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相手が未婚なら「知らんフリン」で逃げ切れるか!?

竹内豊行政書士
相手が未婚なら「知らんフリン(不倫)」で済ませられるでしょうか。(写真:アフロ)

ヤフーニュースに、世界遺産「薬師寺」の管主の方が不倫が原因で辞任された記事が掲載されていました(辞任「薬師寺トップ」一問一答 取材に “不倫というのは何でしょう…”

そこに、週刊誌の記者の方と管主の方との次のようなやり取りが書かれていました。

>――ご自身が結婚されていて、女性と男女関係を結んだら、不倫と言いますね。

と記者が念押しをしたのに対して管主の方は次のように答えられました。

>ああ、そうか私が(結婚をしている)ね。それを不倫と言うのね。「個人的なお付き合いで来ていた」と思ってたもんですから、愛人だとか不倫だとかそういう風に一度も思ったことはないんですけど。認識が甘かったなと。

さて、相手が未婚であれば「不倫ではない」、すなわち貞操義務に反していないと逃げ切れるのでしょうか。

結婚した時点で貞操義務を負う

民法は次の3つの条文で、結婚した夫婦に貞操義務(夫又は妻以外との性的関係の禁止)を課しています。

1. 重婚禁止(732条)

配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

2.「同居」「協力」「扶助」の義務(752条)

 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

2. 不貞行為が離婚原因になる(770条1項1号)

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

したがって、自分が既婚者である以上「相手が未婚だから不倫ではない(貞操義務違反でない)」という論法は成立しません。

不倫は社会的制裁を伴う

貞操義務違反は、プライベートな問題ですが倫理的な問題と密接不可分のためこのように社会的制裁を伴う場合があります。

貞操義務違反の代償は家庭の崩壊、慰謝料など法的ペナルティーの他、仕事への影響や社会的地位からの辞任など公私共に大きいです。

・法的・倫理的両面で、結婚したら不倫はノー

・相手が未婚でも「知らんフリン」では済まされない

これから結婚する方、特に既婚者の方は胸に刻んでおきましょう。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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