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来年こそ遺言を書くぞ!~パソコンで作成してもOK?縦書き・横書きどちらがよい?

竹内豊行政書士
遺言のイロハをお話しします。(写真:イメージマート)

遺言書を残そうとおもいつつ、今年も残さずに終わってしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、遺言書のイロハについてお話したいと思います。

遺言書は何に何で書けばよいでしょうか。縦書き・横書きの指定はあるのでしょうか。遺言を録音・録画するのも有りのような気がしますが果たしてどうでしょうか。また、書き上げた遺言書は封筒に入れなくてはいけないのでしょうか。

自筆証書遺言は自分で書く

民法は、自筆証書遺言を作成するには、「遺言者が、その全文、日付および氏名を自書し、これに印を押す。」と規定しています。ただし、相続財産の全部または一部の目録(以下「財産目録」といいます)を添付する場合には、その目録については自書する必要はありませんが、その目録の各ページに署名押印しなければならないので注意が必要です。

自分で字が書ける人であれば、遺言者が一人で作成できるので、簡単で費用もほとんどかかりません。しかし、遺言書を管理する者が定められていないため、遺言者の死後おける偽造・変造や隠匿・破棄などのおそれがありますが、法務局に預ける制度を利用すればその危険は回避できます。

紙に書かなくてもよい?

法律は、「遺言書を書くもの」について規定していません。ですから、何に書いても構いません。だからといってホワイトボードに書いたら消せてしまうし押印は難しいでしょう。ですから、ふつうは紙に書きます。

遺言の効力が生ずるのは遺言者が死亡したその時からです。何十年も先のこともあるでしょうから、用紙は変質しないもの、筆記具は字が消えにくいインクを使用したボールペンや万年筆がお勧めです。消せるボールペンや鉛筆では消せてしまうので避けましょう。

縦書き・横書きどっちがよい?

法律は縦書き・横書きの指定をしていません。以前は、「かしこまった文書」ということで縦書きが主流でしたが、ここ数年は横書きが増えています。実際、公正証書遺言も横書きがほとんどです。自分が書きやすい方を選べばよいでしょう。

録音・録画で残してもよい?

自筆証書遺言は、録音や録画は一切認めていません。遺言の内容を読み上げて録音したり読み上げている場面をビデオ等で録画したりしても法的に無効になります。ただし、遺言者本人が間違いなく自分で書いたという「遺言の信ぴょう性を高める目的」として、まず自書した遺言書を残して、次にその遺言書を肉声で録音したり、読み上げている場面を録画して、遺言書とセットで録音テープや録画したりしたものを残すのは有りでしょう。

封筒に入れなくてもよい?

法律は、「書き上げた遺言書を封筒に入れなくてはならない」といった規定を設けていないので、封筒に入れなくてもかまいません。ただし、むき出しのままだと内容を見られたり、見つけた人が自分に都合の悪い内容だったら書き換えられてしまったり破棄されてしまったりするおそれがあります。したがつて、封筒に入れて封印しておいた方がよいでしょう。

以上ご覧いただいたとおり、自筆証書遺言は全文自書が原則です。横書き・縦書きも自由。経年劣化しない紙に消えにくい筆記具で書くこと。録音・録画は法的に無効になるのでNG! 書き上げた遺言書は封印しておいた方が無難です。

遺言を残そうと思いつつ今年も残せなかった方は、来年はぜひチャレンジしてください!

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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