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児童手当の見直し論議が山場。高所得者向けの児童手当はどう決着するか

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
子どもを持つ親に給付する児童手当。高所得者にも支給する仕組みを見直す動きがある。(写真:アフロ)

子どもを持つ親に現金を給付する児童手当。年末に向けた2021年度予算編成で、高所得者にも支給する仕組みを見直す動きがある。その意図と焦点は何か。

見直し論議の引き金の1つとなったのが、2019年10月から開始された幼児教育・保育の無償化(3~5歳)である。この幼児教育・保育の無償化では、低所得世帯だけでなく高所得世帯の子どもも対象としており、高所得世帯には、児童手当の特例給付だけでなく幼児教育・保育の無償化の恩恵も及ぶことになった。

今般の児童手当の見直し論議の対象は、あくまでも高所得の親への支給についてであって、低所得の親への支給についてではない。

児童手当は、子どものいる親に現金を給付するものだが、民主党政権期に子ども手当と名を変えて所得制限なしに支給することとした。しかし、民主党が2010年の参議院選挙で敗北して衆参ねじれ状態となり、財源も確保できなかったことから、当時野党だった自民党と公明党とも協議して、児童手当と名を戻して再び所得制限をつけることとした。現行制度での所得制限は、例えば、夫と専業主婦と子2人の世帯の場合は、「主たる生計者」の年収が960万円以上を意味する(この金額は家族構成によって変わる)。それ以上の所得だと、原則として児童手当はもらえない。「主たる生計者」とは、世帯の中で最も所得が高い者を指す。

しかし、所得制限をつけた際、「当分の間」の措置として、所得制限を超えている者に対しても月額5000円(年額6万円)の「特例給付」を支給することとした。そして、今日に至っている。

ここに、2021年度予算編成において、児童手当の見直し論議での焦点が浮かび上がる。その焦点は、

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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