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広瀬めぐみ参議院議員が不倫騒動について謝罪~なぜ、「不倫」が発覚すると「世間」に頭を下げるのか

竹内豊行政書士
不倫はプライベートな問題なのに発覚すると世間に謝罪するのはなぜでしょうか。(写真:アフロ)

不倫が発覚して世間に対して謝罪する場面は数多くあります。つい最近は、自民党の広瀬めぐみ参議院議員(57)が29日、自身の公式サイトとSNSで、28日に一部週刊誌で報じられた不倫騒動について謝罪しました。

広瀬氏は29日午前0時に自身のサイトで【昨日のデイリー新潮web版及び本日発売の週刊新潮の報道について】と題し、「この度は私の不徳のいたすところにより、多くの方々に多大なるご迷惑とご心配をおかけしてしまったこと、まずは深くお詫び申し上げます」と謝罪。  「昨日のデイリー新潮web版及び本日発売の週刊新潮で、私の交際関係についての報道がなされております。岩手で私を支えて下さっている方々の信頼を損ない、ご迷惑をおかけしてしまったこと、家族の信頼を裏切り辛い思いをさせてしまったことを心から謝罪申し上げます。また、私の軽率な行動により、皆様に不快な思いと不信感を与えてしまい、本当に申し訳ございませんでした」とつづった。(引用:「エッフェル姉さん」広瀬めぐみ参院議員 不倫報道を謝罪「私の不徳」「今後は家族を大切に」

家族への謝罪は当然しなければならないと思うのですが、世間に対してまで謝罪しなければならないのはなぜでしょうか。

そこで、今回は、不倫をするとなぜ世間に対してまで謝罪をしなければならないのかを法律の側面からアプローチしてみたいと思います。

「日本国憲法」からのアプローチ

憲法は、言わずと知れた国の最高法規です。そこでまず、憲法は結婚(婚姻)をどのようにとらえているか確認してみましょう。

憲法は、24条で次のように規定してます。

日本国憲法24条
1婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない。

このように、憲法は、第1に、結婚が両性の合意のみに基づいて成立することを要求しています。結婚をする者に自由な独立した人格を認め、結婚はそれを基礎とする一種の契約であるという結婚観を表明しています。

第2に、夫と妻が平等の権利を有することを基本とし、相互の協力によって結婚が維持されなければならないとします。性差別を否定し、夫婦の法的地位の平等と同権を保障しています。これが前提にあって初めて、夫婦相互の愛情と協力による家庭生活が維持されると考えているのです。

第3に、一夫一婦制です。これは、先の2つの点と表裏の関係にあり、近代民法の婚姻の本質とされています。パートナー関係の独占排他性です。過去には一夫多妻制や妻妾制度なども存在しましたが、近代社会では、同時に複数の者と関係を持つことは公認されていません。

「民法」からのアプローチ

憲法が掲げる結婚観を具体的に体現するために、民法は次の3つの条文を規定して、「不貞行為」、すなわち配偶者以外の者との性的関係を結ぶことを禁じています。

1.重婚の禁止(民法732条)

配偶者のある者は、重ねて婚姻することはできません。

民法732条(重婚の禁止)
配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

2.同居協力扶養義務(民法752条)

夫婦は同居し、互いに協力し扶助し合わなければなりません。

民法752条(同居、協力及び扶助の義務)
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

夫婦には同居義務が課されていますが、職業上の理由、入院治療などの正当な理由があれば、一次的に別居することは認められます。

協力義務の内容は各当事者の事情によって異なります。具体的には、日常生活の維持、病者の看護、子の養育などあらゆるものが含まれます。

扶助義務とは、相互的な経済的援助を意味します。夫婦は同居して共同生活をするため、相手方が要扶養状態に陥った場合には、相手方の生活を自己の生活と同じように保持する義務があります。

3.不貞行為が離婚原因となる(民法770条1項1号)

不貞行為(配偶者以外の人と性的関係を持つこと)は、離婚原因となります。

民法770条(裁判上の離婚)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

「不倫禁止条項」は存在しない

実は、民法には、「婚姻をして、配偶者がいる者は不倫をしてはならない。」といった、不倫を直接禁止する条文は存在しません。

私が考えるに、「結婚をした後に、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことはしてはならないのは当たり前」(つまり、規定しなくてもダメなことは明白)という考えから、立法者は、「不倫禁止条項」をわざわざ規定しなかったのではないでしょうか。

つまり、不倫は、書いて字のごとし、「倫理」に反することであり、倫理に反することをわざわざ法で規定する必要はないということです。そして、倫理に反することを行えば、配偶者はもとより、世間に対しても「倫理に反することをしてすいません」と謝罪するのはある意味当然といった成り行きです。

今回は「不倫をしてはいけない」という「当たり前なこと」を考えてみました。「当たり前なことは規定しなくてもわかるでしょ」という立法者の声が聞こえてきそうですが、当たり前なことができないのが人の悲しい性といったところでしょうか。

理屈はさておいて、不倫をすると相当厄介なことになることは間違いありません。そのことはお忘れなく。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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