コロナ対応で問題続出の愛知県、報道の現場でも起きている重大問題

愛知県の新型コロナ対策本部会議であいさつする大村知事(5月4日、筆者撮影)

 愛知県の新型コロナウイルス患者の個人情報が、県のホームページに一時、誤掲載されていた。

 新型コロナウイルス感染症ページへの患者に関する非公開情報の掲載について(愛知県発表)

 同県では4月にも、PCR検査で24人を誤って陽性と判定して発表、後に陰性だったと訂正した問題があった。

 新型コロナウイルス感染症の検査結果の誤りについて(愛知県発表)

 私の知る限り、愛知県の職員は皆マジメだ。全体としてはコロナの感染者増を抑え込み、医療体制も確保している。一方で長丁場のコロナ対応に疲弊した職員の顔を見ることも多くなった。これはどこの自治体でもそうであろう。ミスはミスとして、個人を過度に責め立てる気はしない。

 ただ、ちょうど誤掲載の前日、私も報道をめぐり愛知県の深刻な問題に直面していた。現在の県庁組織の体質につながると思わざるを得ないため、詳細を記しておきたい。

「生」認められない会議や会見

 私はあくまでフリーランスだが、昨年からは代表を務める一般社団法人としてヤフー(THE PAGE)の生中継なども担当している。ただし、本稿は法人やヤフーとは切り離して、(ヤフーニュース「個人」のプラットフォームは借りるが)個人の責任で書くものである。

 愛知県は4月、県独自の緊急事態宣言を出す際、県庁内で新型コロナウイルス感染症対策本部会議を開催。終了後に大村秀章知事は記者会見を開いて外出自粛などを県民に呼び掛けた。私は、その会議と会見の生中継を希望したが、県側からはいずれも「生中継は認められない。録画(会議や会見終了後の配信)までにしてほしい」とされた。それは「記者クラブ加盟社を含めたすべてのメディアに同様にお願いしている」とも言われた。

 私は個人的に納得できない思いを伝えたが、その日は時間もなかったため「生NG」の要請を受け入れた。

 そして5月4日夜、政府の緊急事態宣言延長を受け、愛知県でも再び対策本部会議が開かれる運びになった。私はその数日前から、今回は「生」で中継させてほしいと県の広報に伝えていた。すでに東京都と大阪府はもちろん、埼玉県や神奈川県、兵庫県などでも知事会見や対策本部会議の生中継が認められているからだ。録画配信では視聴者に見始めてもらえる時間が遅れ、会議がいつ終わるか分からないので配信の告知ができないという事情もある。しかし、今回も愛知県は「生NG」だった。

 その理由について聞くと、対策本部会議を担当する健康対策課は「普段から広報が担当する大村知事の臨時会見で生中継は認められていないから」だと説明した。一方の広報広聴課からは明確な理由を聞かされず、とにかくそういうものだと「理解してほしい」と言われる。しかし、全メディアに生中継という報道の手段を制限するのは、もはや我々だけの問題ではない。私は記者クラブの幹事社にも相談した上で、これは知事に直接聞くしかないと腹をくくった。

 対策本部会議自体は、用意された提案の読み上げと確認、各部局からの報告で終わる。それこそ個人情報が飛び出すような場ではない。30分ほどのその会議を、私の法人メンバーであるカメラマンに業務用ムービーカメラで録画してもらった。そして場面を変えて知事の会見が始まる。今回、なぜか大村知事は先月のような「臨時会見」としてではなく「ぶら下がり」として対応するのだという。

「ぶら下がり」での質問

 「ぶら下がり」とは、取材対象者を廊下などで呼び止め、記者たちが取り囲んで話を聞く取材形式。安倍首相が官邸のロビーなどで立ちながら取材に応じているあれだ。原則、オフィシャルではないので公式の記録は取られず、記者クラブ限定などの“しばり”もない。定例会見をフルオープンにしていないクラブ側からは、フリーとして首長に話を聞きたいなら「ぶら下がりの場でしてほしい。それは止めることはない」と言われることが通例で、私も大村知事や名古屋市の河村たかし市長を正式会見後に呼び止めて質問をぶつけたことが何度もある。

 ただ、ぶら下がりは必然的に「密」になるので、今、文字通りの形でやるわけにはいかない。案の定、今回は直前の会議のラウンド型テーブルを残し、県職員らの代わりに各記者が座って知事を囲む形になった。だが、ぶら下がりはぶら下がりだ。私はカメラマンにそのまま録画を続けるよう頼んで席につき、各社の質問がひと通り終わったのを見計らい、手を挙げて質問をした。ちなみに私が大村知事に質問をするのは、2011年の知事選初当選時や東日本大震災発生時、昨年のあいちトリエンナーレ開催時などがあり、これが初めてではない。

 「フリーランスの関口で、今はヤフーの中継も担当しています。こうした宣言後の臨時会見や対策本部会議などで生中継、ライブ配信が県からメディアに認められていません。東京、大阪の知事がリアルタイムで発信される中で、知事はどう思われているのでしょうか」

 これに対して知事は「これ、いいんですか? 質問受けて?」と広報に確認。私は「ぶら下がりと聞いてますので」と念を押し、広報は困ったように「幹事社さんは大丈夫ですか…」と幹事社に振った。幹事各社からは異論が出なかったので、知事は答えることになった。「これは、そのつど、記者クラブの皆さんと相談しながらやっているということです」と一言。私は「報道の自由や表現の自由にも関わる問題なので…」と続けたが、知事は「そういうことを今言い出すと…他の皆さんもいらっしゃるので。通常の定例会見はさせていただいて、こういう形での会見はまた準備がありますので…そういうことで、ご意見は伺ったということにさせていただきます」と手のひらをかざして遮った。会見は最後にもう一社が質問をして、合計20分足らずで終わった。

県側から驚きの指示

 一応の回答は得たが、なぜここで県民に対してではなく、記者クラブとの持ちつ持たれつの関係が出てくるのか、理解に苦しむ。記者会見のあり方やトップの発信のあり方については、首相会見で明らかなように、コロナ禍の今だからこそ問われているのではないか。そんな思いが頭をめぐった。しかし、驚いたのはその直後だ。私が席を立とうとするやいなや、県の広報が詰め寄ってきて、こう言った。

 「今のような質問は困る。今回は“記者クラブからの要請を受けてのぶら下がり”なので、知事も加盟社以外から質問をされるとは思っていなかった。配信をする際は、今の質問の部分をカットしてほしい」

 「生」の報道を制限し、中身について公表前に削除を求めるーー。これを検閲と呼ばずして何と言うのだろうか。担当者とはその場で議論になったが、それこそ簡単に結論の出る話、出していい話ではない。私は広報との事前のコミュニケーション不足の非も認めながら、その場を引き取った。ヤフーTHE PAGE側とも相談をしてぶら下がりの映像全体を出すのは保留し、私「個人」の判断で書いているのが本稿だ。

 繰り返すが、私は県職員個人を責めるつもりはない。ただ、こうした排他的、硬直的な組織体質は、愛知県庁全体をますます覆い、職員を追い詰めることになっていないのだろうか。それを県民の一人として、問題提起しておきたい。