窪塚愛流、父・洋介の話題を求められること「嫌ではないけど、もっと作品の話をしたい気持ちがある」
ドラマ『この初恋はフィクションです』(2021年/TBS系)、『ファイトソング』(2022年/TBS系)など出演作が増えている俳優・窪塚愛流。
メインキャストとして初出演となる映画『麻希のいる世界』(公開中)では、ふたりの同級生の少女たちに翻弄される少年・祐介を演じている。俳優の窪塚洋介を父に持つ彼だが、今回のインタビューでは同映画の話はもちろんのこと、父について尋ねられる際の率直な気持ちを明かしてくれた。
「時間に追われるのが苦手、仕事前日は焦ってしまう」
――窪塚さんはこの作品をどのように自分のなかでとらえていますか。
正直、まだ頭のなかが追い付いていないんです。「何なんだろう、この気持ちは」と。最初に脚本を読んだとき、思ったこと、感じたことを台本にメモしたんです。そこで気づいたことは、最初から最後まで祐介のなかには、由希に対する気持ちがブレていないこと。自分にちゃんと向き合ってくれない由希がいる。それを受けて祐介も、行動自体は正しくないかもしれないけど、抱いている気持ちの部分は決して悪いものではない。すごくピュアな若者だと思います。
――確かにそうですね。
由希に対する「好き」という想いが、うまく交差したり、交差しなかったりする。それでもその感情はブレない。「なぜ好きなのか」はっきり描かれていないけれど、そもそも誰かを好きになることに理由はない。その点では、僕は祐介というキャラクターにとても愛着があります。
――ただ、物語を追うごとに祐介のなかでいら立ちは膨らんでいきますね。それが終盤、彼が犯すひとつの出来事につながります。
彼自身、誰かに対してではなく自分にいら立っているんだと思いました。僕も人に対して怒ったりはしないけど、でも自分にいら立つことはあります。
――たとえばどんなことですか。
時間に追われるのが苦手なんです。たとえば仕事の前日、時間に余裕があっても気持ちをコントロールするのがうまくなくて、自分で自分を追い詰めてしまいます。「あと12時間後にはあそこで仕事か」と考えて、勝手に焦ったりして。お仕事が嫌いというわけではなく、自分で自分に圧をかけて、過ごし方がうまくないことに少しいら立ったりします。しかも意識しているわけではなく、自然とそうなってしまいます。
「クラスのムードメーカーだったけど…」
――この映画は喪失もテーマになっています。窪塚さんは、成長するにつれて取り戻せなくなったものはありますか。
僕は小学生、中学生時代はムードメーカー的な立ち位置だったんです。クラスで何かあったらよく発言もしていました。真面目なことも言うし、笑ってもらうためにちょっとふざけたことも口にしたりして。
ーーなるほど。
ただ高校へ進学してからは、環境も変わり、いままで以上にいろんな人と友だちになり、自分自身も年齢を重ねたことでキャラクターが変化したんです。良くも悪くも今までの自分が出せなくなった。それまでだったら自分の出番という機会でも、前に出なくなってしまったんです。「あのとき、積極的にこういう発言をしておけば良かった」という、今となっては取り返しのつかない後悔がいくつかあって。
――成長するにつれて控えめになることって、大いにあると思います。
逆に、どんなムードでも自分の言いたいことを口にして、クラスみんなを笑わせることができる人って、本当に素敵だなって尊敬します。以前までは自分はそういう人間だったのに、いつからそれができなくなったんだろうって。だからもっと、自分が考えていることを発言できる力を磨いていきたいです。
父・窪塚洋介に関する質問をされることに「疑問を感じるときも」
――祐介は、由希、麻希にいろんな影響を与えられます。窪塚さんは、自分にとって影響力の大きな人はどなたになりますか。
やっぱり父だと思います。芸能活動をしたいと思ったのも父の影響です。先日、別の取材で「お父様が芸能活動をやっていたから、その道へ進みたいと思ったのですか」と尋ねられて、そこで「そうかもしれない」となったんです。幼いときから僕の周りには、父の知り合いで俳優やミュージシャンなど人前で何かを表現している方が多かったので。自分もそれに影響を受けました。ただ、シンプルに僕は父のことが大好きなんです。もし父がお花屋さんをやっていたら、僕もきっとお花屋さんを目指したはず。
――マスコミは必ず、お父様のお話を聞きたがりますよね。でもそれについての抵抗感はありませんか。
父の話をすることは正直、嫌じゃないんです。ただ、限られた短い時間のなかで、父のことばかり質問されるのは違うんじゃないかと思います。たとえば今回は『麻希のいる世界』の話をしたいのに、いきなり作品の話とは関係なく父について質問されることもあって、そうなると「貴重な時間をそこに割いて良いのかな」と疑問に感じてしまいます。
――話の軸がブレちゃいますよね。
はい。そういう話なら自分のSNSでも発信できますから。だから「今、この場所で語らなければならないことは父の話ではないはず」です。
――それだけ窪塚さんが、作品のことを第一に考えているからだと思います。
特に今回は自分にとっても、大事な作品です。いろんな感じ方ができるはずですので、ぜひご覧いただきたいんです。
ーーすごく重要な役ですからね。
自分にとっては本格的な映画への出演なので、とても大切な作品になりました。決してハッピーエンドではなく、とはいえバッドエンドとも言えない物語で、僕もいまだに深く考えてしまいます。皆さんにも見終わったあとにいろいろな感想を持っていただける映画だと思っています。