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新谷ゆづみ、日髙麻鈴、さくら学院時代と現在の変化を語る「成長するにつれて失ったものがある」

田辺ユウキ芸能ライター
日髙麻鈴(左)、新谷ゆづみ(右)/写真:筆者撮影

アイドルグループ・さくら学院を2018年に卒業し、俳優として活動している新谷ゆづみ、日髙麻鈴。そんなふたりが共演したのが、映画『麻希のいる世界』(全国公開中)だ。

新谷は生きることに希望が持てない高校2年生・由希、日髙は美しい歌声を持ちながら由希以外とは関わりあわず生きる麻希を演じている。今回は、同映画の話をまじえながら、ふたりのパーソナルな部分について話を訊いた。

――この作品のエンディングは観る方によっていろんなとらえ方ができますが、おふたりはどう感じましたか。

新谷:確かに観る方によってはバッドエンドでもあり、ハッピーエンドでもありますよね。私は、由希を演じてみて、あのエンディングは絶対にハッピーだと思っているんです。あの涙も達成した気持ちからあふれ出たものというか、悲しいから出たものではないんじゃないかなって。だけどあのラストシーンは、由希としても、私自身としても、ものすごくつらくて。

日髙:複雑だった?

新谷:うん、複雑だった。麻希のことを考えると、ひたすらつらくて。私自身と由希の気持ちが重なって、自然と涙が出た記憶があります。つらかったけど、でも悲しさではないんです。達成した涙だった。

日髙:私もゆづみと一緒で、あのラストをポジティブにとらえているんです。麻希としては何か新しいスタートに立った感じがしていて。「麻希がいない世界」が始まるんだなという。一方で麻希自身は、根本は何も変わっていないという。どんな運命になってもそういう人間なんでしょうね。過去のしがらみや複雑な家庭環境があったとしても、彼女は彼女。彼女のその強さに、日髙麻鈴自身としてすごく憧れを感じます。

(C)SHIMAFILMS
(C)SHIMAFILMS

――登場人物がみんな何かにいら立っているところもすごく興味深かったです。

新谷:彼女たちがいだくいら立ちは、何となく理解できます。私は小さい頃から仕事でたくさんの大人の方と接する機会が多かったのですが、「こういうことがしたい」と考えていてもうまく伝えられず、どうしても子どもっぽい目線になってしまっていたんです。吸収したことを出せず、もどかしさをずっと感じていました。仕事と学業の両立も難しくて、先生にいら立ちをぶつけたこともありました。振り返ると申し訳ないことをしたなって。本当に思春期真っただ中でした。

――大人が言うことに対する疑問もありましたか。

新谷:でも、大人の人たちはいろいろ経験してきたものがあるし、自分の理解が及ばなかったのかなって。そういう意味で、年齢の壁をずっと感じていました。自分も少しずつ経験することが増えているので、その分、大人の人たちが考えていることを深く理解できるようになった気がします。

日髙:私は何かにいら立つことはほとんどありませんでした。むしろ悲しみの方が強くて。時々、自分の存在意義について考え込んじゃうときがあって。『麻希のいる世界』の撮影に入る前は特にそういう時期でした。当時、コロナで仕事もストップして学校にも通えない状態で、ひとりで過ごす時間が増えたんです。すごく悲しい気持ちになってしまって、「自分はなぜ存在しているんだろう」と気持ちを模索していました。

新谷:そういうことを考える時期って確かにある。

日髙:世の中の状況に流されて、ネガティブではあったと思うんです。ただ麻希を演じる上では、その悲しみの感情をいら立ちに変えて演じていたんです。

新谷:もともと私たちは、感情をそこまで表に出すタイプではなかったよね。

日髙:そうそう、すごく穏やか。ケンカもほとんどしたことがなかったし。さくらのとき、1度あった気がするけど。

新谷:でも、全然覚えてない(笑)・

日髙:ふたりとも感情がそれほど表に出ないからね

日髙麻鈴/写真:筆者撮影
日髙麻鈴/写真:筆者撮影

――あとこの映画は、登場人物がみんな何かを失っていく。おふたりも、かつては持っていたけど今は失ってしまったものはありますか。

日髙:空気を読まない力が失ったかもしれません。さくら学院で活動していたときは、「はみ出せ!委員長」という役職をつとめていて、空気を読まずにどんどん前に出たり、誰かがお芝居をやってるときも乱入したり、無邪気に振舞っていたんです。ただ少しずつ成長するにつれて、空気をどうしても読まなきゃいけなくなりますよね。決して悪い意味ではなく、自分を型にはめなきゃいけなくなることがある。本来の自分だったら絶対に型にはまらず、「不思議なやつだな」と言われても、それが嬉しかったりした。だけど今はそうじゃなくて、空気を読んじゃうんです。それはちょっと悲しいなって。

新谷:私の場合は良い意味なのですが、コンプレックスを失いました。自分の細かいこととかをすごく気にしてしまう性格だったんですけど、最近は「そんなことを気にしている暇はないんだ、人生は」と感じるようになって。自分の意見を率直に述べることもできなかったし、考えたことを行動に移すまでにいろいろ寄り道をしてしまう。あと、実はずっと自分の容姿もあまり好きじゃなかったんです。やっぱり、人それぞれにそういうコンプレックスってあるじゃないですか。

――間違いなくありますよね。

新谷:ただ、それを誰かに分かってもらいたいわけじゃなくて。自分のなかにあって、ずっと気になっていたんです。だけどいろんなお仕事もさせていただいて、最近はそういうことが気にならなくなりました。前向きになれたと思います。

新谷ゆづみ/写真:筆者撮影
新谷ゆづみ/写真:筆者撮影

――由希、麻希はともに影響し合って日々を過ごしていますね。おふたりにとって、そういう「自分に影響を与えてくれた人」はどんな方ですか。

日髙:すごくビッグでお会いしたこともない方なのですが、ジョニー・デップさんです。ご出演されているファンタジー映画を小さい頃からずっと観ていて、ものすごく大好きなんです。非現実的な世界に没頭できて、それが私の今の職業につながっている気がします。

――先ほど日髙さんは、「自分はなぜ生きているんだろう」と考えることがあるとおっしゃっていましたね。以前からすごく現実的な目線を持っているからこそ、ファンタジーの世界への憧れが強いのかなって思いました。

日髙:本当にその通りです。非現実と現実の狭間にいる感じで、楽しいこともあれば、それが苦しいこともありました。だからこそジョニー・デップさんのファンタジー映画に浸って、「ずっとここにいたいな」と思えたりもするんです。

新谷:私は、映像作品の現場でお仕事をさせていただくようになり、スタッフのみなさんから受ける影響が大きくなってきました。私は俳優のひとりとして一生懸命、役にのぞんでいますが、その環境というのはいろんな役割の方々が作ってくださっている。そう考えると、「私は、自分の仕事を全うしなければ」と毎回、強く感じます。それが責任感にも結びつきますし、先ほどお話したように「コンプレックスを持つのではなく、前向きにやっていこう」と考えられるようになったんです。その点で、スタッフさんの影響力が大きいですし、これからもみなさんと一緒に素敵な作品をつくりあげていきたいです。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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