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貴乃花さんが長男優一さんを「勘当」~「親子の縁」は切ることができるのか

竹内豊行政書士
貴乃花さんが長男優一さんを「勘当した」と明かしたようです。(写真:ロイター/アフロ)

花田一家が家族トラブルに見舞われているという報道がここ最近目につきます。

「事の発端は貴乃花さんが1月にCM発表会のリモート会見で、優一さんのことを“勘当した”ことを明かしたこと。それに不満があったのか、今度は優一さんが『週刊女性』のインタビューに答え、貴乃花さんからモラハラや暴力があったことなどを赤裸々に語ったのです」(ワイドショー関係者)

引用:貴乃花VS花田優一 親子バトルが「財産争いに発展」への懸念

この記事によると、家族トラブルの原因は、どうやら貴乃花さんが長男の優一さんのことを「勘当した」と明らかにしたことにあるようです。

「勘当」とは、一般に、親子の縁を切るということを意味します。そこで、今回は、「勘当」を法的観点から見てみたいと思います。

「実の親子」の縁は切れるのか

親子関係の始まりは通常は子の出生ですが、養子縁組という人為的な親子関係もあります。

解消は、養子の場合は離縁であるが、実親子関係では親子の縁が切れることは原則としてありません。

相続権を失う場合(廃除)はありますが、親子の縁を切るいわゆる「勘当」は法制度としては存在しません。

ただし、特別養子という制度においては、例外的に、実の親子の関係が切れることになります。

そこで、「特別養子」「廃除」の外観を見てみることにしましょう。

「特別養子縁組」とは

特別養子縁組は、縁組の日から実親との親子関係を終了させ、養親との間に実親子と同様の親子関係を成立させる縁組です。

特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとします。

そして、特別養子縁組は、養親となる者の申立てに基づき家庭裁判所の審判により成立します。

特別養子縁組が成立すると、特別養子と、実父母およびその血族との親子関係は、特別縁組成立の日から終了します。親権、扶養、相続権などすべて消滅します。

相続人の「廃除」とは

廃除とは、被相続人(相続される立場の人)からみて自己の財産を相続させるのが妥当でないと思われるような非行や被相続人に対する虐待・侮辱がある場合に、被相続人の意思に基づいてその相続人の相続資格を剝奪する制度です。

民法892条(推定相続人の廃除)

遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

廃除は相続権の剥奪という重大な効果が発生するため、被相続人の恣意(思いつき)で行われることを防ぐ必要があります。

そこで、民法は廃除を行うことができる条件として、被相続人に対する虐待もしくは重大な侮辱または、その他著しい非行がある場合に、被相続人から家庭裁判所に廃除の請求をすることができるとしました。また、遺言によっても廃除の意思を表示することができます。

民法893条(遺言による推定相続人の廃除)

被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

このように、実の親子の縁を切るという「勘当」は、法的には存在しませんが、例外として特別養子縁組によって実の親子の縁を切る制度が設けられています。また、間接的に廃除によって相続の場面で「勘当」に相当する意思を実現する道もあります。

親子といえども別の人格です。当然喧嘩もするでしょう。場合によっては「勘当」という選択肢もあるかもしれませんが、縁あっての親子です。時間がかかっても修復できればよいですね。親子喧嘩はどのご家庭にも多かれ少なかれあると思います。花田一家の親子バトルは当分世間の注目を集めそうです。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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