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「芸人グルメンタリー オモウソい店GP」はパクリかパロディか、「パクリすぎて笑えない」など賛否両論

田辺ユウキ芸能ライター
(写真:アフロ)

9月19日、バラエティ特番『お笑いオムニバスGP』(フジテレビ系)のなかで企画「芸人グルメンタリー オモウソい店GP」が放送された。

同企画はそのタイトルからも分かるように、人気番組『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(日本テレビ系)をモチーフとし、ジェラードン、チョコレートプラネット、友近、秋山竜次(ロバート)、ロッチ、ネルソンズ、マヂカルラブリーの7組が、本家『オモウマい店』に登場しそうなクセありの店主らになりきり、“コント”を披露している。

優勝を飾ったのはネルソンズ。イタリア料理店を舞台に、ランチ時で客がつめかけるなか、店主がワンオペレーションでまわしてテンパっていく様子で笑わせた。

ただSNSでの感想を見て気になったのは、同企画について辛辣な意見が並んでいた点である。そのほとんどは「『オモウマい店』をパクリすぎていて笑えない」といった声である。

川島明も本家を意識「“アレ”ではないですよ」

たしかにBGMにはジョルジュ・ビゼーの『カルメン「前奏曲」』が全編にわたり使用され、VTRについてコメントする「お笑い見届け人」の背景に設置された写真には、芸人扮する料理人たちの個性豊かな表情が広がっているなど、いずれも本家そのもの。

同企画の冒頭でも、MCの川島明(麒麟)から「“アレ”ではないですよ」と元ネタを意識する発言があり、『オモウマい店』への出演経験を持つ渋谷凪咲(NMB48)も「このイスも、あのイスです」と本家同様のデザインのイスではないかと指摘。それらの番組演出からは、「パクリ」という声が出ることも想定しながら笑いを起こそうとしているようだった。

そのほか料理店へ取材にやって来たテレビスタッフがいちいちカメラを机に置くところなど、本家に寄せた細かい演出も多々なされており、途中からチャンネルを合わせた視聴者は『オモウマい店』と見分けがつかなかったかもしれない。

すべてのネタは“コント”として判断できるのでは?

ただ、たとえば秋山竜次が演じた多国籍料理の店主は、「料理はすべて自家製だ」と言い張りながら、実はすべて会員制倉庫型店から購入したものばかり提供しており、壁には偽物の北斗晶のサインを飾るなど、フェイク要素をかなり入れていた。他6組も、過剰なキャラクター作りや料理で『オモウマい店』との明らかな違いをあらわしていた。

これらはパロディやオマージュとしてとらえることができ、純粋に大笑いできた視聴者も多かったはず。また同企画は「最強のコント師が集結」と銘打っており、マヂカルラブリーによる風呂場で寿司を握る職人のネタが顕著であるように、すべてのネタは“コント”として判断できるものだった。

さらに同企画のあとに特番内で放送された「2億4千万のものまねメドレーGP」が、ものまね名人たちによるものまねメドレーであることから、「オモウソい店GP」も『オモウマい店』という番組自体をものまねした“芸”として見ることができるのではないか。

ちなみに「2億4千万のものまねメドレーGP」で審査員長をつとめた石橋貴明(とんねるず)も、冠番組『とんねるずのみなさんのおかげです』(フジテレビ系)などで、「仮面ノリダー」などさまざまな番組のパロディを披露してきた。

パクリとパロディの線引きはどこにあるのか

一方で辛辣な意見を投稿した視聴者としては、今回の「オモウソい店GP」にはパロディやオマージュとして観るにはオリジナリティが足りていないと感じたのではないか。本家の番組のファンであれば、なおさら疑問をいだくかもしれない。これまでテレビ番組は、いろんなドラマ、映画、バラエティなどを元ネタとした企画を放送してきた。しかしこういった声が目立つようになったのは、時代の変化ではないだろうか。

同企画を放送するにあたって、本家の許可は間違いなくとっているはず。さらに企画タイトルで「ウソ」と明言しており、それがエクスキューズになっているようにも思える。ただ、パクリとパロディの線引きは非常に難しいところでもある。前者は言葉のニュアンスも含めてイメージが悪く、後者は良い受け取り方になる。

「おもしろければそれで良い」のか。それとも「『オモウソい店』はセーフかアウトか」を追究するべきなのか。視聴者の判断が分かれそうなところも踏まえて、とても興味深い企画だったと言える。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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