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「子連れ再婚」と「養子縁組」~「連れ子」と「再婚相手」が養子縁組をするとどうなるのか

竹内豊行政書士
「連れ子」と「再婚相手」が養子縁組をすることで発生する法的効果をみてみましょう。(写真:アフロ)

先月末に第3子の妊娠を公表したばかりのタレント、小倉優子(36)さんが、再婚2年目の歯科医の夫(46)と別居していることが10日報道されました。夫はわが子の妊娠を知りながらも昨年暮れに単身、家を出て離婚を要求。突然の事態に身重の小倉さんは途方に暮れつつ、「やり直したい」と涙を絞る日々が続いているそうです。

まさかの事態に、小倉さんはメールで何度も夫に連絡。ところが今年1月、夫から弁護士を通じて届いたのは、離婚と2人の息子との養子縁組解消を求める書類でした。仰天した小倉は自分の態度を謝る内容のメールを送り先月中旬、夫の弁護士同席で会ったようです(以上引用「小倉優子が離婚危機「やり直したい」と涙 歯科医の夫がクリスマス直前に家出」)。

そこで、今回は、小倉さんが夫から弁護士を通じて届いた書類に書かれてあった「養子縁組」について考えてみることにしましょう。

「養子縁組制度」とは

養子縁組は、人為的に親子関係を創設する制度です。日本の養子制度は、主に次の3つのいずれかを目的として行われています。

1.後継ぎや扶養を目的とする「成年養子」

2.家族関係を安定させることを目的とする「連れ子養子」や相続をみこした「孫養子」

3.要保護児童のための養子

そのほとんどが「成年養子」「連れ子養子」「孫養子」で占められ、要保護児童のための養子は例外的です。そして、小倉さんの場合は、実子を再婚相手と法的な親子関係を発生させることを主な目的として行う「連れ子養子」に該当します。

養子縁組の成立要件

養子縁組は、養親となるべき者と養子となるべき者との合意に基づく「養子縁組届」が受理されることによって成立します(民法799条)。

未成年養子縁組

養子となる者が15歳未満のときは、その法定代理人がこれに代わって縁組の承諾をすることができます(民法797条1項)。これを「代諾縁組」といいます。

民法797条1項(15歳未満の者を養子とする縁組)

1 養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。

2 法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない。養子となる者の父母で親権を停止されているものがあるときも、同様とする。

養子縁組の効力

養子縁組が成立すると、次のような法的効力が発生します。

養親の「嫡出子」としての身分を取得する

養子は、縁組成立の日から、養親の嫡出子としての身分を取得します(民法809条)。

嫡出子とは、妻が婚姻中に妊娠した子および妻が婚姻後に出生した子のことをいいいます。

ただし、子が養子縁組をしても実親との関係は切れることはありません。したがって、養親と実親との「二重の親子関係」が成立します。この結果、相続権は、養親子相互、実親子相互の2系統に発生します。

未成年養子縁組の親権

未成年養子縁組の親権については、養親の親権に服します(民法818条2項)。

民法818条(親権者)

1 成年に達しない子は、父母の親権に服する。

2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。

3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

養親の氏を称する

氏については、養子は養親の氏を称します(民法810条)。

民法810条(養子の氏)

養子は、養親の氏を称する。ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。

「法定血族関係」が発生する

養子は縁組の日から、養親および養親の血族との間に、血族間におけるのと同一の親族関係が生じます(民法727条)。これを法定血族関係といいます。

民法727条(縁組による親族関係の発生)

養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。

縁組の解消~協議離縁

縁組は両当事者の合意によって解消することができます(民法811条1項)。協議離婚と同様、届出によって離縁は成立します。

代諾縁組の場合で、養子が15歳未満のときは、協議離縁は、養親と、離縁後に養子の法定代理人となるべき者の間で行われます(同条2項)。

民法811条(協議上の離縁等)

1 縁組の当事者は、その協議で、離縁をすることができる。

2 養子が十五歳未満であるときは、その離縁は、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする。

以上ご紹介したとおり、養子縁組は、再婚したときに未成年である連れ子を相手方配偶者と法的に親子関係を成立させるために行われます。その真の目的は「家族関係の安定」です。このことを忘れずに、法的な側面だけではなく、実質的な親子関係の構築に努めることが望まれます。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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