亡くなった方(「被相続人」といいます)の遺産を分けるには、法律で定められた相続人(「法定相続人」といいます)全員で話し合いをして、「だれがなにをどれだけ」相続するのか決めます(この話し合いを「遺産分割協議」といいます)。

遺産分割協議をするには「相続人の範囲」の証明が必用

遺産分割協議を行うには、だれが法定相続人であるかを確定しなければなりません。そのため、被相続人が「オギャー」と生まれてから、医師から「ご臨終です」と告げられるまで、すなわち「出生から死亡」までの戸籍謄本と相続人の戸籍謄本を集める必要があります。

戸籍謄本の収集で苦労する人

相続関係が複雑になると戸籍謄本の数が必然的に増えます。私が関与した中で一番多かったケースは85通にものぼりました。では、どのようなケースだと一般に戸籍謄本の数が多くなってしまうのかご紹介しましょう。

子のない夫婦の場合

夫婦間に子どもがいないで、なおかつ被相続人の両親が既に死亡している場合、配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。そのため、被相続人の兄弟姉妹の戸籍謄本も集めなければなりません。さらに、既に死亡している兄弟姉妹がいると、その者の子ども、つまり被相続人の甥・姪が相続人に加わってきます(このような甥・姪を代襲相続人といいます)。その結果、代襲相続人の戸籍謄本も集めなければなりません。

被相続人に養子縁組をしている者がいる場合

養子縁組をすると、法的に親子関係が成立します。そのため、被相続人が養子縁組をしていると養親や養子の戸籍謄本も必要になります。

独身で子どももいないで死亡した場合

両親が既に死亡していて、独身で子どももいないで死亡すると、兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹の中に既に死亡している者がいると、その者の子ども(被相続人の甥・姪)が代襲相続人として相続人に加わってきます。

遺産分割協議の最中に相続人が死亡してしまった場合

遺産分割協議をしている途中で相続人が死亡してしまうことも実際あります。この場合、「死亡した相続人の相続人」(「再転相続人」といいます)が相続人に加わってきます。その結果、再転相続人の戸籍謄本も必要になってきます。

以上が相続関係が複雑になる結果、相続人の範囲を証明するための戸籍謄本の通数が多くなってしまう代表事例です。相続関係が複雑になると戸籍謄本を収集するだけで数カ月を要することもめずらしくありません。また、一般的に遺産分割協議に参加する相続人が多くなります。遺産分割協議を成立させるには「相続人全員の合意」が求められます(多数決で決められません)。そのため、協議成立まで日数を要したり、協議不成立で裁判で決するとうことにもなりかねません。

相続関係が複雑になりそうな場合

相続関係が複雑になりそうな方は、遺産分割協議をしないでも遺産を引き継ぐことができるように遺言書を残すことをお勧めします。ただし、自分で書いて残す「自筆証書遺言」の場合、遺言者が死亡して遺言の内容を実現するには、家庭裁判所で検認の申立てを行なう必要があります。実は、検認をするには相続人の範囲を証明する戸籍謄本を家裁に提出しなければなりません。したがって、検認の必用がない、公正証書遺言を残すことを強くお勧めします。