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「骨太方針2021」でGDPやSNSとともに語義説明なしで登場した“PB”。皆知ってる言葉になった?

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
「骨太方針2021」を取りまとめた経済財政諮問会議を担当する西村康稔経済財政相(写真:ロイター/アフロ)

6月18日に閣議決定された「骨太方針2021」、正式名称「経済財政運営と改革の基本方針2021」。副題には、日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~と、例年6月頃に閣議決定される骨太方針の中でも、長く詳細な副題が付いている。

今年の骨太方針は、菅義偉内閣となって初めて閣議決定する骨太方針となる。それだけに、副題にも力がこもっているのかもしれない。

骨太方針は俗称で、拙著『平成の経済政策はどう決められたか』(中央公論新社)にもその由来や背景が詳しく記されている。骨太方針を取りまとめる経済財政諮問会議が、2001年に始まった時の森喜朗内閣での宮澤喜一財務相が、「この会議では骨太な議論をしていただきたく思っています」という発言にちなむ、との説もあるが、それより先に、森首相が経済財政諮問会議で「骨太の政策」を議論するよう発言している。

結局、経済財政諮問会議が初めて骨太を取りまとめたのは小泉純一郎内閣に代わった後の2001年6月で、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」という正式名称で閣議決定した。

2002年以降、小泉内閣期は「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」という名を毎年踏襲し、それが骨太方針の正式名称となった。

その後、2006年9月に第1次安倍晋三内閣が発足し、2007年6月に閣議決定したのが「経済財政改革の基本方針2007」で、俗称は引き続き骨太方針と呼ばれ続けたが、正式名称で独自色を出した形になった。この正式名称は、2008年6月の福田康夫内閣、2009年6月の麻生太郎内閣で閣議決定される骨太方針でも踏襲された。

民主党政権期の2009年9月~2012年12月は、経済財政諮問会議が休眠状態だったので、骨太方針は出されなかったが、2012年12月に発足した第2次安倍内閣で、骨太方針が復活し、2013年6月に閣議決定されたのが、「経済財政運営と改革の基本方針2013」だった。小泉内閣期の正式名称から「構造」だけ取れた名前だった。

それ以降、安倍内閣期は毎年この名が使われ、菅内閣も改名せずに踏襲した。

骨太方針が初めて閣議決定されてから20年が経つ。今般の「骨太方針2021」は、骨太方針20周年ともいえる。

閣議決定される文書といえども、日本語ではない英略語には、たいてい語義説明がつく。GDPは国内総生産だし、SNSはソーシャル・ネットワーキング・サービス。ただ、これらは今や、語義説明なしでも、多くの人が知っている言葉だろう。

ところが、「骨太方針2021」では、GDPもSNSも語義説明なしに登場するが、PBも語義説明なしに登場している。

何の略語か、皆知っているのだろうか?

PBは、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の略語である。

では、なぜPBが語義説明なしに書かれているのだろうか。それは、

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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