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成人式の謎~なぜ「成人の日」は1月15日でなくなったの?なぜ式典に18歳は参加できないの?

竹内豊行政書士
成人式の謎について考えてみます。(提供:イメージマート)

今日1月8日(月)は「成人の日」です。しかし、成人の日は「1月15日」と連想する方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際、私もその内の一人です。

また、2022(令和2)年4月に改正民法が施行されて18歳を成人年齢としましたが、ほとんどの自治体では成人の日の式典の参加年齢を20歳としています。なぜでしょうか?

そこで今回は、「成人の日」と「成人式」について考えてみます。

成人の日の変遷

成人の日は1月15日から「1月の第2月曜日」へ次のような経緯で変更されました。

最初は1月15日

国民の祝日は、「国民の祝日に関する法律」(祝日法)に定められています。この法律は、1948年(昭和23)年7月20日に公布されて即日施行されました。

このとき、成人の日は「1月15日」と定められました。その理由は、この日が小正月であり、かつて元服の儀(奈良時代以降、男子が成人になったことを示す儀式)が小正月に行われていたことによるといわれています。

ハッピーマンデー制度で「1月の第2月曜日」へ

このように、祝日法はもともと1月15日を成人の日と定めていました。しかし、ハッピーマンデー制度によって1月第2月曜日となりました。

この制度の背景に、観光業や運輸業などを活性化することがあります。そのために、祝日と週休2日制をつなげ、3連休以上の期間を増やして、国民の祝日の一部を従来の日付から特定の月曜日に移動させて連休の日数を増やしたのです。

このハッピーマンデー制度によって、成人の日の他にも次の祝日の日付が特定の月曜日に変更されました。

1. 国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律(平成10年法律第141号)による変更
・成人の日 1月15日→1月第2月曜日
・体育の日 10月10日→10月第2月曜日
2. 国民の祝日に関する法律及び老人福祉法の一部を改正する法律(平成13年法律第59号)による変更
・海の日  7月20日→7月第3月曜日
・敬老の日 9月15日→9月第3月曜日

成人の日とは

さて、そもそも「成人の日」とはどのような日でしょうか。

祝日法は、「国民の祝日を次のように定める」として成人の日を次のように定義しています。

第1条
自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。
2条(内容)
成人の日 1月の第2月曜日
おとなになつたことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます。

なお、同法は、「国民の祝日」を次のように規定し、「国民の祝日」は、休日とするとしています(同法3条1項)。

以上から、成人の日は、「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を国民こぞって祝いはげます日」ということになります。

対象年齢は法律で決められていない

前述のとおり、祝日法は成人の日の対象者を「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年」としています。

青年とは、「人を年齢によって分けた区分の一つ。普通、20歳ごろから30歳代前半までの人を指す」(引用「新明解国語辞典」)と定義されています。

このように、法律は成人の日の対象者の年齢を明確に定めていません。つまり、「20歳」とは限らないということです。

「20歳=成人の日の対象者」と考えられているのは、改正前の民法で「年齢20歳をもって、成年とする。」(4条)と規定しているのと全国の自治体が主催する成人式が「20歳」を対象としている影響と思われます。

現在は18歳で成人

成人年齢の改正は、1876(明治9)年に発布された太政官布告で20歳と定められました。それが、民法の改正によって2022(令和2)年4月1日から18歳に引下げられました。これは、実に140年振りのことでした。

なぜ「18歳成人」としたのか

成人年齢は、憲法改正国民投票の投票権年齢や、公職選挙法の選挙権年齢などが18歳と定められたことなどを踏まえ、市民生活に関する基本法である民法においても18歳以上の人を大人として取り扱うのが適当であること、また世界的にも、成年年齢を18歳とするのが主流あることなどの理由で改正されました。

18歳の成人式は3つの自治体だけ

民法では18歳を成人としましたが、18歳を成人の式典に参加させる自治体は、大分県国東市と三重県伊賀市、宮崎県美郷町の3つの市と町にとどまり、ほとんどの自治体が式典の名称を「二十歳のつどい」や「二十歳を祝う会」として、20歳のままです。その理由の一つとして、受験や就職活動のシーズンと重なることなどがあるとみられます。

ご覧いただいたとおり、ハッピーマンデー制度により成人の日は1月第2週の月曜日となりました。また、民法改正によって成人年齢は18歳となりましたが、成人の日の式典は従来通り20歳を対象とする自治体がほとんどです。

いすれにしても、本日成人の日の式典に参加される皆さま、おめでとうございます!

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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