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衝撃!「相続人いない財産」過去最多768億円が国庫へ~どうなる!?相続人がいない相続

竹内豊行政書士
「相続人がいない相続」で768億円もの遺産がが国庫になりました。(写真:イメージマート)

昨年度の相続人がいないために遺産が国に納められた総額が768億円に上ることが報道されました。

去年1年間に日本では150万人以上が亡くなり、世を去りました。
亡くなった人が残した財産のうち、相続人がおらず国庫に納められた金額も増え、昨年度は、記録が残る2013年度以降で最多の768億円。
専門家は「少子高齢化や未婚率の上昇で相続人がいないケースが増えていることが背景にある」としています。

引用:NHK「相続人いない財産」過去最多768億円が国庫へ 昨年度

そこで、相続人がいない場合の相続がどうなるのか考えてみたいと思います。

「ご臨終です」の瞬間に財産は相続人の元へ

死亡した人(死者のことを「被相続人」といいます)の財産は、死の瞬間に原則として法律で決められた範囲の人(「相続人」といいます)へ移転します。

被相続人の配偶者は常に相続人になります。そして、その他の相続人は第1順位から第3順位まで決められていて、先順位の者がいれば後順位の者は相続人になれません。

相続人がいないケースとは

したがって、被相続人に配偶者がなく、相続人となる第1順位の実子も養子もなく、第2順位の実父母・養父母もなく、そして第3順位の兄弟姉妹もいなければ、その被相続人には相続人がいないということになります。相続人がいない被相続人で多いケースは、両親が既に死亡している独身で子どもがいない一人っ子です。

なお、配偶者とは法律婚(役所に婚姻届を届け出て結婚すること)をした者をいいます。事実婚や内縁関係では相続人にはなれません。

相続人がいないと相続財産どうなる?

被相続人に相続人がいない場合、遺言書を残していなければ、相続財産は引き継がせる人がいなくて宙に浮いてしまいます。この場合、家庭裁判所は、被相続人の利害関係人等が請求することによって、被相続人の財産を管理したり負債の清算を行ったりする相続財産管理人を選任します。最高裁判所事務総局が実施した家庭局実情調査によると2022(令和4)年12月31日時点の管理継続中の相続財産管理人選任事件の件数は1万3619件にも登ります。

相続財産管理人が選任されたら、家庭裁判所はまず相続人捜索の公告を行います。それでも相続人の存在が明らかでない場合、被相続人と生計を同じくしていた人・被相続人の療養看護に努めた人・被相続人と特別の縁故のあった人(以上「特別縁故者」といいます)の請求によって、家庭裁判所が相当と認めるときは、相続債権者等への清算後に残った相続財産の全部または一部を分与する制度があります。なお、特別縁故者の請求は、相続人を捜索するための公告で定められた期間の満了後3か月以内にしなければなりません。

そして、特別縁故者に対する財産分与がされなかった場合、相続財産は国庫に帰属し、国のものになります。

遺産を「国のものにしたくない」ならどうする?

冒頭で、「被相続人の財産は、死の瞬間に原則として相続人へ移転する」と書きました。原則があるということは例外があります。

その例外とは、相続人がいない人が「遺言書」を残すということです。被相続人が遺言書を残していれば、国庫に帰属せず、遺言に残したとおりに財産を引き継がせることができるということです。

ご覧いただいたとおり、相続人が存在しないで家庭裁判所が特別縁故者からの請求を認めなければ、最終的に遺産は国庫に帰属してしまいます。相続人がいない人で「遺産を国のものにしたくない!」という人は、遺言書を残しましょう。遺言書を残せば自分の遺産を思うように残すことができるので当然に国のものにはなりません。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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