新しい20ドル紙幣を、黒人女性の肖像が飾ることはご存じだろうか。彼女はハリエット・タブマン氏。「自由の国・アメリカ」が掲げるべきシンボルでもある。

 ハリエット・タブマンは、1822年にメリーランド州で奴隷として生まれた。アフリカで拉致され米国に連れてこられ奴隷となった女性の孫にあたる。タブマンには8人の兄弟がいたが、人身売買によって家族は離散。子守の役を割り当てられたときも、赤ん坊が起きるたびに奴隷主から鞭でうたれた。そうした暴行の傷跡も残っており、特に、頭部を鈍器で殴打されたことによる後遺症に生涯苦しんだという。

 1849年、27歳のとき、北部のペンシルベニア州フィラデルフィアへの脱出に成功する。以降、奴隷救出をミッションとする組織「地下鉄道(Underground Railroad)」の活動に13回参加し、約70名の奴隷を救出した。南北戦争にも従軍し、700名の奴隷救出を助け、その実績によって後年には軍人恩給も受けている。

ハリエット・タブマンの像(Jane DeDecker制作)。「地下鉄道」の救出作戦にも命を懸けて13回参加し、南部から多くの奴隷を助け出した。
ハリエット・タブマンの像(Jane DeDecker制作)。「地下鉄道」の救出作戦にも命を懸けて13回参加し、南部から多くの奴隷を助け出した。

 タブマンの肖像を20ドル紙幣に使用することは、2016年のオバマ政権のときに決定されており、女性の参政権獲得100周年となる2020年に、タブマンの新20ドル紙幣が発行されることになっていた。タブマンは、奴隷解放だけでなく、晩年は女性の地位向上と参政権獲得も目指しており、その肖像を採用することは、奴隷制という負の遺産の清算を目指す「自由の国・アメリカ」を象徴する決定であったはずだ。

 ところが、そうしたメッセージの重要性を理解できなかったトランプ大統領は「ただの”ポリコレ”だ」とコメントし、その計画を延期していた。

 バイデン政権の報道官Jen Psakiは、1月25日の会見で、タブマン20ドル紙幣についての記者からの質問に答え、「私たちの紙幣が、この国の歴史とダイバーシティを表すことは重要です。特に、ハリエット・タブマンの肖像が新しい20ドル紙幣を飾ることはそうしたことの象徴でしょう」と述べ、計画を進めることを確認した。

ハリエット・タブマンの活躍を描いた映画『ハリエット』が2019年に公開されている(日本公開は2020年)。