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7月27日「行政書士試験」申込開始!~「コロナ禍」対策、セカンドキャリア形成の「武器」になる資格

竹内豊行政書士
本日、7月27日午前9時から、令和2年度の行政書士試験の申込が開始します。(写真:アフロ)

7月27日午前9時から、令和2年度の行政書士試験の申込が開始しました。そこで、今回は、行政書士制度と行政書士という資格の「活かし方」をお話したいと思います。

実は、行政書士は試験の難易度と比べて業務の権限が広範に認められている「お得な資格」です。そして、充実したセカンドキャリアを実現する「武器」になる資格です。新型コロナウイルス感染症による先行き不透明な中、「人生100年」をどのように生きていくか模索されている方のご参考になるかもしれません。

令和2年度 行政書士試験の概要

まず、令和2年度の行政書士試験の概要を見てみましょう。

受験資格:年齢、学歴、国籍等に関係なくどなたでも受験できます。

試験内容

1.行政書士の業務に関し必要な法令等(46題)

~憲法、行政法、民法、商法、基礎法学及び法令(択一式及び記述式)

2.行政書士の業務に関連する一般知識等(14題)

~政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解(択一式)

試験基準・難易度

300点満点中、6割以上が合格とされています。

試験日時:令和2年11月8日(日)午後1時~午後4時

試験場所:全国主要都市で受験できます

受験手数料:7,000円

受験願書・試験案内の配布:令和2年7月27日(月)~8月28日(金)

受験申込受付期間

・郵送申込み:令和2年7月27日(月)~8月28日(金)消印有効

・インターネット申込み:令和2年7月27日(月)午前9時~8月25日(火)午後5時

合格発表:令和3年1月27日(水)

令和元年度 行政書士試験の結果

一般財団法人行政書士試験研究センターが今朝発表した、昨年実施された令和元年度の試験結果は次のとおりです※カッコ内は前年度。

受験者数  39,821人(39,105人、前年比+716) ※申込者数 52,386人

合格者数  4,571人(4,968人、前年比▲397)

合格率  11.4%(12.7%、前年比▲1.3)

試験結果TOPICS

・最年長合格者79歳(男性)1名

・最年少合格者15歳(男性)1名

・最年長申込者95歳(男性)1名

・最年少申込者12歳(男性)(女性)各1名

「行政書士」とは

行政書士は法律系の「国家資格」です。しかし、聞いたことはあるけれど、どういう資格かご存知ない方が多いと思います。そこで、行政書士をその「歴史」と「業務内容」からご紹介します。

行政書士の「歴史」

明治の「代書人」が発祥

行政書士は他人の依頼を受け報酬を得て官公署に提出する書類その他権利義務または事実証明に関する書類の作成・相談等を業としています(行政書士法1条の2・1条の3)。そして戦前は、このような業を営む者は代書人と呼ばれていました。

太政官達で「代書人」が初めて登場

この代書人という用語が初めて公的に用いられたのは、明治5年(1872年)8月3日の太政官達(だじょうかんたっし)(注1)「司法職務定制」であったとされています。この「定制」は明治政府が我が国への近代的制度の導入を意図して定めたもので、22章108条からなり、司法省職制、事務章程、裁判所構成、判検事職制等が定められたほか、証書人(現在の公証人)、代書人、代言人(現在の弁護士)についての規定も設けられています。

(注1)明治時代初期に最高官庁として設置された太政官によって公布された法令の形式。

欧米の裁判制度の導入対策

代書人の規定が置かれた理由は、明治政府が欧米の裁判制度を導入した際に、この公正、迅速な運用を図るため、文字、文章を書くことができない者または書式手続に不慣れな人民に代わって代書人に訴状を作成させるものとしたためであるとされています。なお、「定制」では、代書人の資格について特に定めはなされていませんでした(注2)

この司法関係の代書を業とする者は一般に司法代書人と呼ばれ、現在の司法書士につながるものとされていますが、このほかに市区町村役場、警察署等に提出する書類を業とする、いわゆる行政代書人も活動を行っていました。

(注2)現在、行政書士となる資格を有する者は、(1)行政書士試験に合格した者(2)弁護士・弁理士・公認会計士・税理士となる資格を有する者(3)行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して20年以上(高卒者は17年以上)になる者です(行政書士法第2条)。なお、これらの者が、行政書士となるには、日本行政書士会連合会の会則で定める事項の登録を受けなければなりません(行政書士法6条)。

代書人から行政書士へ~悲願の行政書士法の制定

昭和10年代には、行政書士法の制定を求める運動が高まりを見せ、国会においても何度か審議がなされましたが結局廃案となり、第2次大戦の激化とともに運動も中止のやむなきに至ってしまいました。

そして、曲折を経ながら、第10回国会において行政書士法案として議員提案の形で提出されました。この法案は昭和26年(1951年)2月10日に成立し、同月22日に法律第4号として公布されました(同年3月1日施行)。

改正行政書士法が成立~国民により質の高いサービスの提供を目指す

このように、太政官達に「代書人」として初めて公的に用いられてから約150年、行政書士法が成立してから約70年が経ちました。

そして、行政書士制度にとって重要な法改正がなされました。

昨年令和元年11月に「行政書士法の一部を改正する法律」が、第200回国会(臨時会)における衆議院および参議院本会議において、両院とも全会一致の可決により成立しました(施行は、公布の日から1年6か月後)。

