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松本人志のYouTube進出発言など、エイプリルフールの「嘘」から見出せる芸人、俳優らの「真意」

田辺ユウキ芸能ライター
(写真:Splash/アフロ)

SNSが発達して以降、エイプリルフールの「嘘」は巧妙化が進み、そのクオリティがアップしている。

2022年の芸能界に目を向けると、たとえばハードな楽曲で知られるアイドルグループ、PassCodeは正統派なキラキラ路線のミュージックビデオを発表。楽曲、映像を作り込んで「本気で嘘をつく」という内容になっていた。

一方で、T.M.Revolutionの西川貴教は「今日明日、Zepp Fukuokaでライブなんで、今から向かいます」と土管に入って目的地へ向かおうとする、はっきりと冗談だと分かる写真を掲載した。

そういったなか、嘘のなかにいろんな真意が込められていそうな投稿も散見された。

松本人志「【ひとっちゃんねる】始めます」の真意

ダウンタウンの松本人志は、「いよいよYouTube【ひとっちゃんねる】始めます」とツイート。エイプリルフールにこのようにつぶやくということは、「やらない」との意思表示である。

以前より、松本人志のもとにはYouTubeチャンネル開設を待望する声が相次いでいる。ただ、2020年5月10日放送『ワイドナショー』(フジテレビ系)でも「YouTubeで別にやらなくても、Twitterで動画配信はできる。一銭の金にもならへん方が良いかなと思っている」と首を横に振り続けてきた。

2021年3月21日放送の同番組では、元人気ユーチューバーの不祥事に絡めて「テレビは複数の人と触れ合っているから、何となくその人の、人となりが見えてくる。でもYouTubeっていろいろ(なチャンネルが)あるんでしょうけど、ひとりで喋っているから、この人がどういう人なのか、嘘なのかも分からないんやろうな」とYouTubeでは人間性が見えないとし、コンテンツと自身の芸風がミスマッチであることを語っていた。

そういった経緯もあり今回のエイプリルフールでの「YouTube始めます」は、改めてユーチューバーデビューを否定した形となっている。

ビートたけしのYouTube進出もネタに絡めた?

松本人志の冗談の背景には、ビートたけしの発言も関係しているのではないか。

3月29日放送『23時の密着テレビ「レベチな人、見つけた」』(テレビ東京系)の最終回で、TOKIOの国分太一から「今後、やりたいこと」について質問され、ビートたけしは「ネットの方でむちゃくちゃやろうかな」とコメント。さらに国分から「YouTubeもあり得るということですか」と尋ねられると、「そういう感じのところになるかもしれない」と関心を示したのだ。

すぐにネットニュースでは「ビートたけし、ユーチューバーデビューか」と発言が取り上げられ、期待感がふくらんだ。松本人志の嘘は、ビートたけしのコメントに絡めているようにも見えた。

『R-1』準優勝・ZAZY、ついた嘘で実感する現実

『R-1グランプリ』で2年連続準優勝だったZAZYは、「R-1グランプリ2022のチャンピオンになりました」と投稿。しかも、とてもよくできたトロフィーまで制作していた。

ZAZYは2021年がラストイヤー。しかし、お見送り芸人しんいちの前に敗れ、悲願のタイトルを逃してしまった。そして、しんいちの芸歴について「(参加規定の)10年以上ではないか」「休養期間を除いて10年以内で良いなら、自分もまだエントリーできる」と異議を訴え続けており、先日、ZAZYにインタビューをおこなった際も「まだ納得いっていない」と複雑な表情を浮かべていた。

しんいちが唱えた「休養期間を除いて芸歴10年」という手段を使えば、ZAZYも再挑戦できる可能性があるかもしれない。ただ、この「R-1優勝」の嘘からは、どんな手があろうと同大会にはもう挑まないこと、そしてチャンピオンになることはもうできないという現実がにじみ出ていた。

浅野忠信のエイプリルフール芸から分かること

人気ユーチューバーのはじめしゃちょーは、「いつからか炎上を恐れ、エイプリルフールにすら嘘をつけなくなった男」とつぶやいた。

かつては4月1日に「全身粉砕骨折した」(2015年)など無邪気な嘘をついていたが、一方で2016年6月にはエイプリルフールとは関係なく「3年間のアメリカ留学へ行く」と発言し、翌日にはドッキリであることを明かして炎上。そういった対応の大変さは身にしみて分かっている。

その言葉からは、嘘について慎重になっていることがうかがえる。今回のツイートが、今後のはじめしゃちょーの動画がすべて“ガチ”であることの証明になるのか。それとも、その発言自体がエイプリルフールの嘘になるのか。

俳優の浅野忠信は「肋骨が普通の人より一本ずつ足りないために俳優業を休む」(2015年)、「東大に入学が決まったため俳優業を休む」(2018年)など、エイプリルフールには決まって嘘をつき続けてきた。

2022年は「バンクーバーにてオリジナルハンドメイドメイプルシロップを5トン購入したため東京への出店に向けしばらく俳優業を休む」と記した。

現在ではそれが浅野忠信の「エイプリルフール芸」として認知をされているが、数年前までは本気でとらえる人もいたことから、ちょっとした騒ぎにもなっていた。ただ、毎年のように4月1日には「休業」の嘘をついているのは、「これからも俳優をやめることはない」という気持ちのあらわれとも言える。

SNSは普段から、一度拡散されるといろんな意見や情報が混じり合い、嘘か本当か分からなくなってしまう。たとえエイプリルフールだとしても、本気で信じてしまう人もいるだろう。それが炎上へとつながることもある。有名タレントは「4月1日に嘘をつくこと」に敏感になっているのかもしれない。

嘘にもテクニックが必要な時代になってきた。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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