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ネットでの告白 中学女子60%がOK? 神戸市の中学生が独自に調査

竹内和雄兵庫県立大学環境人間学部准教授
(ペイレスイメージズ/アフロ)

神戸市の中学生が調査

 神戸市の中学生が6月、市全域で行ったネットに関する独自の意識調査(6700人対象)で、驚きの結果が出ました。調査によると、中学生はネットでの告白にあまり抵抗がないというのです。調査項目は神戸市立上野中学校、同義務教育学校港島学園、同兵庫中学校、同西代中学校の生徒会執行部が作成しただけあり、とても興味深い結果となりました。一部をここでご紹介します。

ネットは現実の一部

 「大人はよく『現実かネットか』と言うけど、僕たち中学生には、ネットは現実の一部。実際の会話もLINEのやりとりも、そんなに違いはない。どちらも僕たちのリアルな日常」。調査内容検討時の中学生の言葉です。

 私たち大人にとっては、現実世界がまずあって、ネット上のやりとりはあくまで補助的です。しかし、彼らはそうではないと言うのです。

「例えば、ネットで告白も僕はOKです」

 これには同席した大人の多くが驚きました。私は全国各地のスマホサミット等で中学生とよく接しているので、たいていのことには驚きませんが、彼の発言に驚愕しました。別の機会に彼らに聞いてみました。

私「告白は、目を見て、でしょ?」

男子A「LINEの方が伝えやすい」

女子A「たしかに伝えやすい」

女子B「私は直接しか絶対いや」

男子B「断られたとき、『冗談だよ』って逃げやすい」

女子B「嘘告(うそこく)が怖い」

女子A「LINEの方が素直になれるかも」

一同「う~ん」

 嘘告とは、「嘘の告白」の省略形で、罰ゲームとかで嘘で告白させられることを指すのだそうです。私たち大人は誰も知りませんでしたが、中学生は全員「嘘告、さいてー」等、盛り上がっていました。

調査結果

 こういうやりとりを経て、神戸市全域の約6700人対象にアンケート調査を実施しました。アンケートには生活実態やネットの使用状況を問う質問があり、神戸市教委が全面協力。私の研究室が分析を担当することになりました。また、「告白」については、中学生が「大人と比較したい」と強く希望したので、神戸市役所の職員の方々もアンケートに協力してくださることになりました。

 「告白」についての調査結果では、中学生と大人の違いが鮮明にあらわれました。特に女性での違いが驚きでした。

中学女子60%がOK!

 「ネットで告白、OK」とこたえたのは、成人女性4.5%に対して、中学女子22.9%でした。中学女子は成人女性の約5倍がOKという結果です。22.9%は、「1.絶対イヤ」「2.相手によっては良い」「3.良い」の3択で、「3.良い」を選んだ割合です。「2.相手によっては良い」を含むと実に60.0%が肯定的な回答をしています。

 私たち昭和男性にはもちろん驚愕の数字ですが、分析を手伝ってくれた大学生諸君も口々に「理解できない」「世代の違いかなぁ」と驚きを口にしていました。驚くスピードで時代が変わっていっているのでしょう。

大人は心すべき

 子どもたちの変化は予想以上に急激です。その一端が今回の調査からわかりました。私たち大人は、心して子どもたちに接するべきでしょう。

 私はこれまで、いろいろな場面で子どもたちにスマホの使い方等を話してきました。今回の調査結果を目の当たりにし、冷や汗が出ます。

もしかして、自分の(昭和の)感覚を子どもたちに押しつけてきたのかもしれません。

 大人になってから携帯電話を使い出した私たち大人は、どれだけ頑張っても、産まれたときからネットに囲まれている「ネットネイティブ」の感覚は理解できません。だからこそ、子どもたちと一緒に考えていく必要があります。

 子どもたちはネットには詳しいですが、まだ子どもなので社会の常識を知りません。大人は長く生きてきたぶんだけ常識がありますが、ネットには疎いです。

 ですから、大人と子どもが一緒に「ネットの常識」を作っていかなければなりません。

今週末、中学生が登壇!

 この調査をしてくれた中学生たちが今週末のフォーラムで登壇します。私がパネルディスカッションのコーディネーターを担当し、中学生自身が分析内容等についての意見を聞かせてくれます。ここには、市長やヤフーの方も参加することになっており、世代を超えた有意義な議論が期待されます。

 中学生は、アンケート結果を7月24日に神戸市全中学校の生徒会執行部員が集まる「いきいき生徒会」の場で議論し、「神戸市スマホ三ヶ条」等を策定するなど、対策を考えました。フォーラムでは、今回の調査結果についての詳細を、自分たちの意見を含めて発表してくれることになっています。さらに、三ヶ条を広めるために、啓発動画を作成し、その発表もしてくれます。

啓発動画撮影中
啓発動画撮影中

神戸市スマホフォーラム

日時 2017年8月27日(日)

   13:00~16:00

場所 兵庫県農業会館大ホール

内容 1.アンケート結果発表

   2.神戸市スマホ三ヶ条発表

   3.啓発動画発表

   4.パネルディスカッション 等

神戸市スマホフォーラム

 フォーラムでは、中学生諸君の生の声をできるだけ多く引き出したいと思っています。その上で、これから私たちは、ネットについてどう考え、どういう対策をしていけば良いか、会場全体で考えたいです。

 まだ席に余裕があるようです。興味のある方は、ぜひ!

兵庫県立大学環境人間学部准教授

公立中学校で20年生徒指導主事等を担当(途中、小学校兼務)。市教委指導主事を経て2012年より現職。生徒指導を専門とし、ネット問題、いじめ、不登校等、「困っている子ども」への対応方法について研究している。文部科学省、総務省等で、子どもとネット問題等についての委員を歴任している。2013年ウィーン大学客員研究員。教育学博士。

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