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小室哲哉さんとKEIKOさんが離婚発表~「婚姻費用の分担」とは、「へそくり」はどうなる?

竹内豊行政書士
KEIKOさんが小室哲哉さんとの離婚調停が成立したことを発表しました。(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

昨日、小室哲哉さんとglobeのKEIKOさんの離婚が成立したという報道がありました。

>2人は02年11月に結婚。昨年10月に一部週刊誌の報道で、20年に入ってから東京家裁に関連書類が提出され、双方ともに弁護士を立て、別居中の費用分担など調停が行われていることが明らかになっていた。

引用:小室哲哉氏とKEIKO離婚発表、病気から9年経て

この記事によると、小室哲哉とKEIKOさんのお二人も別居中の費用分担を含めた離婚調停だったようです。

そこで今回は、夫婦間の「婚姻費用の分担」について考えてみたいと思います。

「婚姻費用分担義務」とは

夫婦には「同居協力義務」があります(民法752条)。

民法752条(同居、協力及び扶助の義務)

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

この義務に対応して、婚姻共同生活から生じる費用は、夫婦各自がその資産・収入その他一切の事情を考慮して分担します(民法760条)。

民法760条(婚姻費用の分担)

夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

婚姻費用の分担方法

具体的に婚姻費用をどのように分担するかは、まずは夫婦間の合意により決められます。その費用は、金銭に限らず、家事労働という現物出資の形でもかまいません。したがつて、たとえば、夫(妻)は生活費を担い妻(夫)は家事をするという役割分担も、婚姻費用分担の方法の一つとなります。

婚姻費用の内容~「へそくり」や「小遣い」はどうなる?

婚姻費用の内容は、夫婦および未成熟子を含む家庭生活を営む上で必要な一切の費用であり、その財産・収入・社会的地位に見合う程度の通常の生活費を意味します。

具体的には、次のような費用が挙げられます。

・衣食住の費用

・医療費

・教養娯楽費

・交際費

・老後の準備(預金や保険)

・未成熟子の養育費と教育費 など

婚姻費用として拠出された財産が余った場合、あるいは貯蓄された場合には、それらは夫婦の共有財産となります。だから、「へそくり」も夫婦共有財産になります。ただし、夫婦間で決めた「小遣い」は、各自が自由に使用できます。

「別居中」の夫婦の婚姻費用分担

婚姻費用分担義務が実際に問題になるのは、夫婦が別居して破たん状態になったり、離婚訴訟をしている場合です。

夫婦間の扶助義務(民法752条)は、「自分と同程度の生活を保障する」という生活保持義務と考えられます。これによると、たとえば夫が生活費を分担している場合、別居中の妻に対して、同居していたときと同じ程度の費用を分担しなければならないことになります。

しかし、同居生活と別居生活では、実際にかかる費用は異なります。もし、別居していても同じ程度の生活費用を負担するとなると、結果的には義務者に過重な負担を強いることになります。そこで、このような事情を考慮した次のような裁判の事例があります。

・相手方の協力がないことにより分担額を減縮する事例

・相手方が正当な理由なく同居を拒んでいることを理由に、婚姻費用分担請求を権利の濫用として認めない事例

・有責配偶者である妻が離婚請求する一方で、離婚手続中の婚姻費用の分担請求した事案で、信義則に照らして許されないとした事例

婚姻費用の具体的分担について、夫婦間の協議が調わない場合は、家庭裁判所の調停・審判によって分担額が決定されます。

以上見てきたように、結婚生活を送るに当り、夫婦は協力し合う義務が生じる。そして、その義務を果たすには結婚生活から生じる費用を分担する義務がある。そして、その費用は必ずしも金銭である必要はないということです。

婚姻費用の分担方法について、ほとんどのご家庭では改めて考えることはないと思いますが、たまに考えててはいかがでしょうか。その際は、「金銭以外」のことも考慮することが大切です。日頃気付かない「プライスレス」なことに実は大きな価値があることに気付くかもしれません。

参考文献:『家族法』(新世社・二宮周平)『新注釈民法(17)』(有斐閣・二宮周平編集)

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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