「お一人様」の相続を厄介にしないための「防止策」~遺言作成後の「3つの変化」に要注意!

「お一人様」の相続には「遺言書」が大切です。ただし、「残した後」も要注意です。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

一般に、独身で子どもがいない方(以下、「お一人様」といいます)がお亡くなりになると、相続が厄介になります(詳しくは、「お一人様」の相続が厄介になる「2つ」の理由~その「防止策」と「注意点」をご参照ください)。

そして、お一人様が相続をスムーズにするためには、遺言書を残すことが有効な対処策になります(詳しくは、「お一人様」の相続を厄介にしないための「防止策」~遺言を残しても油断大敵!をご査収ください)。

この2つの記事に多くの方に関心を持っていただきました。そこで今回は、お一人様の相続をスムーズにするために、「遺言書を残した後」に注意が必要な点についてご紹介したいと思います。

遺言の効力発生時期

まず、遺言はいつからその効力が発生するのか確認しておきましょう。

遺言は遺言者が死亡したその時から効力が発生します(民法985条)。したがいまして、遺言を作成しても、遺言者が生きている間(死亡するまで)は、その内容は法的効力を有しません。

民法985条(遺言の効力の発生時期)

遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。

遺言作成後の「3つの変化」に要注意!

一般的に、遺言を作成してから遺言の効力が発生するまで、つまり、遺言者が死亡するまでには、一定期間がかかります。

その点が、死を覚悟して残す「遺書」とは違います。「遺言は縁起が悪い」とお考えの方は、遺言と遺書を混同しているケースが多いようです。

そのため、遺言作成時から死亡までの間に、状況が変化してしまうことがめずらしくありません。そして、その変化を遺言に反映させずに、そのままにしておくと、相続を厄介にしてしまうことがよくあります。

では、具体的にどのような変化があるのか見てみましょう。その変化は、次の3つが挙げられます。

その1.「人」の変化

財産を遺そうと思っていた者に次のような、変化が起きて、遺言作成時と状況が変わってしまった。

相続人が先に死亡してしまった

遺言の作成後に、自分より先に相続人が死亡してしまった。そのため、相続関係が変わってしまった。

受遺者の死亡

遺言書に、「財産を承継させるとした人」(=受遺者)が、自分より先に死亡してしまった。そのため、その者に残すはずだった財産が宙に浮いてしまった。

なお、その場合、その財産は、相続人全員の協議(=遺産分割協議)で承継者を決めることになります。

人間関係の変化

遺言作成後に、遺言書に「財産を承継させる」とした者と、関係が悪化してしまい、「財産を遺してやりたくない」と思うようになった。

その2.「財産」の変化

遺言作成後に、次のような状況が生じて、財産の内容が変わってしまった。

財産が減った

遺言書で、ある者に承継させるとしていた財産を売却した。たとえば、施設に入居するための資金として住居を売却した場合など。

財産が増えた

相続財産を取得したり、宝くじに当せんしたなど、遺言作成時には予期しなった財産が転がり込んできた。

その3.「遺言執行者」の変化

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有している者です(民法1012条1項)

民法1012条1項(遺言執行者の権利義務)

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

遺言執行者を遺言書に記すことは、遺言の成立要件ではありませんが、遺言執行者が記されていないと、遺言の執行手続きに何かと不便を来します。その遺言執行者に次のような変化があると、遺言の執行が滞ってしまうなど不都合が生じてしまいます。

病気や死亡

遺言執行者が病気になってしまったり、自分より先に死亡してしまって、遺言執行が不可能となってしまった。そのため、遺言執行者が不在となってしまった。

廃業してしまった

遺言執行者に、法律専門職を指定したが、その者が廃業してしまった。

遺言は作成し直すことができる

遺言者の最終意思を尊重するために、遺言者は、自らの死亡によって残した遺言書の効力が生じるまで遺言を自由に撤回することができます(民法1022条)。つまり、遺言は何度でも作成し直すことができます。

民法1022条(遺言の撤回)

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

遺言作成後に、今回ご紹介した「人」「財産」「遺言執行者」の3つの変化があったときは、自分の死後に、残した遺言書が原因で、相続でもめる危険が高くなります。

そのようなもめ事を回避するために、遺言書を作成した後に、「3つの変化」が起きた場合は、状況に合った遺言を作成し直しましょう。

遺言の目的は、「残すこと」ではありません。「内容を実現すること」です。このことをぜひお忘れなく!