この改正により、行政書士法の目的に「国民の権利利益の実現に資すること」が明記されるなど、国民に対するより質の高いサービスの提供が可能となります。本改正について詳しくは、日本行政書士会連合会 会長談話をご覧ください。

行政書士の「業務」~行政書士は何ができるのか

行政書士の業務は、行政書士法に次のとおり規定されています。

行政書士の「目的」

まず、行政書士制度の目的を見てみましょう。行政書士の目的は行政書士法第1条に次のように規定されています。

行政書士法1条

この法律は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与し、あわせて、国民の利便に資することを目的とする。

このように、行政書士の目的は、「行政に関する手続の円滑な実施に寄与すること」のみならず、「国民の利便に資すること」をも目的としています。

行政書士の「業務」

行政書士は、その目的を達成するために、「他人の依頼を受け報酬を得て」以下の業務を業として行うことができます。

1.書類作成業務(行政書士法1条の2第1項)

次の2つの分野の書類を作成することができます。

(1)官公署に提出する書類

~たとえば、建設業、風俗営業、運輸業、外国人の在留資格等の許可申請 等

(2)権利義務または事実証明に関する書類

~たとえば、遺言書、遺産分割協議書、各種契約書の作成 等

2.代理業務(行政書士法1条の3第1項1号・3号)

書類の書類のみならず、依頼者の代理人として官公署に提出することができます(提出代理)。また、契約その他に関する書類を代理人として作成することもできます。

3.相談業務

さらに、前述の書類(官公署に提出する書類および権利義務または事実証明に関する書類)の作成について相談に応ずることも業とします(行政書士法1条の3第1項4号)。

以上のとおり、行政書士は、官公署に提出する書類と権利義務または事実証明に関する書類について作成、提出代理、代理作成そして相談業務に至るまでの広範な業務を行うことができます。このように、業務範囲が広範におよぶことが行政書士の特徴といえます(注)

(注)ただし、以上の業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができません(行政書士法1条の2第2項・1条の3第1項本文ただし書き)。たとえば、訴訟・調停に関して代理人として書類を作成するや登記申請、税務書類の作成に関する業務等が挙げられます。

「コロナ禍」対策、セカンドキャリア形成の「武器」になる資格

以上ご紹介したとおり、行政書士は「法」により広範な業務を認められています。その特長を活かせば、「コロナ禍」への対策や充実したセカンドキャリアを形成する「武器」となります。

自分の「実績」を「仕事」にできる資格~活用方法は「十人十色」

先行きが見えない「コロナ禍」により、企業の多くは早期退職等を打ち出し人員削減を推進する可能性が高くなるおそれがあります。また、中高年の方は、自分のセカンドキャリアについて漠然と不安を抱いている方も少なくないと思います。

そのため、「一人になっても仕事ができる」環境を準備しておくことはあらゆる人に求められてくると考えられます。

中高年の武器は仕事や社会経験から培った「実績」です。その実績を活かして独立を目指している方も少なくないと思います。

しかし、仕事にするにはその相手(顧客)に受け入れてもらわなければなりません。いくら「実績がある」と言っても、すんなり受け入れてもらえるのは実際厳しいでしょう。

行政書士になると、その「実績」を前述の、「権利義務または事実証明に関する書類」作成やそれに関する相談業務として「紐付け」て行政書士業務とすることができます。そうすれば、「法的国家資格」という信用を「武器」に、顧客に受け入れられやすくなり、「実績」を活かした仕事ができる可能性が高くなります。

つまり、「実績」を「仕事」にするために「行政書士」という「国家資格」を活用するという発想です。

具体的には、次のような活用が考えられます。

・金融機関での実績を活かして事業承継のコンサルティングを行う

・公務員としての行政事務の実績を活かして、行政と市民の橋渡しを行う

・海外業務の実績を活かして、海外進出に関するコンサルティングを行う

・福祉に関する実績を活かして、終活のコンサルティングや遺言作成、相続手続業務を行う

・エンターテインメント業界の実績を活かして、エンターテインメントに関する契約や著作権業務を行う

などなど・・・。

活用方法は十人十色です。

今からでも「合格」可能~行政書士は「お得」な資格

行政書士は、法により広範な業務が付与されているにもかかわらず、行政書士試験は、決して簡単な内容ではありませんが、やりようによっては今からでも独学で合格できる試験です。 いわば、お得な資格といえるでしょう。

今回ご紹介したとおり、行政書士は、その広範な業務範囲を活かして、自分の「実績」を「仕事」にできる資格です。しかも定年はありません。興味ある方は、今年の試験にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

なお、行政書士制度について詳しくは、日本行政書士連合会ホームページを、行政書士試験については、一般財団法人行政書士試験センターホームページをご覧ください。

参考文献

『行政書士法コンメンタール 新10版』(兼子仁著・北樹出版)

『詳解 行政書士法 第4次改訂版』(地方自治制度研究会著・ぎょうせい)

『99日で受かる!行政書士試験 最短合格術』(遠田誠貴著・税務経理協会)

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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