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案外役立つ「行政書士」~「コロナ支援」にも対応、全国「無料相談」会開催中

竹内豊行政書士
行政書士は「コロナ支援」の活動も行っています。全国で無料相談を開催中です。(写真:アフロ)

「行政書士」と聞いてもどのようなサービスを提供する者かピンとくる人は少ないと思います。そのため、日本行政書士会連合会と各都道府県の行政書士会は、毎年10月を「行政書士制度広報月間」として、全国各地で無料相談を実施するなど行政書士制度の普及活動を行っています。 そこで今回は、私も行政書士の一人として行政書士について紹介したいと思います。

行政書士とは

行政書士とは、行政書士法に基づいて活動する法律系の国家資格者です。そして、行政に関する手続の円滑な実施に寄与することと、国民の利便に資することの二つを目的としています。

行政書士法1条(目的)

この法律は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続

の円滑な実施に寄与し、あわせて、国民の利便に資することを目的とする。

行政書士ができること

行政書士は、主に次の2つの書類に関する相談・作成及び官公署への提出代理を行っています(行政書士法1条の2・1条の3)。

1.行政手続書類~官公署に提出する書類

2.民事書類~権利義務または事実証明に関する書類  

いずれも業務範囲が広いです。業務範囲が広いことが行政書士の特徴といえます。

ただし、他の士業の法律(弁護士法、司法書士法、税理士法、社会保険労務士法等)で制限されている業務はできません。たとえば、行政手続書類業務では、税務申告は税理士、法人や不動産の登記は司法書士の独占業務のため関与できません。また、民事書類業務では、裁判につながる紛争案件は弁護士業務であり関与できません。

行政書士のサービス

行政書士が市民に提供している代表的な業務を紹介します。

1.行政手続書類業務

新規事業を行いたい中小企業や個人事業主に、おもに次の許可取得のための相談・書類作成および官公署への申請代理等の法務サービスを提供しています。

・建設業許可申請

~一定以上の規模の建設業の営業を行うための都道府県庁または国土交通省への許可申請

・風俗営業許可申請

~スナックやバーの営業を行うための警察(公安委員会)への許可申請

・運送業許可申請

~旅客や貨物の運送業の営業を行うための陸運局への許可申請

・入国管理業務

~外国人が日本で就労活動を行ったり日本人と結婚するなどして日本に在留するのに必要な在留資格を取得するための出入国在留管理局への在留資格許可申請

2.民事書類業務

次のような遺言・相続に関する業務が大半を占めています。

・遺言作成業務

~遺言書に関する相談および文案の作成

・相続手続業務

~お亡くなりになった方の遺産の引継ぎに関する「遺産分割協議書」等の書類作成や金融機関の払戻手続の代行等。

その他、契約書の作成なども行っています。

コロナ支援

ここ最近は中小企業者の支援として、持続化給付金、家賃支援給付金など、様々なコロナ支援策の申請書類に関する相談・書類作成にも従事しています。また、GoToトラベルの所轄である観光庁より、地域共通クーポン取扱登録申請について、行政書士による代理申請が実施されています。

コロナ支援策の申請でお困りの方は、お近くの行政書士またはお住まいの都道府県の行政書士会にご相談してみてはいかがでしょうか。

行政書士になるには~3つのルートがある

次の3つのいずれかの条件を満たして日本行政書士会連合会に登録すれば行政書士として活動できます(行政書士法2条・6条)。

条件1.行政書士試験に合格した者 

試験は年に1回毎年11月に全国で実施されます(今年は来月11月8日(日)に開

催)。行政書士試験は、年齢・学歴・国籍等に関係なく受験できます。昨年(令和元年度)の試験結果は次のとおりです(括弧内は前年度比)。

・申込者数:52,386名(+1,460名、+2.9%)

※最年長95歳、最年少12歳

・受験者数:39,821名(+716名、+1.8%)

・合格者数:4,571名(▲397名)

※最年長79歳、最年少15歳

・合格率:11.5%(▲1.2ポイント)

※最年長75歳、最年少18歳

行政書士試験は、きちんと勉強すれば合格できる試験です。また、やり方次第で一発合格も可能です。チャレンジしてみようという方は、一般財団法人行政書士試験研究センターのホームページをご覧ください。

条件2.公務員として20年以上の行政事務を担当した者

国または地方公共団体の公務員等として行政事務等を担当した期間が通算して20年(学校教育法による高等学校を卒業した者等は17年)になる者

条件3.弁護士・弁理士・公認会計士・税理士となる資格を有する者

なお、行政書士の登録者の約7割が試験合格者となっています。

行政書士の登録者数

行政書士の登録者数は49,441名です(令和2年10月1日現在)。ちなみに、税理士は約79,225名(令和2年9月末現在)、弁護士は41,118名(令和元年3月末現在)、司法書士は22,724名(令和2年4月1日現在)です。

そうだ、行政書士に相談しよう!

以上ご覧いただいたとおり、行政書士は広範な業務範囲と権限が付与されている資格ですが、実際はそれぞれ専門分野を持って活動しています。専門外の相談を受けた場合は、相談内容に詳しい行政書士やパートナーの弁護士、司法書士、税理士、社会保険労務士等の他士業をご紹介しています。

もし、自分では解決が困難なお悩みがあれば、まずは行政書士に相談ください。きっと速やかな解決につながるはずです。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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