Yahoo!ニュース

「平成」から「令和」へ、「18歳成人」誕生、「相続」がガラッと変わる

竹内豊行政書士
平成から令和に引き継がれる家族に関する二つの法律をご紹介します。(写真:アフロ)

今日、4月30日で平成が幕を閉じます。そして、明日5月1日5月1日午前0時に皇太子さまが新天皇に即位し、元号が令和に改まります。

そこで、平成に成立して令和から施行(=スタート)する家族に関する法律をふたつご紹介します。これらは家族の形に影響を与えるものです。ご一読して頭の隅に留めておいてください。

18歳成人

若者の自立を促し、社会の活性化につなげることを狙いとした成人年齢を20歳から18歳に引き下げる改正民法が平成30(2018)年6月13日に成立しました。

成人年齢は、1876(明治9)年に発布された太政官布告で20歳と定められました。今回の改正は実に140年振りです。

民法の定める成年年齢は、単独で契約を締結することができる年齢という意味と、親権に服することがなくなる年齢という意味を持ちます。この改正は社会に大きなインパクトを与えるものです。

成人年齢の引き下げで変わること、変わらないことの主な内容は次のとおりです。

20歳から18歳に引下げ

・18歳でも親の同意なしに携帯電話やローンなどの契約ができる

・法定代理人抜きで民事裁判を起こせる

・「5年有効」のパスポートだけでなく、「10年有効」も取得できる など

16歳から18歳へ引き上げ

結婚できる年齢が現行の「男性18歳以上、女性16歳以上」から「男女とも18歳以上」に統一さる。

「20歳から」を維持

・飲酒・喫煙は健康への影響を考慮し、20歳位未満は禁止

・競馬や競輪などのギャンブルは「非行につながりかねない」として、20歳未満は禁止

「18歳成人」の第一期は現在中学3年

令和4(2022)年4月1日から「18歳成人」が施行(=スタート)します。したがって、「18歳成人」の第一期は現在中学3年となります。

相続法改正

平成30(2018)年7月6日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)が成立しました(同年7月13日公布)。

この改正の主な目的は、社会の高齢化の進展による相続開始時における高齢の配偶者(主に夫に先立たれた妻)の保護です。主な改正点は次のとおりです。

配偶者の居住権を保護するための方策

配偶者の居住権保護のための方策は,大別すると,遺産分割が終了するまでの間といった比較的短期間に限りこれを保護する方策(配偶者短期居住権)と配偶者がある程度長期間その居住建物を使用することができるようにするための方策(配偶者居住権)とに分かれています。

配偶者短期居住権

配偶者は、相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には、遺産分割によりその建物の帰属が確定するまでの間又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間、引き続き無償 でその建物を使用することがでるようになります。

 

配偶者居住権

配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者にその使用または収益を認めることを内容とする法定の権利を新設しました。そして、遺産分割における選択肢の一つとして、配偶者に配偶者居住権を取得させることができることとしました。この配偶者居住権は、被相続人が遺言によって配偶者に取得させることもできます。

以上、これら配偶者の居住権を保護するための方策は、令和2年(2020)年4月1日に施行されます。

遺産分割に関する見直し等

配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)

婚姻期間が20年以上の夫婦の一方配偶者が、他方配偶者に対してその居住用建物またはその敷地(居住用不動産)を遺贈または贈与した場合については、遺産分割においては,原則として当該居住用不動産の持戻し計算を不要としました。これにより、当該居住用不動産の価額を特別受益として扱わずに計算をすることができるようになります。

遺産分割前の払戻し制度の創設

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち、各口座ごとに以下の計算式で求められる額(ただし、同一の 金融機関に対する権利行使は,法務省令で定める額(150万円)を限度とする)までについては,他の共同相続人の同意がなくても単独で払戻しをすることができるようになります。

【計算式】

単独で払戻しをすることができる額=(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)

この制度によって、被相続人の医療費の清算や葬儀費用などの火急の出費に、遺産分割が成立する前でも、被相続人の預貯金を払戻して充てることができるようになります。

この遺産分割前の払戻し制度は、令和元年(2019)年7月1日に施行されます。

遺言制度に関する見直し

自筆証書遺言の方式緩和

全文の自書を要求している現行の自筆証書遺言の方式を緩和し,自筆証書遺言に添付する財産目録については自書でなくてもよいものとする。ただし,財産目録の各頁に署名押印することを要する。

この自筆証書遺言の方式を緩和する方策は、平成31(2019)年1月13日に施行されました。

相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

たとえば、義理の親の看護をした長男の嫁など、相続人以外の被相続人の親族が,無償で被相続人の療養看護等を行った場合には,一定の要件の下で,相続人に対して金銭請求をすることができるようにしました。

この、相続人以外の者の貢献を考慮するための方策は、令和元年(2019)年7月1日に施行されます。

このふたつの民法改正によって家族のカタチは大きく変わります。令和を家族にとってよい時代にするためにも、この改正を上手に活用したいですね。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

竹内豊の最近の記事