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「穴埋め式テンプレート」で遺言書を残す!~どう書く? 「1人」に全財産を残したい場合

竹内豊行政書士
遺言書が相続トラブルを引き起こすことがあります。(写真:イメージマート)

1人に全財産を残したい場合、どのような遺言書を残せばよいのかトラブルケースを基にご紹介します。

トラブルケース~銀行から遺産の払戻しを断られてしまった!

田中英夫さん(仮名・78歳)は妻・愛子さん(仮名・72歳)と結婚して来月に50年を迎えます。そこで、「書こう」と思いながら延ばし続けてきた遺言書を結婚記念日に残すことにしました。英夫さんの両親は既に他界していて2人には子どもがいないため、英夫さんが亡くなったら愛子さんの他に英夫さんの5人の兄弟姉妹が相続人になるので、相当面倒なことになるのが目に見えていたからです。

英夫さんは自分が亡くなったら全財産を愛子さんに残すつもりです。そこで、自宅の不動産はもちろんのこと全ての銀行名・支店名・口座を遺言に書き出しました。その数なんと10行もありました。そして、書き上げた遺言書を「これで全財産が愛子に残せるからね」と言って愛子さんに手渡したのでした。

遺言書を残してから5年後、英夫さんは亡くなりました。そこで愛子さんは家庭裁判所に検認の申立てをした後に英夫さんのメインバンクへ預金の払戻しに行きました。すると行員から「ご主人様の口座番号が誤って記載されているのでこの遺言書では払い戻しいたしかねます」と告げられてしまいました。なんと英夫さんは、「6」と書くべきところを「8」と書いてしまったのです。天国に逝った英夫さんに書き直してもらうわけにもいかず、愛子さんは途方に暮れてしまいました。

トラブルを避けるにはどうすればよかった?

財産の内容を書き間違えてしまうと、相続預貯金の払戻しや不動産の相続登記が困難になるなど遺言の内容を実現することが困難になるおそれがあります。

実は、全ての財産を1人に残すのであれば財産を一つひとつ書き出す必要はありません。英夫さんは「全ての財産を妻に相続させる」と書けば十分だったのです。全財産を1人に残す穴埋め式テンプレートをご紹介するのでご参考にしてください。

穴埋め式遺言テンプレート~全財産を相続人の1人に残す場合

第〇条 遺言者は、遺言者の有する全ての財産を、遺言者の(続柄)(氏名)(  年 月 日生)に相続させる。

したがって、英夫さんは次のように書けばよかったのです。

第〇条 遺言者は、遺言者の有する全ての財産を、遺言者の妻 田中愛子(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。

遺言書は詳しく書けばよいというものではないことを覚えておいてください。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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