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祝!行政書士合格~合格者に贈る「3つ」のキーワード

竹内豊行政書士
先ほど、行政書士試験の合格者が発表されました。(提供:イメージマート)

本日9時に、行政書士試験研究センターから2021年度の行政書士試験の合格発表がありました。内容は次のとおりです。

出願者数 61,869人(54,847人)

受験者数 47,870人(41,681人)

合格者数 5,353人(4.470人)

合格率  11.18%(10.7%)

合格者平均点 198点(195点)

最年長合格  84歳

最年少合格  14歳

※カッコ内は前年度

合格した皆さま、コロナ禍の受験勉強は大変だったと思います。心よりお祝い申し上げます。そこで、合格した皆さまにエールとして、行政書士歴20余年を振り返って、開業に向けた3つのキーワードを贈らせていただきます。

1.何でもできるは何にもできない

行政書士の業務は、行政書士法に「官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする(ただし、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない)」と規定されています(行政書士法1条の2)。

このように、行政書士の業務範囲は「官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成する」といったように特定されておらず(つまり、分野不特定)、広範におよびます(具体的な業務は、日本行政書士会連合会が公表している「報酬額統計」が参考になります)。

しかし、「行政書士の業務範囲=自分が仕事としてできる業務」と勘違いしてはいけません。「何でもできるは何にもできない」のは世の常。行政書士の広範な業務範囲を仕事として、つまり、依頼者が満足するクオリティの法務サービスを提供できるスーパー行政書士は私の知る限り存在しません。

2.好きこそものの上手なれ

行政書士に相談する方は、「今、自分が抱えている切実な悩みを速やかに解決したい!」と切に願っています。行政書士は、その願いをスピーディーに叶える使命があります。そのためには、当然ですが、専門知識が求められます。専門知識は一朝一夕に習得できません(簡単に習得できるなら、そもそも行政書士は必要ないでしょう)。

では、広範な業務範囲から何を選択すればよいのでしょうか。それは、興味がある分野です。興味があれば、専門知識を得るためのプロセスが楽しくできます。楽しくできればどんどん知識が深化していきます。気が付くと「専門家」と呼ばれるにふさわしいゾーンに到達しています。専門度が高ければ高いほど難易度が高い依頼を解決できるので、満足行く報酬額も手に入れることができます。

反対に好きでもないのに「儲かりそうだから」といった自己中心丸出しの理由で選択すると、専門知識を習得するプロセスが苦痛になります。専門度合いが低いままでは受任することは困難です(相談者はとても勉強してます)。受任できたとしても業務遅滞など発生させて懲戒処分を受けるおそれもあります。

一般に、苦痛なことは夢中になれないので専門家と認められるゾーンに到達するのは容易ではありません。「好きこそものの上手なれ」という諺があるように、「好き」になれそうな分野を専門分野に選択することをお勧めします。

3.「成功の法則」はない

「こうすれば儲かります!」といったような成功に法則性をにおわせる開業に関する本やセミナーを見かけることがありますが、そういうことは残念ながら古今東西ありません。なぜなら「法則」は自然科学の分野のものだからです。

行政書士は、事業を行うために官公署から許可を得なければならない方、会社発展のため優秀な外国人を招へいしたい方、死後に自分の意思を確実に実現したい方、相続の手続を円満に行いたい方など「強い責任」が伴います。当然プレッシャーはありますが、業務を完遂して依頼者から頂く「ありがとう」の言葉は喜びもひとしおです。ぜひ、開業を目指す方は、しっかりと「準備」をして、その喜びを味わってください。その先には、満足行く「行政書士ライフ」が待っているはずです。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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