としながら、一方で「逆に『みんな、もっとおもしろいと思っていた』という風にもなりました」とも振り返っていた。ZAZYは何があってもお笑い芸人になりたかったわけではなく、それでいてネタ見せでは意外とウケが良く、NSC大阪校在学時は上位30組の中には入れていたのだという。こちらもニュアンスは違うが、やはりまわりの存在が自分に影響を与えていたと考えられる。

33期の快進撃はどこまで続くのか。近いところでは『M-1グランプリ2023』の決勝(12月24日開催)でマユリカが登場する。どんな結果を残すのか楽しみだ。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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