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「離婚」で後悔しないための「心得」と「知識」

竹内豊行政書士
「協議離婚」で後悔しないために、知っておきたい「心得」と「知識」をご紹介します。(写真:アフロ)

結婚生活に不仲は起こりうるし、円満な夫婦生活に回復するように努力を強いることが不可能なことも当然あります。

破綻した、形式だけの婚姻は、婚姻外の性的関係(いわゆる「不倫」)を生むこともありうるなど婚姻の価値を否定することにもなりかねません。

破綻した婚姻から当事者を開放し、再婚や自立の自由を保障することが、民法が掲げる離婚の第一の目的です。

2つの離婚

そこで、民法は、夫婦の間に離婚の合意がまとまり、それを戸籍法の定めるところに従い届け出ることによって成立する協議離婚(民法763条)と民法の定める一定の離婚原因がある場合に離婚の訴えが認められ、判決によって成立する裁判離婚(民法770条)の二つの離婚を定めています。

763条(協議上の離婚)

夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。

770条(裁判上の離婚)

1夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

2裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

協議離婚~9割が当事者の協議で離婚する

日本では、離婚の内、協議離婚は約90%を占めます。協議離婚は、離婚問題を当事者の自主的解決にゆだねます。離婚に対する国の介入を許さない点で、家族のプライバシーを守ることができる制度であるといえます。

協議離婚の前提条件

協議離婚は当事者同士の話合いで解決を模索するため、当事者の対等性や離婚後のことに関して話し合えるだけの理性が双方にあることが前提条件となります。

協議離婚の問題点

協議離婚は、市区町村役場の戸籍係に離婚届を届け出ることによって成立します。しかし、戸籍係には実質的審査権はありません。そのため、当事者双方の離婚意思を確認する手段がないため、一方的な離婚の届出がされてしまうこがあります。

また、夫婦や親子関係の調整を十分につけず、特に財産分与子の養育費離婚後の親子の交流についての協議が不十分なまま、離婚届を届け出てしまうケースが多く見受けられます。そのため、離婚後の特に妻の生活と子の福祉が十分に守れない結果を多く生み出しています。

不受理申出制度

そこで、本人の意思に基づかず、一方的に不当な離婚を防止する制度として、離婚届などの不受理申出制度があります(戸籍法27条の2第3項~5項)。不受理申出後、申出をした本人が窓口に来たことが確認できなかったときは離婚届等の届出は受理されません。不受理申出制度の概要は次のとおりです。

対象となる届出

対象となる届出は、次の5つです。

・認知届

・養子縁組届

・協議離縁届

・婚姻届

・協議離婚届

届出(申請)する人・できる人

・認知届の場合:認知者(父)

・養子縁組届・協議離縁届の場合:養親および養子(養子が15歳未満のときは法定代理人)

・婚姻届・協議離婚届の場合:夫および妻

届出窓口

申出人の本籍地または所在地(住所地)

必要なもの

・届出人の印鑑

・本人確認書類

 ~運転免許証等の公的機関の発行した顔写真が貼付された有効期限の定めがある書類でない場合は、2点以上の書類の提示が必要になる場合があります。

申出の対象となる期間

期間の定めはなく、不受理申出は取下げられるまで継続されます。

※制度を利用する際は、届け出る窓口に事前に必要書類等をご確認することをお勧めします。

もし、お互いに十分な話し合いがなさない内に、相手側から一方的に離婚届が届出されてしまうおそれがある場合は、不受理申出制度の利用も検討してみてはいかがでしょうか。

協議離婚は役所に離婚届を届け出さえしてしまえば、簡単に成立してしまいます。しかし、協議離婚の「協議」とは、「話し合って決めること、またその話し合い」を意味します。

もし、協議離婚を検討しなければならない局面を迎えたら、「離婚する・しない」だけではなく、離婚後の人生も視野に入れた十分な協議を踏まえてから判断を下すことが肝要ではないでしょうか。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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